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イズナ使いの虚誕 ~2人の緑さん関連の漫書〜  作者: 犬冠 雲映子
■(牛女の村 ―人か 魔物か 魔法少女か―)
150/155

ただの美しい地域を台無しにした、部外者たちの話

 この地域で起こった、ある異形と異形を許さない者たちの話である。

 異類婚姻譚でも、因果応報を示す仏教説話でもない。ただの美しい地域を台無しにした、部外者たちの話。


 昔、平安時代末期。この辺りの主に美しい織り物を献上する氏族がいた。祝部織(のべおり)という専門職の集団である。

 その中に一際美しき織り物を織る、顔が牛の女がいたが、村の人々に気味悪がられはせずむしろ神聖視され、感謝されていた。しかしある年、外部の『外法陰陽師』により牢獄に入れられてしまった。

 かの名前は羽屋沸はぬやふつ姫芽(ひめ)

 異形だとしても、たおやかで村のものは羽屋沸を解放して欲しいと頼み込む。だが、京から逃げ延びてきた星雲寺一族の陰陽師たちは人ならざる者だと頑として聞き入れない。

 そうして渋る主領にうまくそそのかし牛女を殺めさせた。

 それからして、その領地には牛頭の人間が生まれるようになり、彼女の祟りだと恐れられる。非を認めたくない陰陽師たちはその度に家族に泣く泣く異形を殺害させる。


 やがて牛頭はなぜだが陰陽師の一族に大量に生まれるようになった。そうして牛は件の如く、予言をする能力を持っていた。

 ノベオリ、それがこの地を──星雲寺を繁栄させた象徴であると。








「私たちは秘密裏にあの化け物たちを利用してきた。痛めつけて、うまく動くように。罰が当たったのかも」

「……そうですか」

(イズナ(伊豆那)は苦しんでいるのだろうか? 嫌な話だな)

 緑さんはイズナ(蠱毒)の作り方を存じている。恨まれて当選だともたまに考えていた。

「その……祝部織という氏族は?」

「逃げたと言うけれど真相は分からない。私もまだ正式な魔法使いにはなれていないから、家訓や歴史は未熟なの」

 平安時代からこの地にいるのは、名家でしかないだろう。

「早く当主のお部屋に行かなきゃ」




 草目は屋敷を引きずり込んだ異界に蜂須賀(はちすか) 耀(かがやき)を至難の業で連れてきた。 カナリヤの使い魔は境界の匂いも感知する。リーガの他に一匹、カナがけたたましく鳴いた。

 そこには僧侶の遺体と、隠し通した抜け穴。

 深々と礼をすると、携帯電話の通話ができるようになった。

 門には名門陰陽師の結界が張ってあり、入れない。どうにかして入らなければ──。

 彼女はとりあえず祝福に特化した光属性な祈祷師ではある。触れると人ならざる者を全て塵にできる力を持っている。ならば、今回の疫鬼程度なら退治できるかもしれない。

 輝も星雲寺 叶夢の知り合いであり、連絡の違和感に危機感持ってた。

「あの屋敷は確か裏口、それか抜け穴があったはず」

「さすがは輝。サンキュー」

「ああ……」

 少女は確かに凄腕の次期当主、全国共通魔術師連合のトップの座につくべきだが、まだ幼い。

 それが『貴殿サマ』に障れば、生き残れるはずがない。

 リーガから送られてきた情報には叶夢は生きて動いているらしい。

 貴殿サマとは、全国共通魔術師連合が結成される前から日本全国に出没する危険な災いの塊とも称される邪神だった。いや、神なのかも怪しく、得体が知れない。

 だって、見た者は皆死んでしまうからだ。

 輝は貴殿サマが残した腐食した紙垂を前に、彼女は死んでいると決めつける。

 よって通報したのは見知った叶夢ではない。『別の何か』だ。

 早く屋敷に戻らないと緑さんが危ない、と輝は思う。二人は険しい山道を歩き、白骨化した死体が残る民家を横目に走り出した。

「……星雲寺一族はさ」

「──述戸檻(のべおり)が出てしまったかも」

「うん」

「述べる事を戸に締めて檻に閉じ込める。異名だけど、タチが悪いヤツだから。私が何とかせにゃ」

 根っこに躓かないよう気をつけながら、自然に帰りつつある道を走る。

「この唐津穂村の噂ってホントなのかね? 叶夢はあまり知らされてなかったみたいだけど。廃墟の死体を見るに、星雲寺家はとんでもない事してやがるね」

「多分、アレを見るにホントだよ。隠し通せるとでも思ってたんかな? あーあ、最低だっー!」

牛女は噂だと凶兆の知らせで現れるらしいですが。

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