第64話「改造!新しきギター!」
高村バンドが加わったライブに変わり、俺たちは練習をする毎日を送る。
「……なあ、仙道。おまえのギター、なんか音が変じゃね?」
オリジナル曲を練習している途中、成瀬は弾くのをやめて俺にそう指摘する。
ギターのチューニングは合っているし、弦だって張り替えたばかりだ。
「あ? きちんと鳴ってただろうが。成瀬、耳でも悪くなったんじゃねーか?」
「いや……鳴ってるんだけど、なんかなあ」
なんとも言いがたい表情をしながらも、成瀬はやはり俺のギターが気になるようだった。
「僕も成瀬君と同じ意見かな? 晴君、ちょっと一人で弾いてみて」
シゲまでも同じような違和感を感じて、俺に一人で弾くように話す。
ーージャラン……ジィー! ジャララン!
アンプに繋げたギターから、俺の完璧なコードが鳴り響く。
これのどこに、違和感があるのだろうか不思議でならない。
「やっぱり……だよな?」
「うん。晴君、ちょっとギターを貸して」
そう話すシゲに手に持っていたギターを差し出す。受け取ったシゲはギターを隅々まで見ていく。
最初はヘッドの部分。それから指板を見て、ボディのところを見ると目が止まった。
「ここが原因かもしれないね」
シゲはギターのリアピックアップを指差しながら、俺にそう伝える。
リアピックアップは微妙に形が歪んでおり、今にも取れかかっていた。
「あれ? おっかしいな、全然気が付かなかった」
「弾いてる時、かなりノイズが走ってたぞ。それが原因だわ、てかよ……自分のギターくらいきちんとメンテすれや」
「晴君のギターはオールドギターだからね。かなり、古いからきちんと手入れをしなきゃ」
たしかに、俺のギターはかなりの年季が入ったギターだ。新しいモデルを買うべきなんだろうけれど、俺はこいつを気に入ってずっと使っている。
部品が壊れたからといって、すぐに新しいものにする気にはならなかった。
「ふむ。そのままでは、練習に支障が出るだろう? 修理に出すのが一番だろう」
小野寺が言うように、ここはきちんと直すしかない。岩崎たちとのライブを考えると、それが正しい。
「どうせなら、ピックアップとかの電気系統を改造してもらえ! 音が劇的に変わるから改造もアリだな」
「成瀬君のベースって、ほとんど変えてあるよね」
「まあな! 俺様はベース本体にもこだわるからな、改造は当たり前よ」
ーー改造かあ。
たしかに、成瀬のベースはエフェクターに繋げていない時でもいい音が鳴っていた。それは、自分好みにベースを改造したから出せる。
俺もこのギターを改造すれば、自分らしい音が作り出せるかもしれない。そう思った俺は、ギターを改造することを決意した。
練習は三人に任せ、俺は楽器屋へと足を運ぶ。入ってすぐ、店員に事情を話した。
「というわけで、このギターをめちゃくちゃいい音になるように改造してください!」
「は、はあ……それで、壊れているリアピックアップの交換でよろしいですか?」
めちゃくちゃいい音にするということを華麗にスルーされ、事務的な言葉で尋ねてくる。
「はい。あとは、電気系統? それもメンテナンスを」
俺は答え、用紙に必要事項を書き込んでいく。
「ピックアップはどのブランドにしたいとかありますか? 一応、ある程度は揃えられますが」
「え? ピックアップにも、ブランドとかあるんです?」
「まあ、演奏スタイルによって特化したモデルとかありますし。お客さんのギターだと、こういうのとかありますよ」
そう言って店員さんはカタログを広げて、俺に見せる。そこにはたくさんのピックアップが写真に載っていた。
正直、なにがどう違うのかわからない。この中から選べと言われても、どれがいいのかすら不明なくらい。
「お客さんはどんなジャンルをギターで弾いてます?」
「ロックっす! すげえ激しい感じの音で、歪みが半端ないやつですね!」
「なるほど……なら、このピックアップなんていいと思いますよ? ダンカンのSH4ーJB」
数ある中から店員さんはそのピックアップを選び、俺に説明を始める。
音は高出力で、サスティーンや倍音も優れていて歪みが増すほどパワーを発揮するらしい。
説明を聞いてもよくわからないが、いい音が出そうな気がした俺はそのピックアップをお願いした。
「後は配線やハンダもいいものにすると、ガラリと音が変わりますよー」
「じゃあ、それも全部お願いしまっす!」
ある程度、相談が終わるとギターを店員さんに預ける。
改造が終わり次第、連絡してくれるようで今日は楽器屋を後にする。
そして、それから一週間後。
ついに、改造された俺のギターが出来上がったと連絡がきた。
「よーし! さっそく、受け取りに行くぜ」
改造されたギターがどんな風になっているか、楽しみにしていた俺は急いで楽器屋へ向かう。
「ちわ! 俺のギターはどこっすか?」
「ああ、いらっしゃい。今、持ってきますねー」
受付にいた店員さんは、ギターを取りに店の中へ去っていく。
すぐに現れた店員さんは、俺のギターが入ったケースを手に持っていた。
それを受け取った俺は、ケースからギターを取り出す。
「おお……なんか、すげえ! いろいろ変わってる」
ピックアップが新しいものに交換されているだけでなく、コントロールノブが金色に変わっていた。なにより、ギター本体がピカピカに輝いている。
「お客さんのギター、古すぎるからいろいろ手を加えさせてもらったよ。パーツの規格が合わなくて、リペアマンが苦労してまして」
「すみません! ちょっと、試し弾きさせてもらっていいっすか?」
店員さんの苦労話など耳にせず、俺はギターを店にあるアンプに繋げる。
そして、弦も交換してくれたのだろうか、新しく張られた弦を押さえてビックではじく。
ーーギュワァァァァン!
軽く鳴らしただけなのに、前に比べると遥かに音が違う。しっかりした一音一音が粒が揃ってはっきりと聴こえた。
「やばい! なんだ、このイカしたギターは!」
思っていた以上の改造に驚くばかり。俺は、とんでもないギターを手に入れたのかもしれない。
弾く指が止まらず、いくらでも弾いていられる。
「……あ」
すると、楽器屋に入ってきた誰かが俺を見つけるや、そう口をこぼす。
「あっ、おまえは」
俺は目の前に現れたやつに気がつくと、そんなふうに言葉を返した。
ーー岩崎恭介。
対バン相手のオタクバンドのメンバーである奴と、楽器屋で出会った。




