表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺たちのロッケンロールデイズ!!  作者: 獅子尾ケイ
修行!生まれ変わるバンド編
22/77

第22話「バンドメンバーにも絆は必要!」

 数時間ほどそれぞれが練習していると、やたらと工場の音が響いてくる。


 ーーガガガガ! ギギギー!


「すげえ音だな……建物の中にまで聞こえるじゃねえか」


「うむ、大規模な工事だからな」


 変わらず木魚を叩きながら、小野寺は答えた。


 アンプから音を出しているとはいえ、完全にこちらの音が負けるほどだった。


「一日、夕方までの作業だからな。もうしばらくすれば気にならなくなるだろう」


「まあ、それまで我慢するしかないよね」


「ったく! 俺様のベースが聴こえないのは、ナンセンスだな」


 みんなは愚痴をこぼしつつも、手を止めずに弾いている。


 ーー午後の四時半。


 俺はスマホで時間を確認すると、その時間になっているのを確認した。


「少し休憩にするか? ここに来てから、ずっと弾きっぱなしだしよ」


 みんなにそう伝えた後、それぞれが楽器を床に置いてだらけ始める。


「こんなに長く弾いたのは、久しぶりな気がするなあ」


 シゲは自分の指を見ながら、ぽつりとつぶやく。手は真っ赤になっていて、弦を押さえていた痕があった。


「個人練習とは、だいたいどれくらいすればいいのだ?」


「んー、僕は一日に二時間は弾いていたかな」


 小野寺は疑問に思っていたのか、シゲに尋ねる。


「はっ! 二時間もやるのか? 俺様に練習時間は必要ないね、天才だから」


「すっ、すごいね……けど、ベースを始めた頃は無我夢中だったんでしょう?」


「ま……まあな」


 人間誰しも、最初からすごいテクニックを持っているわけではない。


 音楽をやる奴は、その楽器に夢中になれるから上手くなっていくのだ。


 成瀬だってベースが好きだから、本人は言わないけどきっとたくさん弾いてきたに違いない。


 シゲはそれをわかっているから、そう口にしたのだろう。


「おまえらはまだまだだな! 俺は毎日休まずに、五時間は弾いているぜ」


 そんな様子を見ながら、俺は自慢げに話す。


「……ほう、仙道はそんなに弾いてきたのか」


「そんなに練習してんのに、そこまで上手くなってねーよな!」


「うっ、うるせえ! 弾くことに意味があるんだ、ギターに魅入られてんだよ」


 感心する小野寺を横に、成瀬は鋭い指摘をしてくる。


 まさにその通りで、たくさん弾いているからってさほど上手くなっていないのが現実。


「でも晴君は、きっとすごい人になれるよ。毎日、一生懸命に弾いているもの」


「……シゲ」


 今まで一番近くで俺を見ていたシゲは、そう誇らしげにしている。


 ーーおまえだって、俺に合わせようとギターを頑張ってたのは知ってるんだぜ。


 俺が一緒に始めようと誘ったギターを、嫌な顔せずにやってくれたシゲ。


 考えれば考えるほど、こいつには感謝しかない。


「おまえら……もしかしてデキてんのか?」


 そんな俺らを、引きつった顔の成瀬が気持ち悪そうにつぶやく。


「ふざけてんじゃねえ! 俺はかなで一筋なんだよ!」


「ははは……」


「ふむ、有本は否定しないのだな」


「こらシゲ! おまえも好きな奴くらい高らかに宣言しろ、誤解されるだろうが」


 このままではホモォに思われてしまうのか、慌ててシゲに俺は叫んだ。


 それをゲラゲラと笑う成瀬たち。


 一緒に音楽をやる以外に、ここまでみんなで話が盛り上がったのは初めてだろう。


 しばらくの間、俺たちは楽器を弾かずにダラダラと喋っていた。


 気がつけばもう夕方が過ぎ、窓からは外が薄暗くなっていたのがわかる。


「やべえ! 練習もしないで話してたら、 こんな時間になっちまったじゃねーか」


 ろくに個人練習もしていなければ、みんなと合わせてもいない。


 俺は再びギターを手に取り、練習を再開しようとする。


 ーーギュルルルー。


 ふいに、大きく腹の音がなった。


「そういえばここに来てから飲み食いしてなかったな」


「そうだね、お腹も空いてくる時間だね」


「今日はここまでにして、そろそろ帰るか?」


 辺りも暗いし、時間的にも帰る頃だろう。


 正直、まだ練習していたい気持ちであるがさすがに長居はできない。


「仕方ねぇな……今日はお開きにして、 また次回に集まるか」


 またバンド練習はできるし、とりあえず今回の練習は終わりにしようと俺はみんなに伝える。


「ふむ、しばし待て」


 片付け始めようとした時、小野寺は俺たちを呼び止める。


 そして、そのまま扉を開けて出て行った。


「……なんだ?」


 俺たちは理由がわからなく、その場でポカンとする。


 しばらく待ち続けていると、ガラガラと再び扉が開く。見ると、小野寺がお盆を両手に持ち入ってきた。


「わあ、いい匂いがする」


 シゲは鼻をクンクンと掻く。


 たしかに、なにか美味そうな匂いが部屋に漂っている。


「ちょうど夕飯の支度をしていたからな、 母さんに追加で作ってもらったのだ」


 そう話した小野寺は、床にお盆を置いた。


「こりゃあ、まあ見事なスパゲティだな」


 大皿には山のようなスパゲティが盛られていた。それ以外にも、サラダとスープ。


 作られたばかりなのか、どれも煙がもくもくと出ている。


「いただきまーす!」


 成瀬はすぐにフォークを持って皿に分けると、ガツガツと食べ始める。


「おい! 一人で食い始めるな!」


 俺はそう怒鳴りつけるが、内心は腹ペコだ。


「気にするな仙道、 せっかくなのだから夕飯は食べていくといい」


「うっ……ああ、悪いな小野寺」


「それじゃあ、頂こうか」


 シゲにそう言われた俺は、ガシッと手を合わせる。


「いただきます!」


 勢いよく叫び、俺もスパゲティを盛ってから食べる。


「んんん! 美味いな、俺の母ちゃんが作ったものより美味え!」


 喫茶店で食べるような、どこか懐かしいスパゲティ。


 その美味さにびっくりしながら、何度も口にほうばった。


「お! ウインナーが余ってんじゃん、もらいー」


「ふざけんじゃねえ成瀬! そのウインナーは俺のだ!」


 たかだかウインナー如きに、俺と成瀬は取り合いになる。


「ふむ、お茶でも淹れようか」


「僕も手伝うよ? わあ、ほうじ茶だ」


「ふっ、やはり食事の後はほうじ茶に限るからな」


 争う俺たちなど気にすることなく、シゲと小野寺はお茶を入れようと動く。


 慌ただしい夕飯の時間も終わり、あっという間に夜になった。


「そろそろ、 本当に帰る時間になったね」


「俺は腹いっぱいで動けねー」


 食べ終わった後、成瀬はずっと倒れたままになり動こうとしない。


 満腹な状態な俺たちも、また同じようなものだった。


 さすがに遅い時間までいるのはまずいと思ったのか、シゲはなんとか俺たちに帰るように促す。


「ならよ! 体を動かして、カロリーを消費しようぜ!」


「あ? どうやってだよ」


 俺は起き上がり、片付けたギターケースからギターを取り出す。


「これに決まってんだろ!」


 帰る時間もすぐなのに、俺はギターを背負ってみんなの前に立った。


「えええー、さすがに夜に音を出すのはまずいよ」


「なんで飯を食った後に、また弾かなきゃならねーんだよ」


 飯を食った後だからこそ、弾くべきである。エネルギーチャージをした今こそ、いい演奏ができるものだと俺は思う。


「ふっ、まあいいだろう。木魚でいいなら合わせよう」


 小野寺は木魚を手に持ち、そうニヤリと笑いながら話す。


「あああー! だりい、だがまあ……一回は付き合ってやるよ」


「小野寺君、お家の人は大丈夫なの?」


「問題ない、気にせず思いっきり弾くといい」


 仕方がない。渋々、付き合ってやると成瀬はベースを持つ。


 小野寺に言われたシゲも申し訳なさそうにギターを肩にかけた。


「よーし! 最後にみんなで一曲、いくぜー!」


 みんなが楽器を持ったのを確認した俺は、思いっきり弦を弾いて鳴らす。それに合わせるように、みんなも弾き出した。


 神社でバンド練習を許可してくれたり、美味しい夕飯を作ってくれた小野寺一家。


 俺はその感謝の気持ちを込めて、がむしゃらに弾いて歌う。


 こうして、俺たちの本格的なバンド練習は終わったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ