第63話「高村バンド参戦!舞台は野外」
場所は変わって、俺たちは高村の部屋にいる。
岩崎たちとの対バン。ライブをやる場所を探していると相談したら、なぜか自宅に来るように言われた。
「……んで、呼び出した理由はなんだよ? 電話で話しとけばよかったじゃねーか」
俺は出されたジュースを飲みながら、そう高村に尋ねた。
「ほう、これが対バンするバンドか」
シゲにスマホを見せてもらいながら、やつらの演奏動画を見ている高村。
俺の言葉を完全に無視して、ひたすら動画に集中している。
「この野朗! 俺の話を聞けってんだよ!」
「まあ落ち着け仙道、ここで暴れても意味がないぞ」
「離せ小野寺! こいつは殴らなきゃ、わかんねーんだ!」
飛びかかりそうになる俺を、小野寺は抑え込む。
「わかっているさ。ライブをやる場所を、探しているってことだろ?」
「そうだって電話で話しただろうが! 呼んだかと思えば、動画なんか見始めやがって」
「せっかく相手の演奏が見れるんだから、どんなものか見るくらい良いじゃないか」
ひとしきり動画を見終わった高村は、その俺たちに話す。
「高村さんから見て、このバンドはどう思いましたか?」
シゲは高村に、岩崎たちのバンドがどう見たのか気になっているようだ。シゲの質問に、高村は一呼吸置いて口にする。
「間違いなく……レベルが高いバンドだな。演奏のテクニックがすごいし、下手なプロのバンドより魅せれるな」
高村の評価に、シゲはこくりとうなずく。
「動画でな音響設備は最悪だが、ライブハウスなんかでやれば化ける」
「……そっ、そこまでかあ? 案外、大したことねーよ」
俺は少し動揺しながら、否定的に話す。
「仙道。もし今でもそう思ってるんなら、考えを改めてないと逆にボロクソにされるぞ?」
「いーや! 俺たちのほうが、上にいくようなライブをしてる!」
無理に強気になっている俺を見透かすように、高村はため息をついた。
「まあ、こういう実力があるバンドとライブがやりたい気持ちはわかる」
「はい……だから、高村さんにライブできそうな場所を知ってるか相談しようと」
「おまえたちだけでは、見つけれなかったのか?」
高村は俺たちの顔を見ながら尋ね、それに無言でうなずいた。
みんなで探してみたけれど、やはりそんな場所はなかった。友好関係が広い成瀬ですら、全滅したくらい。
「他にバンドをしている知り合いは高村さんくらいで……相談に乗ってくれないかなと」
「実質、高村が最後の砦みたいなもんだからな! なにかしら、力になってくれ」
中堅バンドの高村ならば、ライブ会場くらいなんとかできるはず。電話をした時、俺はそう考えていた。
「今ごろか? そんな急な話をされてもなあ」
困ったように腕を組みながら、高村は考え込む。
「……どうにかなりませんか?」
「まあ、ないことはないけど……」
ぼそっとそんなことを口にした高村に、俺は土下座をする。
「頼む! 俺はあいつらとやりてーんだ! すげえバンドと対バンをやって、最高のライブを作り上げたいんだよ!」
つい、岩崎たちがすげえバンドだと本音をもらす。それは、純粋にやつらとなら最高のイベントができるという表れからだった。
「いや……素直になるのはいいけどよ、土下座をするほどかよ」
「うるせー成瀬! おめえも土下座しやがれ」
俺の土下座にドン引きしている成瀬の頭を、強引に下げる。
絶対にライブをするためには、土下座でもなんでもする気で高村に協力してもらう。
それを見ていた高村は、なにかを決めたような顔つきでテーブルに置いてあった自分のスマホを手に取る。
「ああ、俺だ。実はお願いがあるんだが……」
そう言って、どこかに電話をかけて話し込んでいる。しばらくして通話を終えると、俺の顔を見ながら口を開いた。
「おまえたちがライブができるように、手配しておいた」
その言葉に、俺たちは驚きの声を上げる。
「マジかよ! あんたは何者なんだ! 数分で場所を確保できるなんて」
「どういうコネを使ったら、そんな芸当ができんだよ……」
「びっくりだよね。まさか、そんなあっさり」
俺たちは、それぞれ思ったことをでかい声で話す。
「騒ぐな、わめくな! 場所は隣町の野外コンサートもできる森林公園だ」
ーーマジかよ……ライブハウスより、そんな広い場所で。つまり、野外ライブか。
いきなりのスケールのでかい話に、俺は驚く。
「けど、そんなところを借りられるようなお金……僕らにはないですよ」
シゲは恐る恐る、現実的なことをつぶやく。
たしかに、借りるとなれば大金が必要になる。もちろん、俺たちが頑張って金を集めても無理な金額だろう。
「問題はない。俺の知り合いに、なんとかできるやつがいるからな。会場費は気にするな」
さらりととんでもないことを言う高村に、ただ驚くばかり。だが、ライブができると決まったと思うと俺は舞い上がった。
「最高の舞台じゃねーか! 野外ライブなんて、俺たちは初だぜ? やっほーい!」
俺たちは、人の家を気にすることなく歓声を上げて騒ぐ。
「後で岩崎さんたちにも伝えなきゃだね! きっと、驚くと思う」
「ああ! やつらとの対バンが野外フェスみたいで、気合いが入るぜ」
「盛り上がっているところは悪いが、条件がある」
高村はハイテンションでいる俺たちに、そう話す。まさか無理難題な条件を突きつけてくるのかと、俺は身構えた。
「……なんだよ? 金なら、少ししか出せないぜ? チケットノルマなら、死ぬ気で集めるけどよ」
「もちろん、チケットノルマはやってもらう。条件はそうじゃない」
一体どんな条件を出してくるのだろうか。俺はその条件とやらがなにか改めて尋ねた。
「そのライブ……俺たちのバンドも出させてもらう。それが、条件だ」
「……はあ? はあああああ?」
高村の出した条件は、俺たちの対バンに加わるということだった。まさかの話に、俺は絶叫する。
「こういうすごいバンドとは、俺もライブがやりたいからな! 主催は俺たちのバンドってことだ」
「ふざけんじゃねー! これは、俺とやつらのライブなんだぞ! なぜ、高村バンドが参戦すんだよ」
「……誰が会場を確保したと思っているんだ? なんなら、キャンセルにしてもいいんだぞ」
「ぐぬぬぬ……」
もはやここまで来たら、断るわけにはいかないだろう。せっかくライブ会場が決まったのに、棒に振るわけにはいかない。
「わかったよ! それで、手を打ってやらあ!」
こうして、高村バンドも対バンに参加する形でライブ会場が決まる。
三つのバンドが参戦するという野外コンサートになった。




