第43話「第二のオリジナルを完成させる!」
放課後に秋山さんに電話をかけ、イベントに参加する趣旨を伝えた。
ライブをやるからには、全力で立ち向かうしかない。
「いや……おめえの参加理由が、女だなんてなあ」
「うむ、不純だ」
成瀬たちは俺を見ながら、ボソッとつぶやく。
「うるせえ! 成瀬にだけは言われたくねーわ!」
かなでが観てみたいと言ったならば、俺はそうせざるおえない。
まさに、これは愛なのだ。
「でも、晴君がやる気になってくれたなら、結果オーライだね」
シゲの言葉にうなずき、俺はギターケースを背負う。
「とりあえず、今日からライブ本番に向けて練習するぞ。毎日、弾きまくる!」
学園を出た俺たちは、楽器屋にある貸しスタジオへと向かう。
そこでバンドの練習と、ライブにやる曲をどうするか話すのが目的だ。
「そういえば、二つ目のオリジナルはどうするよ? イベントでやんのか?」
「ああ、曲のイメージははっきりしているし、これから仕上げれば本番に間に合うな」
楽器屋に向かう道中、シゲが作った新しいオリジナルソングについて話す。
成瀬が言うように、この曲もセットリストに入れるつもりだ。
敵は高村だけでなく、他にも有名なインディーズバンドがいる。
それらに対抗するには、こちらもオリジナルで勝負するしかないだろう。
「まだ……直したいフレーズとかあるからね、間に合うかなあ」
ある程度は形になっていても、シゲはまだ納得がいかない様子。
「それなら、みんなで完璧な最高の曲にしようぜ!」
あの曲は、さらにいいものになる可能性がある。そのためならば、俺はなんだってやるつもりだ。
俺は歩きながら、そう意気込んで話す。
楽器屋に到着して、スタジオの中に入ると、さっそくギターをアンプに繋げる。
自宅にある小さなアンプではなく、大きなアンプなだけあって、鳴らすと迫力が違う。
「やっぱり、アンプはでっかいやつじゃねーとな! スカッとする音量だ」
俺はギターのボリュームを上げ、その音色を楽しむ。
「まだ音を出すのは早すぎんだろ、まずは新しいオリジナルをどうしていくか話そーぜ」
ベースをケースから出さずスタンドに立てかけた成瀬は、床に座り込んで俺に話す。
「ベースラインなんだけど、ここをもっとパターンを増やしたほうがいいのかな?」
「まあ、いろいろ小技を出す意味ではいいけど、ギターと音が合いづらくね?」
「ふむ……俺のドラムも、それでは印象に残らないのでないかな」
俺を他所にシゲたちも床に尻をついて、楽譜を囲いながら話し合っている。
俺は頭をぼりぼりとかきなぎら、ギターを置いてみんなの話に入る。
「この曲は疾走感をさらに出したいなあと思うんだけど……なかなかいいフレーズが浮かばなくて」
シゲは楽譜に赤いペンで二重線を書いたり、新しいパターンのリフを書き直していた。
「この曲って、歌のメロディはすでに出来てんだろう?」
俺は楽譜を見ると、上のほうにボーカルのパートが書かれていた。
他のパートよりも長く、ボーカルだけが完成しているように見える。
「うん、だからそれに合うようなオケを作ってみたんだけど、しっくり来なくて」
そこでシゲは頭を悩ませるように、楽譜とにらめっこをしていた。
「なら俺が鼻歌で歌うからよ、それに合わせていろいろ弾いていこうぜ」
「え? 晴君、もうボーカルのメロディを覚えたの?」
シゲは驚きながら、意外そうな顔をして俺に尋ねる。
ーーったく、失礼だな! 俺だってバンドマンだ、それくらい余裕さ。
などと思っている俺だが、全部を鼻歌で歌えるわけではない。
メロディだけを歌っても、歌い方一つでボーカルが変わってしまうのだから。
「なら、俺もベースのパターンを変えながら弾くぜ。いろいろ試してみたいからな」
「うむ、右に同じく。ドラムのリズムも、変えながら叩こう」
成瀬と小野寺は立ち上がって、それぞれの楽器を弾く準備を始める。
「なんにせよ、弾いて合わせてみなきゃわからねーこともあるだろ。ほら、シゲもギターを持て」
「そうだね、まずは弾いてみようか」
俺の言葉に納得したシゲがギターを持つと、俺もマイクスタンドがある位置まで向かう。
譜面とにらめっこして話し合うより、実際に弾いて確かめてみるのがバンドとして正解。
たとえ未完成でも、弾くことに意味があるのだ。
「よーし、イントロから弾いていくぞ! 準備はいいか?」
俺のかけ声を合図に、全員が弾く態勢になる。
「それじゃあいくぞー、ワンツー!」
そう叫んだと同時に、俺たちは一斉に弾き始めた。アンプから爆音が鳴り響き、激しいサウンドがスタジオに広がる。
ーージャカジャカ、ジャンー!
楽譜に書かれているフレーズを、ギターで弾く。曲のテンポが速いのか、弾いてはコードチェンジを繰り返す。
「ふんふふーん! ふん、ふん!」
弾くオケに合わせながら、俺はマイクに向かって鼻歌を歌い出した。腹に力を込め、一気に声を張り上げる。
ーーまあ、弾いて歌ってみた感じは悪くないんじゃないか?
シゲが言うほど、楽譜に書かれているパターンはそこまで悪くない。
鼻歌を歌いながら弾く俺は、その思っていた。
しかし、横で弾くシゲはどこか不満げな顔をしている。シゲだけでなく、成瀬たちも同じだった。
ひとまずサビのところまで弾き、そこで一旦演奏を止める。
「……別にこれでいいんじゃね?」
俺は先ほど思ったことを踏まえて、そうみんなに話す。
きちんと曲になっているし、悪くない。
最初に作ったBADBOY、GOODLOVEよりインパクトがあるわけではないけれど。
「うーん……弾いてみると、そう感じるけど」
「うむ、ドラムのリズムを変えながら叩いたが、なんと言えばいいのやら」
シゲと小野寺は、なにか物足りなさを感じるようになんとも言えない様子だ。
すると、成瀬がその物足りない理由を口にする。
「シンプルすぎるんだよ、この曲。オリジナリティはあるけどよ、なんか特徴がねー感じ」
楽譜を手に持ち、改めて見る成瀬はそう口にする。
「こらぁ、成瀬! シゲが作った曲になにケチをつけてんだ」
俺は成瀬に怒鳴り声を上げた。
シゲが頑張って作った曲を、そんな風に言われて腹が立つ。
「いや……成瀬君の言う通りかも」
シゲは成瀬の言葉を聞いて、答えた。
「多分だけどよ、ギターパートが単調だからじゃねーか?」
ドラムやベースのパターンを変えても、曲の要はギターだ。
どんなにいいベースラインやドラムのリズムがあっても、ギターが単調ならば曲がパッとしない。
そう、成瀬は指摘をする。
「そうは言っても、そんな特徴があるギターのフレーズを作れるか?」
オリジナルの曲を作る際、ギターのフレーズを一から作るのは簡単なことではない。
シゲだって、なにか既存の曲からヒントを得て、考えただろう。
「僕……作るよ! みんなが納得するフレーズを作ってみせる」
「おいおい、シゲ。それだと、ギターパートは作り直しにやるぞ? かなり、大変じゃないか」
「うん、でも……次にやるイベントは、きっと手強いと思うんだ。だから、それに対抗できる曲を作りたいんだよ」
シゲは今までにないくらい真剣な顔で、そう口にする。
その言葉には、強い意志があった。




