閉ざされ続けてきた異界
「異界だから、携帯が繋がらなくて。もー、ホントにどうしようかってさー。良かったよ、独りよりはマシだわー」
紛れもなくこの場は異界らしく、だが、唐津穂村は偽物──コピーされた空間でもないらしい。村ごと異界に転送されたのだ。
随分前に。
「星雲寺一族がどうやって術連に出席していたかは謎だけど、平成5年にはもうここは現世から剥離されたみたい」
「変ですね」
「でしょお? ま、あれだよあれ。とにかく、援助を呼ぶから……だから絶対に屋敷の門を潜らないでね?」
上目遣いにキュルンと、おべっかを使ってくる。
「どうやってここまで来たかは分からないけどさあ、この異界が現世と地続きだと確証できたから。異界と推測できる端まで走ってくるよ」
「端まで?? 大丈夫ですか?」
「流浪の民をナメンナヨ〜〜っ! 絶対に、動かないでねっ! そこから!」
「あ、いや……ちょっと」
残された二人は顔を見合わせる。「今、確実に異界って言いましたよね」
「そうねえ。この子は異界なんてちょちょいのちょいだから」
あはは、と開き直った山伏式神に軽い憤慨を覚えるが、来てしまったのだから仕方ない。
「その仔ウサギは誰なんですか?」
「友人だって。あ、いえ、友人の一部よ。私がね、ワガママでね? 奪ってしまったの」
悲しい顔をして、ネザーランドドワーフほどの五つ目のウサギをなでると彼女はリーガを見た。
「彼は低級の使い魔ではないみたい。ある程度、頼りなになるんじゃないかしら」
カナリヤに似た三ツ目の鳥は首をかしげ、けたたましく鳴いた。
「ビームは出さないでください。怖いので」
「小林 緑。星雲寺という輩は知っている? どうも毒虫臭いわ」
毒虫というと、魔法使いの纏う異臭だった。
「知りません。全国共通魔術師連合はかなりの名門が連なりながら保っている組織ですから」
「ふうん。じゃあ、残念ながら食われたのね。はは、ざまあみろだわ!」
「ざまぁみろだなんて、はあ……」




