第24話「作り出せ!俺たちのオリジナルソング」
「本当に……おまえが作ったコード進行なのか?」
「え? うん、いろんなパターンのコード進行を覚えたくて」
シゲがギターを弾き終わった後に俺が尋ねると、シゲはキョトンとしながらそう答える。
とくに難しいコードを使ったりしていないが、リフが妙に印象に残る。
「なら、それにこう合わせたらどうだ?」
俺はすかさずギターを持ち、シゲが弾いたパターンとは違う音を弾いてみせた。
ギターの音一つではどうにもが細く、貧弱に聴こえる。
そこに俺が弾いた音を加えることによって音の厚みとイメージを変える。
「ほう、聴いたことがない感じだな」
「スローテンポだけど速いテンポにすれば、疾走感があるんじゃね?」
同じくフレーズを聞いていた二人は、それぞれそう意見を述べた。
「例えばだが……こんなスピードのリズムではどうだ?」
小野寺は口にした後に、ハイハットと共にドラムをリズム良く叩く。
ーードンッ! カッ! ドドッ、カッ!
やや速く。それでもどこかパワフルなリズムパターン。
「いや! もうちょっとオカズを入れたらどうよ? ダダダーン! みたいなよ」
成瀬はよくわからない言い方で、小野寺に話す。
いつの間にか、シゲが作ったフレーズにみんなで意見を言い合い始めた。
「よし! このフレーズから曲をみんなで作ろうぜ!」
みんなの様子を見ていた俺は、そう叫ぶ。
「ええ……けど、この後に続くフレーズとか考えられないよ」
「いーや、おまえならできる! シゲはこういう才能があるに違いない!」
不安そうなシゲに、俺は肩を掴んでそう力強く言い放つ。
きっとこのフレーズから、俺たちの理想とする曲ができると思ったからだ。
俺の言葉を聞いたシゲは、ギターを持ち口にする。
「わかったよ、僕……やってみるよ」
そう言ってコード表が書かれた紙を取り出し、ギターを弾き始めるシゲ。
「よし! 俺たちは、このフレーズをいい感じな形にするぞ」
俺もギターを持つと、成瀬たちと音を考え始めた。
この日から、俺たちのオリジナルソング作りがスタートする。
まずはシゲが作ったフレーズに、ベースとドラムを加える。
「これ、何回かループさせるとイントロにできんじゃね? イントロはベースのパターン変えるとか」
「ふむ……最初に、ドラムから始めて後からギターが入るようにしたらどうだ?」
「俺のギターは途中から重ねるってのはどうよ?」
学校の休み時間、集まった俺たちはそれぞれの意見を言いながら話し合っている。
それこそ、授業などより作曲のほうが集中しているほどだ。
シゲは一人で他のフレーズを考えていた。その集中力は高く、俺が声をかけても気づかない。
けれどシゲが作り出していくものは徐々に形になっていき、きちんと曲になっていく。
「有本の、意外な才能が垣間見得たな」
「ああ……将来は作曲家になれんじゃねーか?」
成瀬や小野寺は、作業を横で見ながら話している。
「けど、おまえらも自分でパートを作れるじゃねーか」
ベースやドラムまではさすがに本人に任せるしかない。
フレーズに合うパートを作るのはなかなか難しく、スラスラとできないだろう。
しかし、二人はなんだかんだでやってのけてしまう。
イントロ。Aメロ。これらは、気がつけは形になりつつあった。
「問題は……サビだな。一番の見せ所だし、なにかしらインパクトは残したい」
バンドの曲で一番盛り上がり、印象に残りやすいのはサビだ。
サビが悪ければ、どんなに他がよく出来ても台無しになってしまう。
シゲもそこに苦戦しているらしく、なかなかいいサビが決まらない。
「ごめんね晴君、なかなか決まらなくて……」
「いや、おまえはすげーよ! こんな短期間で曲を作れちまうんだから!」
休み時間も短くなり、申し訳なさそうに話すシゲに俺はそう答えた。
「うむ! 別に締め切りがあるわけでもあるまいし、焦らずゆっくり作ればよい」
「小野寺の言う通りさ。時間をかけて、最高の曲にすればいいんだぜ」
そう励ましながら、俺と小野寺はシゲに話す。
「ライブのイベントとかって、この時期はないん?」
唐突に成瀬は、俺に尋ねる。
「あー、あるにはあるらしいけど……俺たちは出れねーな」
以前に高村たちが開催した、ライブイベント。そのイベントの第二弾があると、ネットで知った。
かなでたち率いる、園芸部バンドは出演が決まっており。高村が組むバンドもゲストで出るらしい。
「俺たちとはだいぶ差が開いてるな」
「うむ……あきらかに出遅れている」
「今はオリジナルソングを完成させるのが、俺たちの目標だ。ライブはまた考えればいい!」
「へえ、おまえにしてはまともな判断をするじゃねーか」
本音を言えば、ライブはすぐにでもやりたい。やはり、レベルアップを図るにはライブをやるのが一番。
だがその気持ちをグッと堪えて、俺は我慢をする。ライブよりも、オリジナルソングを完成させるほうが大切だろう。
なにより、俺はこの曲がすげえものになると確信しているのだ。
「作ろうぜ、俺たちの曲を!」
必ず作り上げ、ライブで披露をする。
それが今、俺たちがなすべきことなんだ。
ーーキンコーン! カンコーン。
休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。
「ちっ……ここまでか、続きは放課後にするか」
一旦の作業を終え、俺たちは教室へと戻る。
教室に戻り、シゲはすぐに机で曲作りを紙に書いてやり出す。
「シゲ、あまり深く考えるなよ? おまえは、きちんと授業を受けるんだ」
俺のように音楽しか考えていないのと違い、シゲは普通の生徒だ。
勉強だってやらなきゃいけないし、なるべくシゲの学業に支障をきたすわけにはいかない。
そう話すと、シゲは大丈夫と答えてまたペンを走らせる。
俺は少しシゲに負担をかけていないか、不安になった。
ーーそして、数日が過ぎた頃。
「……ついに、完成したんだな」
シゲが書き上げた、楽譜を見ながら俺はそう口にする。
何度も書き直した跡が、その努力を表されていた。
コード進行が一つにまとまっており、曲として完成されている。
「シゲ……ありがとうな」
きっと勉強そっちのけで、曲を作っていたに違いない。俺は、そんなシゲに感謝の言葉を口にした。
「おい仙道、さっそく弾いてみろよ」
「うむ、曲全体を聴けば残りのパートもイメージできるはずだ」
成瀬たちは、俺にギターを弾いてみせろと話す。
俺はシゲから渡された楽譜を置き、すぐにコードを覚える。目で見ただけで、その曲の流れを把握していく。
「晴君、どう? 変じゃない?」
「変なわけあるか……最高にイカした曲になりそうだぜ!」
目を輝かせながら、俺はさっそくギターを持ち弾く体勢になった。
「シゲ……一緒に弾こうぜ」
俺はそうシゲを誘う。
一生懸命に作ったギターのフレーズを本人が弾かないで、俺が弾くのはなしって話だ。
どうせなら、俺はシゲと一緒に弾きたい。
シゲは俺の横でギターを取り出して、そっと構える。
「じゃあ……いくぞ、シゲ」
そう合図して、俺とシゲは同時に右手を振り弦をはじく。
二つのギターの音色は重なり、一つの音へとなる。
それが俺たちが弾く、最初のオリジナルソングの音色だった。




