第27話「聴け!俺が考えた歌を!言うなれば愛だ」
「というわけで! 曲の歌を作ってきたぜ」
俺の言葉に、シゲたちはポカンとした表情でこちらを見る。
ーーなに言ってんだこいつは。
そう言いたげな顔で、成瀬は口を開いた。
「いや……早くね? 昨日の今日だぞ」
「まあな、徹夜して作ったからな! 俺もこんな早くできるとは思わなかったぜ」
一仕事終えたサラリーマンみたいな仕草で俺はそう答える。
「それにしても早すぎではないか? そんな、素早く作れるものなのか?」
「晴君、具合とか悪くない? 寝不足みたいな顔をしているよ」
「問題ない! 俺はロックンローラーだからな、これしきで悪くなるわけねえだろ」
本当は今にも寝てしまいそうなほど疲れているが、俺はそんな素振りを見せない。
そして俺は、机に歌詞が書かれた紙とスマホを置く。
「歌をスマホに録音したからさ! とりあえず聴いてみてくれ」
「いや、この場で歌わんのかい!」
そうツッコミを入れる成瀬など構うことなく、ボイスレコーダーアプリを立ち上げる。
手早く操作して、再生ボタンを押した。
数秒ほど過ぎた後にギターの音色が聴こえてきた。
「へえ、一応ギターを弾きながら録ったのかよ」
「しっ! もう少ししたら歌のパートが入るんだから、静かにしてろ成瀬」
全員が机に置かれたスマホに耳を傾ける。
そこへ、俺が曲のギターに合わせて歌う声が流れ始めた。
時間にして、三分ほど。
スマホのスピーカーから聴こえる歌と歌詞にみんなは黙って聴いていった。
俺が歌ったところも終わり、曲がフェードアウトする。
「……どうだった?」
無事に聴き終わって、俺は恐る恐るみんなに尋ねた。
誰も返事をせず、なにか考え込むような態度で黙っている。
ーーおいおい、誰かなにか言ってくれよ。
成瀬あたりがダメ出しをするんじゃないかと身構えているが、本人はなにも言わない。
シゲや小野寺もじっとしているだけで、なにを言おうか悩んでいるようだった。
「……まあ、悪くはねーな」
しばらくして、最初に口を開いたのは成瀬だった。
「マジか……?」
「あ? ああ、メロはオケに合ってんじゃね?」
まさかの反応に俺は聞き返すと、成瀬はそう答えた。
「うむ。歌が入ると曲のイメージもガラリと変わって、この曲はこういう感じなのかと思うぞ」
「本当か? バンドの音楽に疎いおまえでもそう思うのか?」
「失敬だな! 太鼓の鉄人プレイヤーの俺を甘く見るでない。だが、俺はいいと思うぞ」
曲を聴いた感想を二人は話すが、問題はシゲだ。
あいつの感想が、一番重要。
シゲが納得するような歌になっているのだろうか。もし、少しでも気に入らないところがあれば、俺はすぐに歌詞とメロディを作り直す覚悟がある。
俺はシゲに向かって、もう一度尋ねる。
「どうだ? おまえは聴いて」
そう尋ねると、シゲはじっと俺の目を見つめる。
その目は、今まで見たことがないくらい真っ直ぐだった。
ーーこっ、こわいな……初めてシゲにビビッてしまいそうだ。
心臓はバクバク。なにを言われてもいいように、俺は心の準備をする。
そんな俺に、シゲはゆっくりと口を開いた。
「すごいね……晴君は」
真剣な眼差しをした後、シゲはにこりと笑いながらそう口にする。
「……え?」
「一日だけで、曲にメロディを入れられるもの。しかも、きちんとオケに合うように」
「おっ、おお……そうか? じゃないよ! おまえは聴いて、これでいいのか? 気に入らないところとかあるだろ?」
「ないよ? だって、晴君が作ったメロディと歌詞だもん。そんなこと思わないよ」
シゲが話す声は、まるで自分のことのように喜んでるふうに聞こえる。
「僕は……曲のメロディは、これでいいと思うよ。聴いててすごくかっこいい」
その瞬間、俺は嬉しさが込み上げてくる。自分が作ったものがみんなに受け入れたのだから。
「ついに、僕らのオリジナルソングがきちんと完成したね」
「うむ! これは、俺たちの曲である」
「まあ、俺様のベースがあってこそメロディが光るけどね」
みんなはオリジナルソングが正式に完成したことに満足げだった。
「ていうかよ、英語の歌詞なのはわかるけどよ、なんでラブソングぽいのよ?」
成瀬は歌詞が書かれた紙を見ながら、俺に尋ねる。
「そうなのか? 俺は英語が苦手だから歌詞の意味はわからん」
「いや……それはだな」
俺が言いにくそうにしていると、シゲはクスクスと笑いながら話す。
「これって、晴君とかなでちゃんのことを歌ってる歌詞でしょ?」
まさにシゲが言った通りで、俺はかなでのことを想って書いたものだ。
自分の感情を曲に伝えることを考えたら、かなでのことはしか浮かばなかった。
曲を聴く人に、俺のかなでに対する愛を感じて欲しいから。
「……はああああ?」
シゲの言葉に、成瀬はそう叫ぶ。
「なんで俺様がおまえの恋愛なんぞ歌った曲を弾かなきゃならねーんだよ!」
「あ? 悪いかよ! かっこよく愛を表現してていいだろうが、英語ならなおさらロックだし」
「てめぇの恋愛なんか誰も知りたくねーよ! 仙道、今すぐ歌詞だけ変えろ!」
俺は成瀬と取っ組み合いになりながら、お互いにぶつかり合う。
「曲が完成したというのに、あの二人は争いが絶えぬな……」
小野寺は話しながら、呆れている。
「ところで、晴君」
俺たちを見ながら、シゲは俺に話しかけた。
「なんだ?」
「曲名って、決まってるの?」
「当たり前だろ! すでに決まっている」
シゲの問いに、俺はそう答える。
とびっきりかっこよく、そして歌詞に合ったタイトルだ。
そして、俺はみんなにその曲名を伝える。
「BADBOY! GOODLOVE! それが、この曲のタイトルさ」
バンドマンで俺みたいなクソッタレなやつでも、いい恋愛をしてやるぜという意味から付けた。
「まあ……いいと思うよ、よく意味がわからないけど」
シゲはそう苦笑いをしながらも、納得する。
「曲名もくそだせぇぇぇ!」
成瀬は頭をかかえながら、絶叫する。
こいつがなにを言おうが、関係ない。俺たちはこのクールでロックな最高の曲をやるのだ。
こうして、俺たちのオリジナルソング作りは終わる。
そして、この曲をひっさげてライブをやろうと俺は計画している。
この学校という、一つのコンサート会場として。




