第60話「やつらが学校へやってくる?!」
ギャルゲーソングでバンドを組むオタクたちに対バンの依頼を送って、しばらく日が過ぎた。
そして、ついにやつらからの返事が来る。
「……これは、どういうことですか? 仙道さん」
「うす! バンドで対決するために、他校にメールを送りました!」
その日の昼。俺たちは、全員職員室に呼び出されて先生からそう尋ねられた。俺が元気よく答えると、鈴谷先生は大きくため息をつく。
ーーなんで、返事を学校に返すんだよ。
ジゲのスマホから送ったのにも関わらず、ご丁寧にこちらの学校に直接連絡してきた。
向こうの先生からの連絡を受け、送ったやつが俺たちだとわかると、事情を聞きに呼び出したわけだ。
「そもそも、あなたたちは部活動で音楽をしていないのでしょう? それなのに、なぜこのようなことをしたのですか」
「……俺たちより、目立つし。ギャルゲーでCDデビューしたのが、許せないからです!」
「それは、ただ仙道さんの妬みでは?」
「ですよねえ! 神さまも、こりゃあ呆れるってもんすよ」
鈴谷先生に、笑いながら成瀬は答える。
ジョークのつもりで言ったのだろうけど、先生は真顔のまま。また問題を起こすだろうと思っていそうな顔だ。
すると、シゲはすかさず先生に向かって説明を始める。
「僕たちだけで勝手にしたことは謝ります! けど、僕らは他校との交流がしたくて」
さすがはシゲだ。先生に対して、それらしい理由を言って納得させとしている。
「有本さん、まさかあなたまで一緒だなんて。けれど、他校と交流と言いましても……」
「部活動としてではないですが、音楽を通じて他校の生徒さんと一緒になにかをするのも、勉強になると思うんです」
「そうそう! そうっすよ、仙道のやつが言うことは魔に受けないでくださいよ」
シゲに合わせるように、成瀬や小野寺も先生にそう話す。鈴谷先生は話を聞くと、さらにため息をついた。
「はあ……まあ、向こうの先生も交流を望んでいますし、我が校としても無下に断れないでしょう」
「じゃあ、バンドで対バンはオッケーすか?」
話の流れ的に、オタクどもとライブはできるように思えた。
「ええ、それは仕方がないですが、我が校で許可しましょう……ただし!」
そう言って先生は、俺に鋭い視線で見る。
「くれぐれも、他校の生徒さんに無礼がないように、我が校の品位を落とす真似はいけません。特に仙道さんと、成瀬さんは!」
「……おっ、俺っすか?」
俺と成瀬は、タイミングよく同じセリフを口にする。
「後日、我が校で向こうの生徒さん達と今後について話すようにしておきますから。そのように、お願いしますね」
「え? もしかして、鈴谷先生も同伴ですか?」
「当たり前でしょう! あなたたちだけでは、なにをしでかすかわからないではありませんか。私も付き添います」
「……ええぇ、マジかよ」
先生が付き添うことに、つい俺は本音をこぼす。すると、それを聞いた先生はさらに俺を睨みつけた。
「とりあえず、日にちが決まるまでは余計なことはしないでくださいね。当日は有本さん、あなたが代表者として対応するように」
「いやいや、先生! バンドのリーダーは俺なんすから、そこは俺が……」
ーーギロリ。
まるで、殺意ある視線。俺はそこまで言って口を閉ざす。これ以上は、言ってはいけない気がした。
たがしかし、ライブをやることは認めてくれただけ大収穫だ。後はライブをやる場所を決めながら、やつらを負かすために練習あるのみ。
先生と話を終えた俺たちは、ひとまず職員室を後にする。
「はあ……まさか鈴谷ちゃんの監視下でライブをやることになるのか」
「けど、ライブはできそうだしよかったね」
廊下を歩きながら、成瀬の言葉にシゲはそう答えた。まさにその通りで、内心俺はホッとしている。
「うむ。だが、これからやることが多くなりそうだな。場所を決めたり、観客をどう入れるかだ」
先ほど俺が思っていたことを、小野寺が口にする。
「ああ、忙しくなりそうだぜ! だが、やるからには全力でやるぞ!」
すでに気合いが入る俺は、みんなに大きな声でさけぶ。
まず初めは、やつらがどういうやつか見極めなければならない。それは、打ち合わせの時にわかるだろう。
ーーもし、ふざけた顔の連中ならばぶん殴ってやる。
俺はそれくらい、意気込んでいた。
「よーし、授業が終わったら練習だ! さらに曲を磨き上げるぞ」
「……張り切り過ぎじゃねーのか?」
「まあね……相手を会った時に、晴君が暴走しないか心配」
「うむ。鈴谷先生がいる手前、暴力沙汰にならぬように見張っておくべきだな」
意気込む俺を他所に、シゲたちはそう話している。
ーー失礼なやつらだな。俺は、そんな破天荒なやつじゃねーよ。ただ、どんな曲を弾くやつらが相手でも最高のライブがやりたいだけさ。
ギャルゲーソングバンドよりも、王道のロックバンドのほうが良いと改めて思い知らせてやる。そう思いながら、俺は今日もギターを弾くのだ。
ーーそして、一週間後。
ついに、オタク連中が俺たちの学校へとやってくる日になった。
「ギャルゲーソングを弾くやつらと、ご対面だな!」
「うむ、どんな人たちだろう?」
「いや、普通のオタクだろ。そんな気にする必要はなくね?」
なぜか、俺たちは空いた教室で待機をさせられている。シゲと鈴谷先生が、最初に応対するらしく別行動だった。
「有本たちが向こうの生徒を、この教室へと案内するらしいからな。俺たちは待つとしよう」
そういう流れになっているらしく、俺たちは教室にある椅子に座りながら待つ。
ーーコンコン!
しばらく待っていると、教室の扉からノックをする音が聞こえる。
「……ついに、来やがったな」
廊下には、あのCDの曲を弾くオタク連中がいる。いよいよ、対面する時が来たようだ。
ーーガラガラ。
そして、教室の扉を開けてシゲに案内されたやつらが姿を現す。




