表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら戦国時代の米問屋だった ~武将でも剣豪でもない俺が、兵糧で天下統一を支えます~  作者: 水原伊織


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
62/102

第六十二話 海を越える約束

堺公認の取引商人。


その知らせは、一夜にして町中へ広まった。


「山本屋だ。」


「例の物流の商人か。」


「近江屋とも付き合いがあるらしい。」


港を歩くだけで、あちこちから視線を感じる。


だが俺は、浮かれてはいなかった。


信用とは、得るよりも守る方が難しい。


それを藤兵衛から教わっていたからだ。


---


翌朝。


宗玄から再び呼び出された。


応接間には、見覚えのある顔が並んでいる。


宗玄。


ディエゴ。


マルコ。


そして、数人の堺の豪商たち。


宗玄が切り出した。


「弥助殿。」


「一つ、大きな相談がある。」


「何でしょう。」


宗玄は机の上に一枚の地図を広げた。


瀬戸内海だった。


「今年は、瀬戸内を通る荷が急激に増えておる。」


確かに地図には、京・堺・備前・讃岐・博多へ続く航路が描かれている。


「しかし。」


「港ごとに荷の積み方も、帳簿の付け方も違う。」


「そのせいで荷違いが絶えん。」


---


俺は帳面を見せてもらった。


すぐに原因が分かった。


「荷印が統一されていませんね。」


「荷印?」


宗玄が首をかしげる。


俺は米俵を例に説明した。


「山本屋では、俵ごとに印を付けています。」


「ですが港によっては、船単位でしか記録していない。」


「これでは積み替えるたびに間違えます。」


商人たちが顔を見合わせた。


「確かに……。」


「今まで当たり前だと思っていた。」


---


「提案があります。」


俺は紙に大きく丸を書いた。


「送り主。」


「荷の種類。」


「行き先。」


「この三つだけは、全国で同じ印を使いませんか。」


「全国で?」


宗玄が目を細める。


「山本屋だけでは意味がありません。」


「近江屋。」


「堺。」


「三河。」


「東国。」


「皆が同じ印を使えば、積み替えはずっと楽になります。」


---


部屋が静まり返る。


やがてマルコが口を開いた。


「海モ同ジ。」


「外国デモ、印ハ大事。」


ディエゴも大きく頷く。


「ワカリヤスイ。」


「イイ。」


宗玄は腕を組んだまま、しばらく考えていた。


そして、ゆっくりと笑う。


「また新しいことを考えたな。」


「ですが。」


「これは山本屋のためではありません。」


「商人みんなのためです。」


その一言に、宗玄は深くうなずいた。


---


その日の午後。


堺の港で、小さな実験が始まった。


荷印を統一した十台の荷車。


行き先ごとに印を分ける。


赤は京。


黒は近江。


青は東国。


文字が読めない人足でも、一目で分かる。


「若旦那!」


庄吉が声を弾ませる。


「積み間違いがありません!」


「確認も早いです!」


番頭たちも驚いていた。


「印を見るだけで済む。」


「帳面を何度も開かなくていい。」


ほんの小さな工夫。


だが、それだけで港の動きは目に見えて速くなった。


---


夕方。


宗玄は港を眺めながら言った。


「弥助殿。」


「そなたは荷を運ぶだけではない。」


「商いの決まりまで変えようとしている。」


俺は苦笑した。


「決まりは、人が楽になるためにあります。」


「不便なら変えた方がいい。」


宗玄は大きく笑った。


「まったく。」


「面白い男だ。」


---


その夜。


ディエゴが宿を訪ねてきた。


「ヤスケ。」


「プレゼント。」


そう言って差し出したのは、小さな木箱だった。


中には一つの方位磁石。


「コンパス。」


「海ノ道具。」


俺は手に取って回してみる。


針は静かに北を指していた。


「海デハ。」


「道ガ見エナイ。」


「ダカラ、コレガ必要。」


俺は感心した。


街道には道標がある。


だが海にはない。


それでも、人は道を作ってきたのだ。


---


翌朝。


堺を発とうとした俺たちの前へ、一人の武士が現れた。


「山本屋の弥助殿。」


「私ですが。」


武士は丁寧に一礼し、巻物を差し出した。


「安芸国より使者にございます。」


封に描かれた家紋を見て、宗玄が目を見開く。


「これは……。」


**毛利家。**


瀬戸内海を支配する大大名からの招きだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ