第6章 6話 腕時計
「帳簿ですか。ええ。持ちだしましたよ」と戸崎さん。
「えっ?」と芸人コンビの芸川さんが間の抜けた返事をする。
「会計士に渡すよう指示されましたので」
そこへ女性使用人の今村さんがやってきた。
「みなさん至急、ご主人様のところへお集まり下さい。重要な話があるとのことです」
そういうと今村さんは別の部屋に走って行った。
なにかあったのだろうか。
僕と泉と芸人コンビと戸崎さんは至急依頼主の元へ向かった。
今日屋敷に来ていない料理人以外は、全員集まった。
「わしの腕時計がなくなった。犯人はだれだ!」
集まった人たちが顔を見合わせる。
依頼主はなおも追及を続けた。
僕は全員の顔を見た。
表情に変化はないか観察した。
嘘をついている者、とぼけている者、怯えている者など顔の変化が出てる人はいないかと。
そこでアル中コンビの酒田さんがいなくなっているのに気づいた。
まさか、酒田さんが腕時計を盗み、酒の足しにするのではないかと。
5分後、酒田さんが戻って来た。
質屋の契約書を掲げて。
「ひさしぶりに走ったんで吐きそうだよ」と酒田さん。
「探偵、なんだそれは?」と依頼主。
「質屋の契約書です。契約内容は時計の売却」と酒田さん。
一同がざわつく。
「どこから出てきた?」と依頼主。
「奥様の部屋」と酒田さん。
「奈穂どういうことだ?」と奥様を追及する依頼主。
僕は酒田さんのもとへ行き、契約書を見る。
「あれ?これ日付が15年前ですよ」と僕が言う。
「すいません。昔、どうしてもお金が必要で、私の物をいくつか売りました」と奈穂奥様。
「ちっ目が霞んで日付がぼやけて見えた」と酒田さん。
場が静まり返る。
一旦奈穂さんへの追及は終わった。
しかしじゃあ腕時計はどこへ?
僕は何も解決していないことは分かっていたが、そのことをここでは言わなかった。
そして解散していいことになった。
翌日の朝、起きると、泉がいない。
泉は朝早くから調査に出ているのだろうと思い、僕は部屋でのんびりとしながら、結婚指輪の行方を考えていた。
そこへ泉が戻ってくる。
「庭師の鮫島さんが木の近くを掘っていた。何かを埋めてるようだった」
僕は泉と外に出て、その場所へ向かう。
掘った跡が残っていたので場所はすぐにわかった。
スコップを持ってきて掘ってみると土の中から箱が出てきた。
まさか腕時計?と僕は思った。
しかし中を開けると、ネクタイだった。
僕と泉は困惑をする。
何故ネクタイを埋めたのか。
そこへ庭師の鮫島さんがやってきた。
僕たちが掘り返したのを見て驚いている。
「なにをやっているんだ」と鮫島さん。
「それはこっちのセリフです。昨日この家の主の腕時計が無くなった。翌朝、庭に何かを埋めている。普通に怪しいでしょ?」と僕が言う。
「そうだな」と鮫島さんはシュンとしてしまった。
「それは先代から頂いたものでな。突然供養をしたくなって」
「少なくても黙ってやるのは止めて下さい」と泉が言う。
その後1日僕たちは腕時計を探して回った。
しかしどこからも出てこなかった。




