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俺たちのロッケンロールデイズ!!  作者: 獅子尾ケイ
対バン!オタクとライブで勝負編
76/77

第76話「ライブが終わり、次へと繋ぐ」

 広い芝生公園から、割れんばかりの歓声が聞こえてくる。


 ライブをやった時にある、熱気と興奮を肌で感じた。


「ありがとうございましたー!」


 ラストに演奏した新曲をやりきり、俺は観客に向かって感謝の気持ちを叫ぶ。


 もうこれ以上はなにもできない。それくらい、全力でやりきった。


 俺の声に観客が拍手と歓声で、答える。


 その余韻に浸りながら、俺たちはステージを後にした。


「はあはあ……もう無理! 倒れちまうぜ」


「だっ、だねえ。僕も、体が動かないや……」


 ステージから降り、出演バンドが待機するエリアに戻ると、みんなは次々と地面に倒れ込む。


「うむ。手がもうしびれて、震えている」


「小野寺君はドラムを思いっきり叩いていたからね」


「ああ、有本もギターを弾いて指が動かないだろう?」


「俺様もさすがに指が痛いぜ! 筋肉痛になりそうだ」


 そうみんなは話しながら、ペットボトルの水を口に流し込む。


「しかし……あっという間のライブだったな」


 俺たちが去った後でも、まだ歓声が鳴り止まない。もはや、俺たちが出演バンドの中で一番盛り上げたんじゃないかと思うくらいに。


「けど、最後に新曲ができてよかったね。ねえ、晴君」


 一人黙って倒れている俺に、シゲはそう尋ねる。そして、一呼吸整えた俺は口を開いた。


「ああ。やったはいいが、途中でミスりまくってたな」


「あったりめーだろ! スタミナ切れ起こして、おまえなんか声が枯れてたじゃねーか」


「おめえもだろ、成瀬! サビのベースラインが乱れまくってただろうが」


 そうお互いに言い合うが、ライブ中はあまりにも酷かった。


 二曲連続で弾いた後は体力的にも限界。それが理由で、ミスの連発。


 新曲をやらなければならないロックな感じでも、やってみたら案の定グダグダ。


「まあ最初に弾いたライブとしては、これはこれでいいのではないか?」


「……今はなにも考えたくねー! 疲れ過ぎたわ」


 成瀬はそう言ってまた倒れ込む。


「お客さんはどう思ったかなあ? あんな感じで、満足してくれたのかな」


 シゲは不安そうな顔をしてつぶやくと、ステージのほうを見つめる。


 演奏はひどかったと思うだけに、観客の反応が心配になっているみたいだった。


 ーーったく、そんなもんはわかってるだろうに。


 俺は呆れながら、ため息をつく。


 シゲはライブをやった後の観客を見ていなかったのだろうか。そう思いながら、俺は答える。


「あれだけ、でかい声で歓声が上がってんだ。満足してるに決まってんだろ。俺たちの最高なライブによ」


 次のバンドがまだステージに上がっていないのに、まだ歓声は続いている。その声が、シゲの疑問に対する答えだろう。


 俺たちのバンドが、ここまで盛り上げられたのは紛れもない事実。


 いろいろハプニングがあったけれど、最高のライブができた気がする。俺はそう思いながら、しばらく余韻に浸った。


 みんなも歓声を黙って聞いていた。その顔はどこか満足そうに。


「おっ、次のバンドが登場したみたいだな」


 会場の雰囲気が変わったような声に、俺は口にする。


「たしか、次は岩崎さんたちのバンドだね」


「ギャルゲーソングバンドか。俺たちの後にライブをやるんだし、あの雰囲気で大丈夫かねぇ」


「うむ。少し、荷が重いのではないか?」


 岩崎たちは俺たちが生み出した熱気と歓声の中で、ライブをしなければならない。


 それがかなりのプレッシャーになってしまう。


 だが、その空気感でライブをやれるのはバンドマンとしてやる気が出るに違いない。


「あいつらなら大丈夫だろう。俺たちと同じように、最高なライブをやってくれるさ」


 あれほど対バンで叩き潰すと言っていたが、今の俺は違う感情があった。


 最高のライブをやるバトンを繋げたように、岩崎たちに託す思いだ。


「おいおい、仙道! どうしたよ? ライブが始まる前までは倒すべき敵みたいなことを言ってたじゃねーか」


「うむ。MCの時も、敵に塩を送るような発言をしていたぞ」


「うっ、うるせえ……まだ認めたわけじゃねー! それはあいつらのパフォーマンスを見てからだよ!」


 成瀬や小野寺が茶化すように、俺にそう話す。


 事実、まだ岩崎たちのバンドパフォーマンスは生で見たことがない。


「よし! おまえら、さっさとステージの近くまで行ってやつらのライブを見に行くぞ」


 俺はそう言って立ちあがろうとした時、膝がガクンと落ちる。


「晴君、さっきまでライブをやったばかりだからまだ疲労が残ってるんだよ」


「なに言ってやがるシゲ! 岩崎たちのライブがどんなか気になるじゃねーか。今、見ておかねーと……」


 再び立ち上がろうとするも、足が言うことを聞かない。


「まだ始まったばかりだろ。とりあえず少し休んで、ライブを見ればいいじゃねぇか」


「ああ、俺も今は動けそうにない」


 みんなは疲れ切っていて、誰一人動けそうにない。


 その間にも、岩崎たちのライブが始まったのだろうか微かに演奏する音が聴こえ始めた。


 ギターの歪んだいい音が、少しずつ聴こえる。


「まあ、俺たちのライブはこれで終わったな。久しぶりにいいライブができたな」


「そうだね。成瀬君の言う通りだよ」


 成瀬の一言に、シゲはそう答える。


「うむ。悪くないライブだったな! 仙道はどうだ?」


 小野寺は俺に尋ねると、全員の目線が俺のほうへ向く。


 そして、俺はにやりと笑ってみんなに答える。


「ああ、最高のライブだったぜ! 俺たちは最強のロックバンドだよ」


 全力を出した俺たちのライブは、こうして幕を閉じる。まだ二組のバンドが残っているけれど、アマチュアの学生バンドな俺たちが、ここまでライブを盛り上げることができた。


 岩崎や高村のパフォーマンスがどうなるかわからない。


 けれど、俺はそう胸を張って言えるだろう。


 最強のロックバンドとして、最高のライブができたと。

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