からっぽのむら
山伏式神の友人──謎のウサギにより、見知らぬ景色に転送され、転がった場所は電気も通っているか怪しげな山奥だった。
曇り空の下、砂利の痛みに顔をしかめる。いきなり叩きつけられて咄嗟に着地の体勢をとって良かった。
またか、と内心毒づくも、立派な屋敷に驚く。山の中であるにしても武家屋敷なみの建造は異様だった。
長屋門はまた異色で、民家1軒くらいあるだろうか。だが普通の武家屋敷とは異なるのは増築されている点だった。
そうしてどんよりしている。淀んだ、モッタリとした空気がのしかかってくる。
「唐津穂村?」
もしここがかの集落だとして、他の民家は長らく空き家になっている様子だった。生活感があるのはあの屋敷だけ。まるで迷い家か人ならざる者が見せる幻みたいだ。
大それた門構えには『星雲寺』と表札があり、寺なのでは? と緑さんは考えた。
「ゲッ。血の匂いがする。厄介ね」
スンスン、と嗅いで彼女はだるそうに肩を落とす。
「けが人ですか」
「いや、もう手遅れ。何人も死んでる。あと……悪趣味三足烏の残り香があるわ」
「あく? とりあえず、疫鬼とはそれですか」
「いいや、違う──みたい」
山伏式神は警戒した様子で周りを見渡した。鋭い双眸で刈り揃えられた暴風林を睨んだ。
「気をつけないと。何かが見てる」
間髪入れず2人の間をビームがかすり、硬直する。ここは軍事施設だったのか?
「てき! てき! てきハッケン!」
異形の小鳥が叫びながら現れ、また口からビームを発射しようとしている。
「やばっ、何あれ! 殺戮兵器?!」
「早く倒してください」
「他力本願すぎ! 私にはできないわよ! 辟邪の魔法がかけられて飲み込めない」
「辟邪。まさか──」
「リーガ! あれは私の仲間!」
「りーが?」
傷だらけになった吊田崎 草目が慌てて怪鳥を掴み、こちらへ駆け寄ってきた。
「草目さん、生きていたんですね」
「生きてるよーっ! 勝手に死なせないでえ!」




