第11章 2話 レビュー
「まずはこのホテルのレビューを見ていただきたいのですが」と依頼主。
「大浴場が小さすぎる」
「騒音が常態化」
「朝食が質素」
「期待外れというより構造的問題」
「価格に対する体験価値が釣り合わない」
僕らはレビューを見た。
では、少しお付き合いをと言って依頼主が歩き出す。
大浴場はかなり大きく、騒音というか外の音は聞こえない。
外では車が走っているのに。
朝食はビュッフェ形式で種類が豊富だ。
「レビューとは全然違いますね」と僕が言う。
「そうです。何者かによる印象操作です」
「敵は黒田孝高(黒田官兵衛)か竹中重治(竹中半兵衛)か」と歴女の土方という人が言った。
「いやこのあたりなら北条早雲では」と歴女の直江という人。
どうでもいいと僕は思いながら黙っていた。
「ずばりあなたは怪しいと思っている人がいますね」と泉が言う。
「なぜわかったのですか。疑っている人間は4人います」と依頼主が言う。
・荒井 接客 待遇への不満を隠さない。レビューには荒井が普段使う古い言い回しによく似た表現がある。さらに投稿時刻の一部が夜勤時間帯と重なる。
・永尾 口コミ管理担当 悪質レビューへの返信が異常に早い。社用PCには複数アカウントのログイン履歴があるが、業務上必要とも説明できる。
・庄野 ライバルホテルの経営者 ホテルは満室が続く。広告も積極的に打ち出している。比較レビューが増えているため疑われるが、直接関与した証拠はない。
・中村 炎上系インフルエンサー ホテルを批判する動画を投稿。動画公開後には低評価レビューが急増している。しかし投稿者本人である証拠は見つからない。
「この4人が怪しいです」と依頼主。
「明智光秀に小早川秀秋に、ライバルなら徳川家康あたりに、影響力なら伊達政宗あたりかな」と土方さん
「なんでも武将に例えるの止めてくれません」と僕は心の中で思った。
「それでこれからどうしたらいいでしょうか?」と依頼主。
「まずはホテル側ができる対策をしましょう。その間に犯人を調べます」と泉が言う。
「写真を最新に更新。全レビューへ誠実に返信。設備改善でどうでしょうか?」と僕が言う。
「わかりました。すぐに実施します」
新しいレビューを確認すると、悪質レビューはさらに巧妙になる。
完全な嘘ではなく
事実七割・嘘三割になった。
悪評が止まらず、口コミ管理担当の永尾は焦った。
自作の高評価レビューを書いてしまう。
僕は、永尾がやったことを注意した。
ホテルの印象は一向に良くはならなかった。




