第10章 1話 ある鑑定士の唯一の汚点
「社長、これが最新のAI画像鑑定ですか」とスタッフが言う。
「ああそうだ。これで今まで以上に多角的に鑑定ができると言うものだ」と社長である鑑定士が言う。
「すごいですね」
「今までのX線や赤外分光法や熱ルミネッセンスなどに加えてこれが加われば精度が非常に高くなる。もちろん鑑定士の目と知識が大前提だがね」
「例えば、昔に本物と鑑定したものが、今やると偽物だったなんてこともあるんですかね?」
その言葉に、過去の一件が引っかかった。
かつて1度、鑑定に迷ったことがあったのだ。
10年前のことだ。
その資料を取り出す。
過去鑑定レポート。
高解像度画像。
類例データベース。
それは、江戸時代につくられた茶碗である。
鑑定価格は50万円。
ものすごい高額というわけではない。
市場評価が中程度だったため、精査が後回しになっていた。
検査を進めていく。
釉薬の貫入パターンが均一すぎる。
高台の削りが機械的。
土の粒度が近代陶土に近い。
データを何度も確認する。
AIの解析は、その焼成プロファイルは、江戸後期の分布から外れていることを示していた。
そして……「誤鑑定だ。これは偽物だ」
◆◆◆
「なんか旅行にいきたいな」と僕が言う。
「どこに行きたいの」と泉が聞く。
「美味しいものがあるところ」
「食べ歩き?」
「そうだね」
「観光名所とか歴史を感じにとかってのはないの?」
「ない。人間美味しいもの食ってなんぼでしょ」
「まあいいけど」
「そういう依頼ってないかなあ?」
「旅行系?」
「そうだね。出来たら食べ歩き」
「そんなもんあるかい」
「じゃあ旅行でいい」
「それもあるかどうか」
2人で探偵倶楽部の依頼を見る。
依頼内容 10年前に鑑定した茶碗が現在どこにあるかの調査
報奨金 成功報酬25万円
場所 東京都○○
注意事項 交通費全額負担 茶碗を探すために移動があると思われます ランクB以上 2組のみ
「交通費全額負担、きた」と僕が言う。
「でも場所がわからないよ。移動が都内だけの可能性もあるし」と泉。
「いや。これは日本全国、あるいは世界まであるかもね」
「さすがにそれはないでしょ」
「わからないよ。ひょっとしたら北海道や沖縄も可能性が」
「じゃあこれにする?」
「するする!」
こうして探偵俱楽部に申し込みをした。
指定された時間と場所に行くと、もう1組の探偵がいた。
「こんにちは~↑」
「はじめまして~↑」
と挨拶してきた。
「こんにちは」と僕と泉も挨拶をかえす。
「今回の・勝負・負けませんよ~↑」
そして「ラララ・勝負とは~非常なものさ~」と歌い出した。
謎の間・語尾を上げる。
よく通る声。
そして突然歌い出す。
この2人はミュージカルコンビだ!




