第58話「探せ!噂のギャルゲーソングバンドを!そして、果し状」
まずは敵を知ることから、始めなければならない。俺はスマホを片手に、片っ端から調べてる。
「ねえ、有本君。仙道君は、なにをあんなにスマホにかじりついているの?」
「ははは……バンドのリサーチかな」
「また、しょーもないことをし始めたわね」
教室でシゲやかなでたちが話す中、俺は気にせずスマホの画面を凝視する。
ーージ、アゴット。バンド、オタク。
ありとあらゆる検索ワードを入力しても、それらしいホームページが出てこない。
有名ならば、ホームページやらSNSアカウントくらいあると思っていたが、まったくヒットしない。
「本当に存在してんのかよ! バンドマンなら、専用アカウントくらい作りやがれ」
「……僕たちだって、そんなアカウントを作ってないよ?」
「うっ……そうだったな」
シゲが言うように、俺たちのバンドもそういったSNSを作っていない。というよりも、オリジナルソングすらネットに投稿していなかった。
世の中のアマチュアバンドは、積極的に自分達だをアピールするためにあれこれしているのだろう。俺たちは、他より出遅れた感が否めない。
「その人たちって、あんたが意識するくらいすごいの? なんだっけ、ギャルゲーソング?」
「CDのやつしか聴いてないが……意識するより、俺より先に行くやつに腹が立つ!」
「それ……ただの逆恨みじゃない?」
上原は呆れながら、小さくため息をついた。
「でも、すごいね。CDに自分たちの曲が入るなんて、憧れるなあ」
「かなで! おまえはギャルゲーソングなど聴くなよ? かなでが汚されてしまう!」
「晴君……ギャルゲーソングに対する偏見じゃないかな」
ギャルゲーソングなど、クラスにいる根暗なオタクが好むジャンルだろう。そんなやつらが聴くような音楽は、まともじゃない。
なにより、かなでにその手の曲など似合わない。
「シゲ、おまえもスマホを出して調べろ! 曲はともかく、バンドの情報をまずは知らなければ」
「うっ、うん……」
俺はシゲに無理矢理スマホを取り出させて、調べるように言う。
なにがなんでも、このオタクバンドがどの程度の実力か見極めなければ。
かなでたちが横で見ている中、俺たちはひたすらスマホで検索しまくった。
「……出てこねー!」
「CDの販売先に聞いてみる?」
「いや、なんかそれはやだ。秘密裏に探らないとだな」
しばらくしても、欲しい情報は得られなかった。
放課後になり、成瀬たちにも調べるように話すが、成瀬に関してはやる気なし。
「ふむ、やはりバンド名だけでは探し出すのは難しいな」
唯一、調べてくれる小野寺は、眉間にシワを寄せながらそう口にする。
「そうだね、せめてどこの学校かわかればいいんだけど」
「もしかすると、他県の学校な場合もあるだろう? そうならば、対バンを申し込むのもさらに厳しいだろう」
ーーそうだった、その可能性もあったか。
なにも同じ地域にある学校のやつらとは限らない。小野寺が言うように、他県なのかもしれない。
そのならば、一緒にライブをやるのだって一筋縄ではいかない。
「ちっ、まったく謎めいたバンドだな! これだけの曲が弾けるのによ」
「晴君。一応、演奏は認めているんだね」
「認めて……ない!」
結局、この日はなにも成果を得られずに終わった。
だが、数日後に思いがけないところから手かがりを得ることになった。
「ああ、そのバンドか。僕、知っているよ」
そう話すのは、クラスにいるオタク。いかにもオタクな見た目で、俺は睨みつける。
「はっ、晴君。顔が怖いから、僕に任せて」
もしかしたら、クラスにいるギャルゲーをやっているやつに聞けばなにかわかるのではないか。シゲがそう話して、クラスメイトに尋ねてみた。
そして、答えがまさかの知っていたという。
シゲは、詳しい話をオタクに聞くことになった。
「それで、そのギャルゲーソングを弾く人たちがこのCDに入っているバンド?」
「うん。なんか、ギャルゲーソングを世に広めるために活動しているんだって」
オタクが言うには、学校の同好会でギャルゲーソングを弾きながら布教活動をしているらしく、一時期オタク界隈では話題になったらしい。
「まったく……しらねえなあ」
横で話を聞いていた俺は、そんな話題があったなんて気づかなかった。
「どこの学校の生徒かは……わかるかな?」
「えっと、ちょっと待って」
そう言ってオタクのクラスメイトはポケットからスマホを取り出して、なにやら文字を打ち込んでいる。
「ほら、これ。前にどこかで演奏した時の動画で、ここに学校の名前が」
ーーなに? 演奏した動画だと?
スマホの画面を俺たちに向けるオタクから奪うと、俺はすぐに動画の再生ボタンを押す。
自撮りだろうか、手ブレがひどく見づらいけど動画で流れる歌声はCDのやつと同じだ。
生で演奏してこの高いレベルは、驚く。
「場所はライブハウスじゃなくて、どっかの駐車場か?」
「そうだね、どこかの商業施設みたいな風景だね」
シゲは動画に写った風景を見ながら、そう推測する。よりによって、俺たちがスーパーマーケットでやったみたいなゲリラライブをやったわけだ。
「ちっ、真似しやがって……さらにむかつくぜ」
動画の中でギャルゲーソングを弾く姿を見ながら、俺は苛立つ。
ただ、その演奏する姿は堂々としていて、まさしくバンドマン。そのアンバランスさが、気に入らない。
「シゲ……こいつらの学校はどこだ? 他県か?」
ますます、こいつらとライブをやってみたい。
俺はまだ見ぬこのヘンテコなバンドに、ワクワクしながらシゲに尋ねる。
「……えっと、晴君」
学校を調べたのか、シゲは少し困惑しながら答える。
おそらく、他県だろう。たとえどんな地域にいようが、なにがなんでも対バンを申し込んでやる。
「この学校……同じ地域内にある公立高校だよ」
「なん……だと」
シゲから出た言葉に、俺は驚いた。
まさか、そんな近くにいるとは思いもしなかった。
「シゲ……紙とペンを用意しろ」
「え? 晴君、なにをするの?」
「やつらに、果し状を書く! まさに、バンドマンらしいやり方だ!」
「いやいや、晴君……それ、喧嘩する時に送る奴じゃない?」
俺はシゲの話を聞かず、紙に勢いよく書き殴る。それは、俺からあいつらに向けた挑戦状でもあった。




