表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺たちのロッケンロールデイズ!!  作者: 獅子尾ケイ
バトル!集う実力バンドライブ編
44/77

第44話「他力本願!作り直すぜギターフレーズ!」

 貸しスタジオで、シゲがオリジナルソングを見直すと話してから数日が過ぎた。


 ギターパートを弾く俺とシゲは、この日も放課後で話し合っている。


「んで、シゲ……なにかフレーズはひらめいたか?」


「うーん」


 白紙の楽譜を見つめながら、俺はシゲに尋ねる。まだなにも浮かばないような様子で、言葉を挟む。


 机に座りギターを持つ俺は、無意識に軽く音を鳴らした。


「やっぱり、最初に作ったフレーズだとダメなのか?」


「うん、あれだと成瀬君たちが練り直したものと合わなくなっちゃうし」


「……けどよー」


 ギターパートを一から作り直すと言うけど、それがどれだけ難しいか俺にはわかる。


 正直に言うと、どうしても他の曲に似たギターになるのは仕方がないこと。まったく新しい音を作るのは至難の業だ。


「ギターのコード進行はそのままで、だけど真新しいリフが必要なんだよ」


 シゲはそう口にして、楽譜にコードを書いていく。


 俺はそのギターコードを見て、鳴らしてみることにした。


「まあ、たしかに簡単なジャンジャカだとパッとしないなあ」


「晴君は歌いながらだからね、難しいパターンはなるべく避けたいよ。それより……」


 問題は自分が弾くギターをどんな形にすればよいか。シゲはそう考えているようだった。


「あれ? あんたたち、まだいたの?」


 教室に入ってきた上原は、俺たちに気がつくと声をかけてきた。


「あ、上原さん。どうしたの? 忘れもの?」


「ちっ! うるさいやつが現れやがったな」


 俺がそう嫌味を言ってる中、上原は机にある楽譜を見つける。


「それ、新しい曲のやつ? なんか、白紙だけど」


「うん、実はギターのパートを作り直していたんだ」


「へえ、ちょっと楽譜を読ませて」


 シゲは楽譜を手渡す。上原は受け取り、それを読み始めた。


「上原さんもギターを担当してたよね? 見た感じ、どうかな?」


「おいおい、シゲ……よりによって、こいつに見せるなんて」


 同じくバンドを組んでいる上原は、言わばライバルバンドの一組だ。


 そんなやつに、まだ未完成のオリジナルを見せるのは、どうかと俺は思った。


「うーん、悪くはないけど。ギターがちょっと単調ね」


「やっぱり……ベースやドラムには合わないフレーズだよね」


 シゲが初めに作ったギターのフレーズを見た上原は、すぐにそれが単調だと気づいて話す。


 成瀬が指摘していたことを、楽譜を見ただけで言い当ててしまう。


「テンポ的に速い感じでしょう? なら、ここはこんなリプにするといいんじゃない?」


 そう言うと、上原はペンでタブ譜を書き始める。スラスラと書いて、あっという間にサビのところまで作ってしまった。


「すごい……僕が考えたものより、いいフレーズになった」


 上原が書いたのを見たシゲは、驚いた顔をしている。同じく楽譜を見ていた俺も、思わずうなずいてしまう。


「ああ、これなら成瀬が弾いていたベースラインに絡ませても違和感がなくなるかも……」


 シゲが最初に作ったギターのフレーズとは違い、より疾走感があってテクニカルなフレーズ。それを、上原は意図も容易く書いていた。


「曲のイメージは譜面を見ればわかるし、このパターンがいいと思ったわ」


「すごいよ上原さん! ねえ、晴君。このフレーズを採用してもいいかな?」


「まあ、待てシゲ。ギターの音色を聴かないと、本当に良いものかわからねーだろう」


 シゲはそう目を輝かせながら、俺に尋ねてくる。たしかに、タブ譜を見た感じは曲のイメージとして完璧だ。


 だが、実際に弾いたギターの音を聴かないとなんとも言えない。


 そう話すと、上原は俺のギターを奪って椅子に座る。


 ギターのペグを回してチューニングを手際よくした後、弦を押さえ始めた。


「そう言うなら、弾いてみせたげるわ。よく聴いてなさいよ」


「おっ、おい! なに勝手に俺のギターを……」


 俺がそう言おうとした時、上原はギターを弾き始める。


 俺のギターはそこまで値段が高いモデルでない。高級なギターに比べれば、音の良さは悪いほうだ。


 にもかかわらず、上原が引くと生音なのにいい音に聴こえてしまう。


 ギターを弾く人が違うだけで、ここまでギターが変わるのは驚きだ。


 それよりも、弾いているフレーズが俺に衝撃を与える。


 コード進行のパターン。弾く右手の小刻みな動き。それらから生み出される音が、俺を高揚させる。


「まあ、だいたいこんな音ね」


 弾き終わった上原がギターを止め、そう俺たちに向かって話す。


「すごいすごい! 実際に音を聴いたけど、イメージにぴったりだよ。ねえ、晴君」


「うっ……ああ、そうだな。ぐぬぬ……」


 なぜか嬉しそうにしているシゲは、俺に尋ねてくる。


 俺は悔しい気持ちになりならがらも、そう答えるしかできなかった。


「まあ、このフレーズはあくまで例えだから。そのまま使うものよし、さらにアレンジしてもいいかも」


「これをさらにアレンジ……かあ」


 シゲは上原が書いたタブ譜を見ながら、小さく口にする。


「結局は、あんたたちがそれをどう表現するかってことね。さて、あたしはそろそろ行くわ」


 そう言うと、上原は席を立って教室を出ようとしていた。


「ありがとう、上原さん。僕、頑張ってみる」


「ちっ、さっさといきやがれ!」


「晴君……せっかく上原さんがフレーズを考えてくれたのに、お礼を言わなきゃだよ」


 手を振りながら、上原を追いやる俺にシゲは呆れながら話す。上原が去った後、改めてあいつが書いたタブ譜を見つめた。


 以前に歌の歌詞を考えていた時は、かなでにアドバイスをもらっていた。


 今回はまさかの上原に、アドバイスをもらってしまったのは、どうにも悔しい。


「それで晴君、僕はこのまま上原さんが作ってくれたのを使いたいんだけど」


 そう思いふけっている俺に、シゲはあいつが作ったフレーズを使いたいと言いやがる。


「まあ、俺たちがぐだぐだと話し合っても決まらないからなあ」


「じゃあ、ギターパートはこのフレーズで決まりだね!」


 たしかにこのタブ譜通りに練習すれば、成瀬たちも納得するだろう。


 だが、上原が作ったのをそのまま使うのは俺のプライドが許さない。


「いーや! シゲ、これをさらにアレンジし直す! もっとすげえ弾き方があるはずだ」


 そう、これは俺たちが作り上げる第二のオリジナル曲。俺たちが練り直さなければ、意味はないけれど。


「ええ……じゃあ、また一から作るの?」


「いや、これはこれで……利用価値はある! こいつを基準に考えよう」


 俺は悔しい声を滲ませながら、シゲにそう答えた。


 ーー認めたくないが、上原のセンスには敵わない。


 そう俺は思ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ