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俺たちのロッケンロールデイズ!!  作者: 獅子尾ケイ
バトル!集う実力バンドライブ編
53/77

第53話「少しずつ変わる、ライブシーンは続く!」

 オリジナルの一つであるBADBOY、GOODLOVEのイントロが鳴る。


 開始からの歪んだギターサウンドが、アップテンポで響く。


 ーーギュワァァァン! ジャカジャカ!


 シゲが弾く左手は慣れたようにフレッドを押さえ、コードチェンジを繰り返す。


 そこへ、成瀬が弾くベースの低音が合わさって噛み合う。ベースラインの流れるような音が、ギターと一緒に走る。


 ーードンッ! ドンドン!


 ドラムを叩く小野寺は、パワフルで正確。なにより、安定感があるリズムを叩き出していた。


 さまざまなドラムセットを使いこなし、俺たちが弾く音を際立たていく。


 ベース、ドラム、ギターの音が一体感となってステージから客席へと向けれた。


 俺はみんなの音を耳で聴き、自分のパートを弾く。


 シゲと同じようにギターのコードを弾きながら、マイクに唇を近づけた。


 ーーさあ、いくぜ!


 軽く息を吸った後、俺はマイクに向かって曲の歌を歌い出した。


 この冷め切って退屈そうにしてやがる連中どもを、あっと言わせてやるような気持ちで歌う。


 疾走感ある曲調に、俺が英語で歌うメロディが重なる。


 もともと、かなでを想って考えた少し恥ずかしくなる歌詞。


 だが、俺が伝えたい気持ちが詰まった歌を今は観客に対して歌っている。


 ーーたとえ悪ガキでも、良い愛し方ができるんだぜ? という、意味を持った曲だ。


 俺たちにしか弾けない曲で、紛れもないオリジナルソング。


 それを今、ライブハウスで弾けるのは最高だ。


 古川たちのバンドよりすげえライブをやってやる目的よりも、みんなで一つになって演奏するほうが気分が上がってくる。


 俺はギターを弾き、歌いながらそう思った。ライブをやっている時は、自分たちの世界なのだ。


 Aメロからサビへと変わったところで、次第に会場の雰囲気が微妙に違ってきたさことに気づく。


 ほんのわずかな人だが、俺たちが演奏する曲に反応している。


 リズムに揺れる体。曲のテンポに合わせて足を踏む。ステージから見ると、そんな姿を目にする。


 ーーなんか、受け入れられてきていない? 僕らの曲。


 シゲはそう言うような目線を俺に向けた。俺だけじゃなく、シゲも雰囲気が変わったことを感じているようだ。


 ーーふっ、さすが俺様のベースプレイだな。それに反応したに違いないさ。


 隣でベースを弾いていた成瀬は、俺に近づきながら、そんな風にベースを鳴らし続ける。


 成瀬のおかげなど一ミリも思っていないが、間違いなく俺たちのバンドが弾く曲を意識していると思えてきた。


 ーージャカジャカ! ジャララン!


 俺の弾くギターの音色が、段々と陽気に上がっている。


 まだ数名だが、俺たちのバンドが受け入れられたことに喜びを感じているからだ。


 だが、曲をこれからさらに盛り上がらなければならない。


 数名じゃあ足りない。この会場にいるやつらを全員、同じにしてやる。


 そうさせるために、俺はギターの弾く手をアクションをつけて豪快に弾く。


 それに合わせるように、声を張り上げて歌う。


 ーー古川たちのバンドが好きなのはいいが、俺たちを見て聴け!


 俺のそんな叫びを伝えるように、ひたすら歌い続ける。


 曲はヒートアップしていき、ステージに立つ俺たちは今までにないくらい迫力を生み出していた。


 すると、観客がいるほうから歓声が上がった。


 この会場にいる人の何人かへ、俺たちの曲が届いている。


 ファンでもない。初めて見るバンドの俺たちにも関わらず、誰かに曲の良さがたしかに響いているのだ。


 少しずつ、ライブハウスであるような熱気が湧いてきている。


 ーーこの雰囲気だよ、俺が欲しい最強のバンドに必要なのは。


 俺たちは互いに目を合わせて、それを実感する。ステージから爆音で曲が流れ続けた。


 曲はBメロへと変わり、サビに向かう。その後は、ギターソロが待っている。


 シゲがギターソロを担当するのだが、俺はなにも心配はいなかった。


 横でギターを弾くシゲの姿は堂々としていて、初めの頃みたいなぎこちなさはない。


 ーーさあ、そろそろだぞシゲ。おまえが奏でるソロを見せてやれ!


 サビが終わり、ギターソロが始まる。


 俺はマイクから少し離れ、ギターのリフに集中する。


 ギターのボリュームトーンのノブを回して、素早く調整した。


 ーーキュイィィン! ギュワンァァン!


 シゲは左指をフレットの下まで持っていき、チョーキングをしては素早くソロを奏でる。


 なめらかな指の動きがギターの弦を揺らし、一音一音しっかりと鳴らす。


 俺や成瀬はその音に合わせてるように、ソロを目立たせるために弾く。


 イカしたギターソロがスピーカーから鳴り出すと、観客はわっと騒ぎ始める。


 ーーどうだ、シゲの弾くギターソロはクソかっこいいだろう?


 会場に響き渡る音を聴く観客に、俺はそうニヤリと笑う。


 ステージに立った頃のような冷めた雰囲気は、なくなりつつある。


 曲ももうじき終わり、ラストの曲が残っていた。


 このライブでやるのが、初になるであろう二つ目のオリジナルソング。


 BADBOY、GOODLOVEよりも、さらにかっこいい曲。


 ーージャァァン! ジャンジャンジャカ、ジャァァン!


 曲のエンドロールが鳴った。


 最初から全力で弾いているためか、俺は息を切らしながら額に汗をかいている。


「えー、次の曲がラストです。この曲をやるのは、今日が始めてで……」


 呼吸が荒いせいか、俺ははあはあと言いながら曲を紹介する。


 観客がいるほうを向きながら話す俺は、辺り全体を見渡した。


 俺たちのバンドを見て興味を持った人と、いまだに無反応の人と半々。


 まだ、俺たちのステージは終わらない。


 残りの無反応なやつらを、この曲で変えてみせる。呼吸を整えて伝えようとしていた。


「この曲がライブでどんな風になるか、俺たちにもわからない……けど!」


 俺は力強い声で話すと、成瀬たちは楽器を構え直す。


 そして、俺は言葉を続ける。


「今日、ここにいる人たちにとって特別なライブだったと、思わせてるぜ!」


 叫び終わった後、小野寺のドラムが再び鳴り始めた。それは、これから演奏する曲のドラム。


 それを聴いた俺は、ピックを握る手に力を入れて弦をはじく。そして、マイクに向かって叫んだ。


「ラストいくぜえぇ! 新曲のアンビシャス、マンズ!」


 曲のタイトルを叫び、俺たちのライブが再開する。


 待望の新曲を弾く、最高の時間が始まった。

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