最終話「俺たちのロッケンローラーデイズは終わらない!!」
岩崎たちのライブも終わり、トリである高村バンドがイベントのラストをビシッと決めた。
対バンライブは観客が大いに盛り上げることができ、イベントとしては大成功と言えるだろう。
あれほどいた観客が芝生公園が、今では静まり返っている。
「よし! 解体作業も終わったな」
会場のステージを一通り片付け、元の芝生公園へと戻る。
俺は手伝いをしながら、ライブの余韻にまだ浸っていた。
「仙道、まだボーっとしてんのかよ。さっさと掃除をやれよ」
「晴君……まだライブなことを考えているのかなあ」
「岩崎君や高村さんのライブもすごかったからな。どちらも、会場を沸かせていたし」
小野寺が言うように、出演したバンドはみんなすごかった。
ギャルゲーソングを披露するというロックバンドのイベントに不釣り合いながらも、観客を沸かせていた。
ーーあんなのは、ロックじゃねえ!
などと思って岩崎たちのライブを途中から見たが、その感情すらねじ伏せられてしまうくらいの圧巻のパフォーマンス。
オタクの連中が聴くようなジャンルだとバカにしていたが、まったくそんな曲調ではなかった。
「ずるいだろ……あれがギャルゲーソングなんてよ」
俺は悔しがりながら、そう吐露する。
「CDで聴いたのはイメージできたけど、他の楽曲もよかったよね。あれ、本当にゲームに使われていたのかな?」
「うむ。原曲がどんなものか、気になるところだな」
「まさか、ギャルゲーを買おうとか考えてねーだろうな?」
すでに岩崎率いるギャルゲーソングを布教する連中の図中にはまりつつあるシゲたち。
気がつけば、岩崎たちがやったライブパフォーマンスの話題ばかり話す始末だ。
「俺たちのバンドについても……話題にして欲しいねえ」
俺たちが話していると、高村が間に割って入り込んでくる。
「うわっ! いきなり混ざってくんなよ。驚くだろうが」
いきなり現れた高村に俺はそう話す。
「高村さん。今日はありがとうございました」
シゲはなにをするかと思ったら、高村にペコリとお辞儀をした。
「別にこいつに感謝する必要はねえだろ。対バンをやるって言ったら、勝手に参戦したやつだぞ?」
「けど、高村さんがいなかったらこんな場所でライブはできなかったでしょう?」
「うっ……まあな」
たしかに、俺たちだけではここまで盛り上がるような規模のライブイベントは企画できない。
これも人脈が広い高村だからできたことだろう。俺はそれを考えたら、ぐうの音も出なかった。
「気にするな! 仙道が言う最強のバンドたちによる最高のライブができたから良しとしよう」
「最強のバンドは……俺たちだ!」
高村の言うように、どのバンドもいいライブができただろうが、誰よりも最高なパフォーマンスをしたのは俺たちだと思っている。
「まあ、そういう話は打ち上げでやってくれ。撤収作業が終わったら、全員で店に行くぞ」
「は? 打ち上げ……店?」
なんの話かわからず、俺たちはポカンとした。打ち上げはやるのはバンドマンとして当然だが、全員とはどういうことなのだろう。
そして、すべての作業を終えた後、俺たちは高村に言われるがまま連れて行かれる。
「……ということで! かんぱーい!」
着いた店は居酒屋。高村のテンションが高い掛け声に、わあっと盛り上がる。
イベントに参加した俺たちの他に、スタッフなども合わせて数十人がテーブルを囲んで乾杯を始めた。その中に、引率の鈴谷先生や岩崎たちの学校の先生までいる。
「晴君、ここ居酒屋だよ……僕たち未成年だけどいていいのかな?」
「バンドの打ち上げは居酒屋って決まってる話だけど、みんな酒を飲むでやがる」
目の前に出された大量の食事に、コップへ注がれた麦茶。
周りがガヤガヤと騒ぎ始める中、俺は麦茶を口にする。
「大人がいるとはいえ、俺たち高校生がいたらまずいのではないか?」
「なに言ってんだ、小野寺。打ち上げと言えば居酒屋ってもんだろ? 俺たちもなんか頼むか?」
成瀬は、メニュー表に書かれた酒のページを指差して笑う。もちろん、そんなことは許されない。
「バカ言ってんじゃねーよ! てめえ、そんなことしたら捕まるだろうが! 向こうには鈴谷先生もいんだろ!」
「冗談に決まってんだろ! 俺様は、そんなダセェことをするハンサムボーイじゃねぇ」
俺と成瀬はいつも変わらないようにお互いに言い合う。そんな俺たちを他の人たちが笑いながら見ていた。
しかし、周りを見るとみんなはイベントが自分のことのように満足げにしている。まるで、自分が主役のように思っているようだった。
「みんなで力を合わせて作ったイベントみたいだね。きっと僕たちが知らないところで頑張ってたんだよ」
「うむ! スタッフのみんなにも感謝しなければなるまいな」
「そうだね。けど、こうやってライブのイベントが作られているんだねえ」
周りの盛り上がりを、シゲたちは感慨深くしながら話している。
「そんなことより! 今日のライブはよかったけど、みんな体力がなくなるのが早すぎるだろ!」
俺は自分たちがやったライブについて、ダメ出しを始めた。よかったはよかったのだが、やはり納得がいかないところもあった。
バクバクと飯を食いながら、不満だったことを話すと口が止まらない。
「うわあ……こいつ、せっかくの打ち上げなのに説教を始めやがったよ」
「うるせえ! 成瀬、てめえのベースはだな」
それからしばらくの間、俺はライブでのことをみんなと話していた。すると、向こうのほうで岩崎たちがいるのを目にする。
「あれ? 晴君、どこ行くの?」
「あっちに岩崎たちがいるんだよ。ちょっと話してくるわ」
「え……話すのをいいと思うけど、喧嘩はダメだからね?」
「わかってるよ! 少し、話してくるだけだ」
シゲにそう言われるた俺は席を立つと、岩崎がいるほうへ向かった。
「……仙道?」
俺がやって来たことに気がついた岩崎たちは、戸惑っているような雰囲気。なにか話し合っていたようで、間が悪かっただろうか。
「よう、なにシケた面をしてんだ。ライブの打ち上げくらい楽しめよ」
それに話してくると言ったものの、いざ岩崎たちの前に立つとなにを話せばいいかわからなくなった。
「とっ、とりあえず……どうぞ」
岩崎のバンドメンバーにそう言われ、俺は座り込んだ。
ーーうっ、なんだこのわけがわからない雰囲気は。
俺がいることであきらかに場の雰囲気が悪くなっているような気がしてきた。
そんな悪い空気の中、岩崎が口を開いた。
「仙道たちのライブはすごかったな」
悪天候の中、機材も最悪な状態で最初に会場を盛り上げた俺たちを、岩崎はそう褒め始める。
「当たり前だろ! なにせ、俺たちが一番盛り上げられたからな」
そう話した後、岩崎たちと今日のライブについていろいろ話した。話してみると、意外とこいつらなりのバンドの目的が垣間見れた。
「ところで、おまえらは次のライブとか決めてんのか?」
「いや、まだ決めていないよ」
「なら今すぐイベントを考え始めろ! バンドっていうのはガンガンライブをやらなきゃだからな」
今日のイベントが成功したことに満足して終わりにするわけにはいかない。次のライブをどうするかがバンドマンにとってどうするかなのだ。
岩崎たちは部活動としてバンドをやっているのだろうが、それはもったいない。
こいつらには、まだまだ秘めた可能性があるバンドに思うからだ。
「仙道はどうなの? これからのバンド活動」
そう尋ねられた俺は、ニヤリと笑って答える。
「俺たちはさらにライブを重ねて、全国に名を馳せてやる! 目標は全国ツアーだぜ!」
それは、今までやってきたライブを通じて俺が強く思い始めていた目標だった。
岩崎たちを含む、すごいライブをやるバンドは世の中にたくさん存在している。
そんなやつらを対バンをやり、俺たちのバンドが最強最高だと知らしめてやるんだ。
それが俺が目指すロックなバンドの生き方である。
岩崎たちにそう宣言して、俺は席を立つ。新しい目的ができたら、いてもたってもいられない。
シゲたちがいる所に戻り、みんなにもそう話した。
「晴君……帰ってきていきなり、全国でライブをやるって言われても」
「おまえなあ、ライブが終わった後に次をもう考えてんじゃねーよ」
話を聞いたみんなは呆気に捉えている。
「なに言ってんだ! まだまだすげえバンドがいるかもしれねーだろ! そいつらともライブをやりてーじゃねーか」
「ふむ……全国か。たしかにそれは面白そうだな」
小野寺は俺の言ったことに、ニヤリと笑う。
「ああ! どんなバンドが立ち向かってこようが、俺たちなら最高のライブができるに決まってんだろ!」
俺の揺るがない意志が言葉になる。
一瞬、俺たちが囲む席が静まり返った。そして、成瀬はため息をつくと口を開いた。
「はあ。おまえが考えることは、いつもわけがわかんねーな」
「んだとっ!」
俺がそういつものように言い返そうとしたが、成瀬は続けて話す。
「けど、全国か……まあ俺様のベースが地元に留まらせておくのは、もったいねぇよなあ」
「……成瀬」
「いいじゃねぇか。やろうじゃないか……全国で」
成瀬もニヤリと笑って言うと、手にコップに持ってカッコつける。
「そうだね。晴君がやろうとしていることなら、きっと上手くいきそうな気がする」
「うむ。仙道とならば、よいバンドライフが送れそうだ」
シゲと小野寺もそう話して、コップを持つ。
「はっ! 当たり前だろ。おまえらは最高にロックな野朗だよ」
俺もみんなと同じようにコップを持って、みんなとコップをカツンと合わせる。
それは、俺たちの新しい目標ができたことの乾杯でもあった。
ーーそして、月日が過ぎていく。
「おまえら! 楽器に機材は忘れずに持ったか?」
「うるせえぞ、仙道! 早くバンに荷物を詰め込めや!」
「今日の運転は俺か……免許取り立てのペーパードライバーだが大丈夫だろうか」
「車の免許を持っているのは、僕と小野寺君だけだよね」
この日、俺たちは初めて機材車を持ってライブへと向かう。
全国へ飛び出して、まだ見ぬライブハウス。そして新しく出会うバンドとのライブをやるためだ。
「じゃあ、出発するぞ」
エンジン音が鳴り、車は颯爽と走り出した。
「よーし、行くぞ! 最強のバンドによる最高のライブをやりによ!」
目標の全国ライブへと、俺は歩み始める。この最高で最強のロックなやつらと共に。
俺たちのロッケンロールデイズは、これからも続いていく。




