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俺たちのロッケンロールデイズ!!  作者: 獅子尾ケイ
修行!生まれ変わるバンド編
26/77

第26話「ボーカル担当は任せた!俺にできるとでも?!」

 かつてないほどの重圧が、俺に降りかかっている。


 なにも書かれていない、真っ白な紙。これに俺は、頭を悩ませていた。


「じゃあ、ボーカルの歌と歌詞は仙道に任せるわ」


「うむ、仙道がギターボーカルだからな。当然、担当すべきだろう」


「……大丈夫? 晴君」


 みんなで曲を弾き終わった後、そんな言葉が俺に向かって放たれる。


 突き放すような言い方をする二人をよそに、シゲは俺にそう声をかけた。


「大丈夫だ。オケばかりに集中しすぎて、重要な歌を忘れていたのは俺だ」


 ギターを含む楽器パートを作っていたおかげで、ボーカルパートを考えていなかった。さすがに歌までもシゲに任せてしまうのも、悪い気がする。


 そんなことを思ってか、バンドのリーダーである俺が作る雰囲気になっていた。


「こうなったら、俺がオケに合う最高の歌と歌詞を考えるぜ!」


 そうみんなに余裕があるように話したが、現在までまったくと言っていいほど進歩はなかった。


 学校から帰宅して、メロディを考えるも浮かばない。歌詞など一文字も書かれてもいないのだ。


「世の中のアーティストは、どうやってメロディを思い浮かんでいるんだよ……」


 俺は机から体を離し、倒れ込む。


 歌を考えると言ってから、だいぶ日にちが経つ。


 このまま歌が出来上がらなければ、曲は完成しないしライブをやるのが遠のく。


「だああああ! どうすりゃあいいんだ」


 頭をかかえて、バタバタと暴れ出す俺。


 今まで歌を作ったこともなければ、作ろうとも考えたことすらなかった。


 それが今になって、ここまで弊害になるとは思わなかっただろう。


「……はあ、とりあえずギターを弾こう」


 体勢を直して立てかけてあるギターを手に取る。


 どんな曲を弾こうかと考えるも、自然にオリジナルソングのフレーズを弾こうとした。


 それだけ印象的な曲で、弾かずにはいられないような気持ちになる。


 ーージャンジャカ! ジャンジャンー!


 俺はピックを豪快に弦へ弾かせ、慣れたように弾く。楽譜など見なくとも、間違えないくらいに。


「はあ……マジで歌をどうしよう」


 ギターのフレーズを弾くたびに、そこに存在していないボーカルのメロディが目立ってしまう。


 せっかくいい曲なのに、それに合うメロディが作れないのだ。


 ーーピピピー!


 ギターを弾く手を止めて頭を悩ませていると、机に置いてあったスマホが鳴る。


「……ったく、誰だよ」


 スマホに持ち、画面を見た俺はすぐに通話ボタンを押した。


「かなでか? どうした、なにかあったのか?」


 電話をかけてきたのがかなでだと知ると、勢いよくそう尋ねる。


「なにもないよ? ただ、有本君から話を聞いて気になったから」


「ああ、シゲから事情は聞いたのか」


「うん。曲作りで悩んでいるらしいからって、仙道君は大丈夫かなあって」


 シゲが心配してかなでに相談したのだろう。気を利かせたってことも考えられるが、かなでから電話が来ただけで俺は嬉しい。


 だがこれは俺たちのバンドの問題であって、かなでを巻き込むわけにはいなかい。


「大丈夫だよ! 今、ちょうど歌を考えていたとこだしな! はははは」


 そう笑って平然を装うが、かなでは見透かすように答える。


「……仙道君は嘘が下手だね。歌のメロディ、思い浮かばなくて悩んでいるんでしょう?」


「……うぐっ」


 やはり見透かされたのか、かなではすぐに俺の嘘を見抜いた。


 中学からの付き合いだが、彼女はいつも俺が嘘や冗談を言うとそれを見抜いてしまう。


「おまえには敵わないな、昔っからそうだ」


「ふふふ、そうだね」


 かなでは電話越しに笑い、そう答えた。


 俺は曲のメロディが作れていないことや、歌詞が浮かばないことを正直に話した。


「うーん、たしかに歌を作るって簡単じゃないよね」


「だろう? ギターと違うし、メロディなんかすぐにはひらめかねーわ」


 俺はかなでに愚痴をこぼすように、自分では無理なことだと話す。


 ーーそういえば、かなでたちのバンドはオリジナルソングを作ったりしないのだろうか?


 電話で話しながら、そう疑問に思った。


 それとなくかなでに尋ねてみると、彼女は答える。


「オリジナルかあー、作ったことはあるよ? あまりたくさんではないけど」


「マジか! ボーカルパートは誰が作った? どんなふうにアイデアが出たんだ?」


 作ったことがあると聞いた俺は、迫るような口調で尋ねてみる。もし、なにかしらヒントが得られるなら是が非でも知りたい。


「作ったのは奈帆ちゃんだよ? 奈帆ちゃんは、バンドの曲を一人でアレンジとかするから」


「奈帆……まさかの上原かよ」


 よりによってあの女が作っていたことに驚くし、意外だなと思ってしまう。


 しかし、あいつに相談するのは正直に言って嫌であった。


「あいつが俺にコツとか……ぜってぇ教えねーよな」


「ははは……喧嘩になりそうだよね、仙道君と奈帆ちゃんは」


 俺と上原はなにかと衝突してしまう仲であることはかなでも知っている。


 だからこそ、俺が相談したところで上原が素直に教えてくれるはずもない。


「でも奈帆ちゃんが曲を作る時に言ってたけど、感情を込めて取り組むんだって」


「感情? なんだ、そりゃ」


「んー、あたしはこんな言葉やこんな歌を伝えたい! って、 言ってたかな」


 ーー言葉や歌を伝えたいか……。


 俺はボーカルパートを作る時に、そんなことを思っていただろうか。


 せっかくシゲが作った曲を台無しにしないように考えてばかりいたかもしれない。

 誰かに聴かせようというよりも、シゲのためにしようとしていた。


「仙道君自身の想う感情を、曲に込めればいいんだよ。俺たちはこんな曲を伝えるぞーって」


 かなでの言葉に、俺はその通りだなと思った。


 バンドのためだけじゃなく、聴く人になにを伝えたいのかが大事だ。


「ありがとうな、かなで! 俺、やってみるぜ」


「うん! きっと、仙道君ならできるはずだよ」


 そう話して、かなでとの通話を終える。


 俺はスマホをベッドに投げて机に向かう。


「俺の感情を……歌にしてやるぜ」


 なにか吹っ切れた俺は、ペンを走らせて言葉を文字に書く。


 シゲたちに応えようと作るのではなく、純粋にこの曲を聴いての想いや、俺自身の感情。


 ただ、それだけに集中する。


 すると伝えたい言葉が、滝のように流れてくる。


 曲をギターで弾き、言葉を当てはめるていくと次第にメロディが頭から降りてきた。


 結局、夜中を過ぎても作業は続き、曲にボーカルパートが出来たのは朝方だった。


「よし……これを、シゲたちに聴かせよう」


 歌詞が書かれた紙に、スマホに録音したメロディ。


 この二つを持ち、俺は死んだような目で学校へ向かう。


 俺が伝えたいことを込めた歌。まずは、シゲたちにそれを聴かせるのだから。

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