第62話「決まらないライブ場所!どうする仙道」
オタクバンドとの対バンに向けて、俺たちは放課後になるとすぐに貸しスタジオで練習をしている。
「ダメだダメだ! もう一回、最初から弾くぞ」
普段の練習よりもかなりハードで、この日も納得がいかなければやり直すパターンを繰り返していた。
「今のはてめえのギターがリズムに乗ってなかったせいだろ! 同じ曲ばかり弾かせるんじゃねー」
「なに言ってやがんだ成瀬! そこは、おまえのベースがミスったからだ!」
こんなやりとりをしながらも、自分たちのオリジナルをさらに磨き上げていく。
「練習はきついが、その分確実に上手くなってきたな」
「そうだね。より完成してきたというか、どんな日でもイメージ通りに弾けてきたよね」
「ああ。だが、ライブ本番では練習以上の実力を発揮しなきゃダメだぜ」
シゲと小野寺が話していると、俺はギターをスタンドに置きながらそう口にする。
岩崎たちのバンドも、おそらく猛練習をしているに違いない。たとえギャルゲーソングだろうと、完璧な演奏に仕上げてくるはず。
そう考えた俺は、さらに練習が必要だと再確認した。
「ていうかよ、ライブをやる場所とか決まったのか? 一応、俺らが主催者側だろ」
「……まだ、決めてない」
成瀬が話すことに、俺は自信なさげに答えた。
今の時期はどこのライブハウスも予約がいっぱいで、ライブのイベントをお願いしてもなかなか断れてしまっていた。
ライブを開催するにも、多額のお金も必要で学生には厳しいのが現実。
「ふむ、俺たちの学校でやるのはどうだろう?」
「それは難しいかも……確認してみたけど、部活動の大会とかで使わせてもらえる場所はないみたい」
対バンをやろうにも、場所が決まらなけば意味がない。
「一応、岩崎さんたちにはまだ連絡していないけど早めに場所は確保したいよね」
「……ライブできなくね?」
成瀬の言葉に、俺たちは口が閉じる。誰もが、いいアイデアがでないことを表していた。
「とっ、とにかく! 今は練習あるのみだ! 場所は俺が探しておく」
俺はそうみんなに話す。期待されるような目はされないが、保留という形で練習を再開することにした。
ーーしかし、ライブをする場所をどうするか。
帰宅して部屋に戻った俺は、ベッドに横たわりながら考え込む。
なるべく金をかけず、そこそこ広いような場所を探さなければならない。頭の中で考えてみるが、すぐには思い浮かばなかった。
「前にやったスーパーマーケットの駐車場? いやいや、さすがに今回は無理だよなあ」
二組のバンドがやるライブを、スーパーマーケット側が許可するはずもない。イベントライブに誘われる機会もないし、そこまで顔が広いわけでもない。
ーー非常にこれはまずい事態だ。
対バンするは決まったが、場所が決まらないのはいけない。
「むしろ……練習より、こっちをどうにかしないとだよな」
シゲたちには探すと言ったからには、場所決めは俺がしなければならないだろう。
「とりあえず明日になったら、ライブハウスでも調べて交渉してみるか」
ーー次の日。
学校へ着くと、すぐにスマホでライブハウスを検索する。
近場のライブハウスがだめならば、多少遠くても構わない。検索結果に表示されたライブハウスのホームページへ飛び、書いてある電話番号をメモする。
「おはよう、晴君。あれ? なにしているの?」
「ライブハウスの連絡先を調べて、後で片っ端から電話するんだよ。なんとか、場所はおさえておきたいしな」
「……僕も手伝おうか?」
「いや! シゲ、おまえは曲のギターに集中しろ! まだ不安定な弾くところもあるからな」
一人では大変だと思ったのか、そう話すシゲに俺は答えた。
少し不安そうにするシゲを横に、俺は引き続きライブハウスを調べていった。
放課後になり、俺は調べてた連絡先に電話をかける。
「もしもし? 実はライブをやりたいと思って電話したんすけど……」
そうライブハウスのスタッフに話すが、返ってきた返事はノーだった。やはりどこもライブハウスは予約がいっぱいで無理らしい。
その後も電話をしてみたが、どこも同じ。結局、すべてのライブハウスから断られてしまった。
「晴君、どうだった? ライブできそうなライブハウスは見つかった?」
「シゲか……いや、ダメだったぜ。全滅だ」
俺はシゲに断られたことを、素直に伝える。
「僕も少し調べてみたけど……なかったよ」
「すまねえな。俺が探してやるといったけど、この有り様だ」
「まだ時間はあるし、晴君だけが抱え込まずにみんなで探そう」
シゲはそう俺に話すと、教室に成瀬と小野寺が入ってくる。
「ったくよー! まだ見つけられねーのか、おめは」
「成瀬よ、そんな言い方はないだろう? ここは、みんなで探すのがよいではないか」
「……おまえら」
「ちっ、しゃーねぇな! 俺の知り合いに聞いてやるよ」
そう話した成瀬はスマホを取り出して、どこかに電話をかけ始めた。
「仙道、ライブをやりたい気持ちはわかるが一人で決めるものではないぞ? バンドとはチームワークだ」
小野寺は、諭すように俺に話す。たしかに、小野寺の言う通りだ。
「ああ、そうだな! これは、俺たちが開催するライブだ。みんなで、決めなきゃだな」
「うん! 岩崎さんたちとの対バンは、僕も楽しみたいよ」
「うむ。せっかく、久しぶりにやるライブだろうからな。なんとしても、やらねばならぬ」
たしかに、岩崎率いるオタクバンドとの対バンは楽しみでもある。
認めたくないが、すげえバンドだと思うからなおさらだ。
「では、さっそく場所を探そうではないか」
「だな! まだライブハウスはあるかもしれないから、そこから調べようぜ」
こうして、俺たち四人は教室でライブハウス探しを始める。演奏するのと同じように、全員が一丸となった。
だが、なかなか思うような成果には繋がらない。
「……一応、高村さんにも相談してみようか?」
しばらく探していると、シゲはそう提案する。
「ええ? あいつにか? 役に立たねーだろ」
「高村さんのバンドは顔が広いから、もしかしたら協力してくれるかもだよ?」
「そうかあ? まあ……聞いてみるか」
シゲに言われた俺は、しぶしぶ高村に電話をかけてみることにした。
しかし、その電話が思いがけない結果になるとはこの時は知るよしもなかった。




