祈りの座敷牢
二人──山伏式神と案内人はある場所に向かっていた。邪悪な気配が一層濃く残る空間があるのを、察知していたのだ。
「あの星雲寺 叶夢って子。中身が人じゃないのよ」
「あー、分かりマス。何かアッタンデんですか?」
「あれは食われてしまってるわね。小林 緑が気づいてないのをいい事にやりたい放題やりやがって」
かの部屋は座敷牢の一室、神棚だらけの奇妙な場だった。どの神棚も牛の角ばかりが備えられている。獄卒の牛頭でも牛頭天王でもない、奇っ怪な牛の絵が刷られた護符も所狭しに貼られ、牛の異神をひたすらに祀り上げている異様さは、ある種壮観だった。
「三ノ宮一族もそうよ。異なる世界にいる人ならざる者に下手に手を出すから、こうなるの。バカバカしいわ」
「まア、適切な距離が好ましイですよネエ!」
「アンタには無理そうね」
山伏式神は躊躇なく座敷牢の戸をあけると、神前に置かれていた木箱を開けた。何やら由緒など、牛の子と呼ばれた牛頭の人々の名が記録された巻物も奉納されている。何百も、もらさず。何十人も降ろしたのだろう? 新生児の歳が圧倒的だった。
その中で一冊、星雲寺 枝九太なる人物の新報告書があった。
──ノベオリを封じていた我が屋敷、小さな4つの部屋から牛頭の子供の遺体が出てきた。そうして由緒すら、祓え言葉すら込められていた。不自然な増築はそのためだったのか。
──我が一族は牛の子をわざと呪術的に利用していた。今は廃れているが、恨みや効力は止まらないだろう──
叶夢がいない間に、それを見てしまった案内人と山伏式神。
祝部織という氏族に牛女が生まれた記録が残されているが……それを教えられるのは成人してから。彼女は知りえないのた。
それが、今少女に憑依している怨念の塊。
数多の斬首された牛人間たちの念が、ノベオリを形作っている。それはあまりにも強すぎる。
案内人さんは舌打ちし、「コの世界は変な人ならざる者バカリだナア」と悪態を着いた。
「人道的な思想で言ってないくせに。よく言うわよ」
「小林 緑をアヤメらレたらまた違う世界で、材料を見つけなければならなくなるンですよお」
「はー、最低。はいはい」
「最低でケッコー。さァ、小林 緑の元へ戻ってノベオリを蹴散らしましょう」
「はあ? 辟邪の檻の中で?」
案内人はそれを聞いて固まった。しまった、と失念していたようだ。
「貴方に頼ろうトしタのに〜〜~」
「クアア、嫌なヤツね! ざーんねん、私は何もできませーん、だ!」




