第20話「神社でバンド練習! なお、工事中」
俺たちのバンドの練習場所に決まった、小野寺が住む神社。
さっそくそこへ向かうため、俺は自宅で荷物をまとめている。
ギター本体にエフェクター。
持ち運びやすいミニアンプと、準備は万全。
「よっしゃ! 行くとするか」
ギターを背負い、大きなカバンを手に持った俺は自宅を出る。
土曜日いうだけあって、朝から晩までバンドができる。
こんなにも素晴らしい曜日があるだろうか。
そう考えながら、上機嫌に道を歩く。
「あ、晴君! こっちこっち」
「おうシゲ! おまえも、きちんと荷物を持ってきたか?」
「うっ、うん。晴君に言われた物は、一応全部持ってきたよ」
同じようにギターと荷物を持ったシゲはそう答える。重い荷物なのか、しんどそうな顔をしている。
「大丈夫か? おまえはあんまり体力ないんだから、俺が持ってやるよ」
「大丈夫だよ! ……って晴君てば!」
俺はシゲの言葉を聞かずに、荷物を持つ。両手にカバンを持つのはきついが、大したことではない。
「さっ……さあ、行くぞシゲ」
「あ、ありがとう。晴君」
プルプルと震えながらも、待ち合わせ場所である神社へと歩き出した。
神社へ続く長い階段まて着くと、そこには成瀬が突っ立っている。
ビシッと決まった髪型に、黒いサングラスをかけた姿。いかにも、キザっぽい風貌だ。
「遅えぞー! なにやってんだよ」
「ごめんね成瀬君、晴君が荷物を持ってくれたんだけど……時間かかったみたいで」
「はあはあ、っておまえ……荷物はそれだけか?」
成瀬の足元を見ると、俺たちのような荷物はなくベースを背負っているのみ。
「ふっ、俺のベースに小細工はいらねえんだよ」
「くそが! 楽しやがって」
成瀬にイラつきながらも集まっていると、辺りを見渡す。
小野寺が言っていたように参拝客はなく、代わりに作業着を来た人たちがあちらこちらに見える。
「なんか……俺らがいていいのか? 本当に」
「……だね。僕たち、邪魔にならないのかな」
工事が始まっているとはいえ、作業をしている中で俺たちがバンド活動をしていいものか。
そんなシゲたちに向かって、俺は口を開く。
「今、んなことを考えても仕方ねえ! これも最強最高のバンドになるためだ……迷惑上等だぜ!」
そう話した俺は一足先に、階段を登り始めた。
たとえ工事中だろうと関係ない。
どんな環境の中でも、バンドのレベルアップするためならば。
長い階段を登り鳥居を潜ると、目の前には広い神社の空間が姿を現す。
改めて境内見ると、その広さに驚く。
「待ってよー晴君! ……はあはあ」
後から来たシゲたちも、見渡すと驚いていた。
「ふむ、全員来たようだな」
そこへ甚平を着た小野寺が、いきなり現れる。
「おまえ、普段はそんな格好なのか?」
「当たり前だろう、和装は日本の伝統だからな」
「……神社に住むやつって、みんなそうなのか?」
制服姿しか見たことがなかった小野寺に、俺たちはポカンとする。
ーーガガガガ! ギュイィン!
その横で、重機が動く音が境内に鳴り響く。
奥のほうにある拝殿には足場が組まれており、作業真っ最中だ。
「いや、本当にこんな中で練習できるのか? やる場所はどこだよ」
「問題ない、今から案内する」
そう話した小野寺は、スタスタと歩き出す。こんな工事中の中のどこに練習できる場所があるのか。
そんなことを考え、俺たちは小野寺について行く。
「親とかは大丈夫なのか?」
歩きながら、俺は小野寺に尋ねる。
いくら広い神社でも、俺たちのような部活でもない連中に場所を貸してくれるとは思えない。
「親父たちにはもう話している、遠慮はするな」
「せめて、菓子折りでも持ってくればよかったかな」
「ふ……有本よ、気にする必要はない」
小野寺は足を止め、ある建物を指指す。
目の前には、やたら古い蔵のような建物があった。
「ここが練習に使える場所だ。ちょっと待て、鍵を開ける」
「いや……なんだ? このクッソボロい蔵は」
引いたような顔で、成瀬はそう口にする。失礼な言い方だが、たしかにボロい。
ガラガラと蔵の扉を開け、小野寺は中に入っていった。
「ホコリっぽそうだな、俺の髪が汚くなるだろうが」
「たかだが練習すんのに、そんな髪型をキメてくんなよ」
「なんの蔵なんだろう……」
扉の前でぐちぐちと話す俺たち。
「ここは神社の宝物庫だよ」
すると、後ろのほうからそう声が聞こえる。
「うわああ! びっくりした」
いきなりの声に驚いた俺は、後ろを振り向く。そこには白い上衣に、紫色の袴を着た背が高い男が立っていた。
どう見ても、神主が着ている服装だ。
「ん? ああ、親父か」
「優作、おまえが言っていたバンドの子たちか?」
小野寺は声に気がつくと、中から出てくるや会話をし始める。
どうやら、小野寺の父親らしく二人の会話を俺たちは見ていた。
「はっ、初めまして。僕たちは、小野寺く……じゃなくて優作君と同じ学校の」
「ははは! そんなかしこまらなくて構わないよ。優作から君たちのことは聞いている」
シゲが深々と頭を下げながら挨拶をするに軽快な笑い声を上げた。
「小野寺の父親さん! 今日はあざっす、しばらく厄介になります!」
俺はそう大きな声で話す。
「……しゃっす」
「無理なお願いを聞いてくださって、ありがとうございます」
あまり慣れてないような成瀬は小さく頭を下げ、シゲは改めて深々と頭を下げ直す。
「聞いていた割には、いい子たちじゃないか! ここは好きに使ってくれたまえ!」
「あざーす!」
そう話した後、小野寺の親父さんは去っていった。
「……めちゃくちゃいい人そうだったな」
「うん、やっぱり菓子折りは用意すべきだったね」
「つーか、ハゲ頭は同じなのな」
思っていたよりも、良さそうな人柄に俺たちは話す。
「とにかく中に入ろう、さあ」
どこか複雑そうな顔をしている小野寺は俺たちに中に入るように誘う。
そして、いよいよ練習の舞台となる宝物庫に入った。
中には大量の金ピカな仏像やら、祭りに使うような品々が置いてあった。
「マジに宝の山じゃねーか! これ、もらっていい?」
「アホなこと言ってんじゃねーよ成瀬!」
価値がありそうな物を見ながら話す成瀬に、俺は呆れる。
「けど、スペース的には練習できそうだね」
シゲが言うように、アンプや機材を置いて弾けるには充分な広さだ。
「よーし! なら、さっそく練習しようぜ」
俺はギターケースからギターを取り出して、弾く格好をする。
みんなもそれぞれ楽器を背負う。
これで俺たちは、いつでも演奏ができる
だろう。
俺たちがバシッとキメる中、どうにも違和感がある。
「……つか、ドラムセットなくないか?」
ーー違和感の正体。
バンドをやるなら、本来そこにあるはずのドラマセットがない。
小野寺は立っており、ドラムスティックではない物を持っていた。
「ドラムセットは……まだ届いていない、だから代わりにこれを使う」
そう答えるやつの手には、丸々とした木魚とバチ。
「いや……それ、普通は寺にあるよな? ここ神社だよな」
ドラムがないことよりも、神社に木魚があるほうが驚く。
ともあれ、バンドの練習はできる。
今はそれだけでもいいと思った俺は、さっそくギターを勢いよく弾いた。




