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俺たちのロッケンロールデイズ!!  作者: 獅子尾ケイ
活動!新たなるライブ編
36/77

第36話「すげえすげえ!これがライブバンドか」

 高村のライブが始まって、わずか数分。


 まだ一曲目にも関わらず、観客は盛り上がっていた。


 ステージに鳴り響く爆音。そこから聴こえる、心臓が波打つロックサウンド。


「……こりゃあ、すげえな」


 俺はあまりにもヒートアップするステージに、そう口にする。


 横にいるシゲたちを見ると、目線はステージに釘付けだった。


 すべてにおいて、レベルが高い演奏。


 ドラムやベースのビートは乱れず、タイミングはバッチリ。それに重なるギターの音色とも、見事にマッチしている。


 高村はまったく余裕を持って弾く姿が目に映る。


「八百屋の息子なのが、不思議なくらいだな……」


 ギターを弾く姿とのギャップに驚きつつも、俺はバンドの演奏を聴き入る。


 やはり中堅バンドなだけに、曲はカバーではなくオリジナル。


 少し古くさいロックだなと思うけど、女性ボーカルの力強い歌声は凄まじい。


 ーーテレビで流れるしょうもない曲より、全然いい曲じゃねーか。


 まだ一曲しか聴いていないが、高村のバンドはロック好きなら間違いなくハマる。


 俺は無意識に足でリズムを取り、曲を聴いている。


 ーージャーン! ジャカジャン!


 あっという間に一曲目が終わり、続いて二曲目が始まった。


 高村のライブを見て参考にしようとしていた俺は、すっかり場の盛り上がりに混ざっている。


 純粋にこのバンドがやるライブに、盛り上がっていた。


「晴君……なんかすごい飛び跳ねているね」


「うむ、完全にライブを楽しんでいるな」


 シゲたちはそんな俺を見ながら、そう話せている。


「おまえらも、ばあっと盛り上がれよ! やっぱり生のライブは最高だな!」


「あ、ああ……そうだな」


「でも、たしかにすごいバンドだなって思うよね。曲もそうだけど、バンドの貫禄みたいなのも感じるよ」


 シゲはバンドの様子を見ながら、そう評価する。


 それはこれまで何度もライブをやってきたバンドだからこそ出せるものだろう。


「ふーむ……」


 曲が流れている中、成瀬だけは会話に入らずなにか考えているようだった。


「どうしたんだろう? 成瀬君、ずっと一点に集中しているよ」


「うむ、ベースを弾く女性を見ているようだが」


「あいつも、自分より上手く弾いてるベーシストだと思っているんじゃねーのか?」


 俺たちに反応していない成瀬に、俺はポンポンと肩を叩く。


「なに見てんだよ! ベースのテクニックでも盗もうとしてんのか?」


 俺がそう尋ねると、成瀬は小さくつぶやく。


「あのベースの子、可愛いな……ライブが終わったら声をかけてみようかなあー」


 演奏のでかい音で聞きづらいが、成瀬はそんなことをつぶやいていた。


「おめぇ……純粋にライブを楽しむこともできねーのかよ」


 どれだけこいつの頭の中は、女のことでいっぱいなのだろうかと呆れてしまう。


「はは! 俺様は女の子を第一に考えるからな、バンドはその次よ」


「……おめえなあ」


 俺が成瀬に一言言ってやろうかとしている間に、二曲目も演奏が進んでいく。


 曲が流れる度に観客は歓声を上げ、熱気を会場全体的に感じる。


 それは俺たちでもわかるくらい、バンドが観客に受け入れられている証でもあった。


 するとステージにいる高村はギターを違うものに変え、やたらギターを低く構える。


「なんだ? なんでギターを変えるんだよ」


 ストラトキャスターからレスポールに変えるのを見た俺は疑問の声を上げる。


「わざわざギターを変える必要はあんのか? 見たことねーな」


「うむ、ギタリストはライブでギターをチェンジするものなのか?」


「どうなんだろう? 晴君はわかる?」


 同じように疑問を持つ成瀬たち。シゲはそう俺に尋ねてくる。


 ギターの調子が悪いとか、なにかしらトラブルがあった場合にギターを違いものにすることもある。


「いや、俺にもわかんねー。なにをするんだ、高村は」


 俺がシゲに答えていると、他の観客が先ほどより歓声を大きく上げ始めた。


 まるで、次の曲を待っていたように。


「次の曲は、前に告知していた新曲をぶちかますわ!」


 ボーカルがテンションを上げて話すや、会場はヒートアップする。


 そして少しの間を空け、高村の弾くギターの音色が鳴り出した。


 ーー疾走感があるリフ。


 パターンが単純なはずなのに、耳にはしっかりと残るような印象。


 エフェクターでの激しく歪んだ音が、さらにギターの良さを加速させる。


 そのすごさに、ただ俺は驚くだけだった。


 続いてベースとドラムがギターを追いかける形で、重なっていく。


 そこから作り出されたバンドの演奏に、ボーカルが入った。


「す、すげえ……なんだ、このくそかっこいい曲は」


 ギターを変えた理由は、この曲を弾くためなんだと納得する。


 ストラトキャスターで弾くより、レスポールで弾いたほうが曲には合っている。これは、レスポールにしか表現出来ない。


 だからこそ、この曲はすごさがある。


 高村の弾くギターに観客は湧き、ボーカルが歌い出すとさらに歓声は上がる。


 この場にいるファンが熱狂するは無理もない。


 間違いなく高村のバンドは、すげえロックバンドだ。


「すごいね、初めて披露するのにこの盛り上がり」


「ああ……悔しいけど、俺たちのバンドより遥かにレベルが違う」


 世の中には毎日すごいバンドが生まれ、いい曲をライブでやっている。


 高村のバンドみたいなのが、腐るほど存在しているだろう。


 俺は曲に衝撃を受けて、自分たちのバンドがまだ低い位置にいることを思い知らされる。


 この日のライブは、間違いなく大成功。


 これだけ観客を湧かすことができるのだから、それだけの実力があるバンドだ。


 俺だけでなく、みんなもそう感じている様子だ。


 誰一人、言葉を発せずにその曲に衝撃を受けている。


「僕たちも、こんなライブができるバンドになりたいね」


 不意にシゲが言った言葉に、俺は決意を込めた口調で答える。


「ああ、こんなすげえバンドよりもっと観客を湧かせられるバンドになってやる」


 高村たちのライブを見れてよかったのかも知れない。


 他のバンドの凄さや、ライブでのパフォーマンス。そのすべてが、俺たちに新しい目標ややる気を与えてくれたのだから。


 俺は闘志を燃やしながら、この盛り上がっているライブを目に焼き付けた。

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