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俺たちのロッケンロールデイズ!!  作者: 獅子尾ケイ
対バン!オタクとライブで勝負編
75/77

第75話「ライブは続き、ロックは鳴り止まない」

 自分たちの最高なライブをやり、次のバンドへと繋ぐ。どのバンドも、最高の演奏で観客を沸かせるだろう。


 ーージャカジャカ! ジャラランー!


 二曲目の演奏するサウンドが、アンプから爆音で鳴り響く。


 ライブが始まってまだ時間的には十数分。短いようで長い時間が続いている。


 それでも俺たちのライブに観客が歓声を出しているのは本当だ。


「まだまだいくぜぇぇぇ!」


 俺は歌う間に、そう観客に向かって叫んだ。


 ーーワアァァァァ!


 俺の声に返すような歓声が聞こえてきた。


 ギターの弾く手ははずみ、音に合わせて喉が枯れるくらい歌う。


 俺たち、ロッケンローラースターズのライブは走り続けてゆく。


 有名なバンドのようなライブとまでいかない。しかし、アマチュアバンドだからこそ出せるライブ感はあるのだ。


 俺は今日のライブで、それを実感する。間違いなく、観客に届けられていると。


 ーーやっぱり、ライブは楽しいな。


 こうやってステージに上がって、人前で演奏する。それが、どれだけ幸せな時間だろうか。


 まったく俺たちのバンドを知らない人がいるのに、こうやって盛り上がってくれている。


 最強のバンドを目指す俺にとって、今日はかけがえのないイベントだ。


 曲もBメロまで進み、折り返し地点。


 アップテンポの曲調が、より速く進んでいった。


 俺は自分のパートをこなしながら、みんなが出す音に耳を傾けて振り返る。


 小野寺が叩く正確でパワフルなドラム。


 太鼓のリズムゲームしかやってなかったのに、気がつけばきちんとドラムを叩けるようになっている。


 難しいリズムパターンも、乱れることなく叩けていた。ドラム初心者だったやつが、ここまで成長しているとは。


 ーードンッ! ドドッ! カッカァァァン!


 小野寺は額に汗をかきながら、懸命にドラムを叩いている。時折見せる顔には、笑みがあった。


 全力でドラムを楽しんでいるやつの顔だ。


 誰がなにを言おうが、小野寺は俺のバンドに必要なドラマー。


 ーーおまえは、最強のドラマーだよ。


 小野寺のドラムに、俺が弾くギターを重ねた音を聴きながらそう想った。


「ふっ! やはり、俺様のベースにオーディエンスが応えているみてぇだなあ!」


 成瀬がやたらテンション高くベースを弾いている。カッコつけて自分をアピールしては目立つ。


 だがベースの音は重低音マックスで、流れるようなベースラインが鳴り響いていく。


 ーーあの野郎、目の前にいる女だけにアピールしても意味ねーだろうが。


 そう思いつつも、俺は成瀬が弾くベースにギターの音を重ねている。


 あいつの弾くベースにはなにも不安はない。成瀬の人格に信頼はないが、そのベースセンスは絶対の信頼がある。


 バンドを組むと決めた時、俺のバンドにはあいのベースしかなかった。


 それくらい、成瀬のベースは本物だ。


 ド派手なパフォーマンスに、観客が沸いている。


「はっはっは! どうだ、仙道! 俺様はクールだろ?」


 ーーああ、そうだな。おまえはライブで弾いている姿が、一番クールだよ。


 俺の弾くギターが負けじと勢い良く鳴る。それが話す成瀬に向けての返事であった。


 二曲目も終盤に近くなり、そろそろギターソロがやって来る。


 俺は歌いながら、頭の中でギターソロを確認していく。


 小野寺の叩くドラムビートに、成瀬のベースライン。すべてが完璧な演奏に、俺の弾くギターソロは失敗する訳にはいかない。


 ギターのネックを押さえている手の力が、強く重くなる。変な緊張感が生み出されているようだった。


 上手くソロを弾けるか。成瀬たちの演奏に恥じないようにできるのか。そんな不安も感じる。


 ーージャララン! ジャカジャカ!


 そこにホッとするようなギターサウンドが横から鳴っていた。ディストーションの歪んだ音の中に、どこか優しい温かみがある。


 もちろんそんな音色を出すやつは一人しかいない。昔から俺と一緒にギターを弾いてくれていたシゲ。


 初めは音に自信がなかったのか、いつもモタついたギターが目立っていた。


 だが、いくつものライブを経験して今ではギターに迷いがない。ギターのレベルが上がって、俺たちのオリジナルソングを作るまで成長している。


 しかしどんなに場数を踏んできてギターが向上しても、その優しいギターの音は変わらない。


 俺のギターに寄り添うように、バンドのギターに厚みを与えてくれている。


 ーーシゲがいなかったら、俺のバンドが存在していたかわからねぇな。


 先ほどの不安や緊張感は、いつの間にかなくなっていた。


 みんなの演奏に後押しされているような気がして、ギターの弾く指が軽くなる。


 最高に盛り上がっている今、俺はギターソロのパートを弾き始めた。


 ギターをローからハイにポジションを変え、突き抜けるような高音が鳴る。


 素早く弾く一音一音が、流れていくように走ってゆく。


 みんなの弾くオケに合わさり、曲の雰囲気をさらに変える。


 俺のギターソロに、聴く観客はさらにヒートアップしているように見えた。バンドのライブで一番の見せ所は、やはりギターソロだろう。


 テクニックや弾くうまさだけでなく、いかに感情を込めたソロができるかが重要。


 泣きのギターソロみたく、俺は歓声に包まれながら感情を爆発させるように弾く。


 ーーすげえ、今までで一番盛り上げられているライブをやってる気がするぜ。


 たくさんの観客の前で、俺たちは最高のライブをやっていると思う。


 ーーワァァァァァ!


 観客の歓声が、そうだと思わせてくれるから。


 ギターソロも弾き終わり、もうじき曲が終わる。残り一曲で、俺たちのライブも終わってしまう。


 疲労感はさらに増していくが、それ以上にアドレナリンが出まくっている。


「はあはあ……もうじきラストソングだな。指が動かねーぞ」


 二曲目を弾き終わった後、盛り上がる歓声の中で成瀬がそう口にする。


「最後は新曲をやるんだよね。上手く……弾けるかなあ」


「体力的にも限界だろ。このテンションの中で、フルパフォーマンスは無理じゃねーか?」


 バンドとオーディエンスが、最高にアガっている状態。だが、このテンションもまま新曲をやるような体力は残っていない。


「下手したらミスって冷めた感じで終わるとか、俺様は嫌だぞ。ここは曲を変えてコピーにするか?」


「けど、今日のライブのために作った新曲だし……」


 予想以上の疲労と、予想外の反響。


 このまま手慣れたコピーで妥協するか、失敗を恐れず新曲をやるか。そんなものは俺にとって、どうするか決まっている。


 シゲたちの話を黙って聞いていた俺は口を開く。


「新曲をやるぞ……! たとえ、演奏を間違っても曲をめちゃくちゃにしようが関係ねぇ! 疲労でぶっ倒れようが、オリジナルでやるのがロックってもんだろ」


 そう。俺たちはロックンロールバンドだ。やるからにはロックな気持ちでやるのが、観客に対する姿勢。


「だあああ! おめえは本当にクソッタレな野郎だな!」


「ははは……それが晴君のロックなんだろうね」


「どうなってもしらねーからな! まあ、俺様は完璧にこなすけどよ」


 成瀬はそう言って自分の立ち位置に戻る。


「晴君。もし、失敗しても恨まないでね?」


「ああ、オリジナルでやるんだ。失敗してもロック魂で弾けばいいさ」


 届けたいのは曲だけではない。俺たちのロック魂を感じてもらえればバンドとすれば本望。


 俺はドラムセットにいる小野寺に合図を送る。


 残るラストソングは新曲。初めて人前で演奏する曲。


 どう反応するかは不透明。最悪、失敗してグダグダになる可能性もあるだろう。


「次がラストの曲です……まだ誰にも聴かせていない新曲だ」


 それでも、俺たちは最強のロックバンドとしてライブをやる。ビビってオリジナルをやらないなんて、ロックじゃないから。


「いくぜ! 新曲……ロックンロールデイズ!」


 俺はマイクに向かって叫び、勢いのままギターをかき鳴らす。


 そして演奏が始まると、あれほど降っていた雨が消え去っていた。

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