第19話「マジでバンドやるなら、練習場所を確保せよ!」
あの悲惨な初ライブからしばらく過ぎ、俺たちは本格的なレベルアップを図ろうとしていた。
「それで、やるからには練習場所を確保しなきゃだろ」
「うむ、そうだな。だが、学校で使える教室がないぞ?」
「部活動としてはやっていないもんね……スタジオを借りるにもお金がかかるし」
放課後に集まった俺たちは机を囲み、相談し合っている。
たしかにシゲが言うように、部活としてバンド活動はしていない。
かなでたちみたいな、部活動の一環で教室を使えないのだ。
「ねえ晴君、聞いてる?」
一人なにも言わない俺に、シゲはそう話しかけてきた。
「ああ、聞いてるよ。練習するためにはどうにか場所を考えなきゃだな」
とは言ったものの、これといってできるような場所に心当たりはない。
それはみんなも同じで、なかなか意見がまとまらないでいる。
「高村さんに……相談してみる?」
「いや、それは難しいだろう……なにせ」
そう小野寺が言うと、みんなの視線が俺に向かう。
「あれだけいろいろ言われて腹が立ったからって、あんな嫌がらせしちゃダメだよ」
「そうかあ? 俺は、笑ったな。よくやった、仙道」
高村からバンドのダメ出しをされた数日後、本人から呼び出しをくらった。
「……仙道」
「……なんすか?」
部屋に呼ばれた俺の目の前には、高村。そして、大量のダンボール箱が置かれていた。
「どういうわけか、先日に大量のダンボールが届いたんだ」
「はあ、そうっすか」
「頼んだ覚えがない音楽雑誌やら、 別の八百屋からのフルーツばかりだ」
「……へえ」
「不思議だな、本人が頼んでいないのにこんなに荷物が来るのは」
「はっはっは! きっと高村さんのファンからの贈り物でしょう」
無論、そんなことはない。
なにせ頭に来た俺が、高村の名前と住所を書いて送ったのだから。
「……そうか、同じ筆跡で汚い字だったな。しかも着払いで送るファンか」
ーーギロリ。
そう冷静に話す高村だが、睨みつけるように俺を見ていた。
「これだけ大量に来ても仕方ない……仙道、半分くらい持ち帰れ」
そして高村はダンボール箱を何個か俺にやり、それ以上はなにも言わなかった。
「特に音楽雑誌には目を通しておけ、おまえらのバンドになにかしらアドバイスが書かれているだろう」
「それで……学校に持ってきたのが、この何冊もの雑誌か」
囲んだ机には、俺が持ってきた雑誌が並べられている。
「高村さん、よく訴えなかったね」
雑誌を見ながら、シゲは苦笑いを浮かべた。
「だが、俺にとってはドラムの教科書みたいなものだ。何冊か頂こう」
「おっ、この雑誌の特集は俺が好きなベーシストじゃん」
成瀬たちが気に入った雑誌を見つけると、何冊か取っていく。
「雑誌なんざどうでもいいよ、それよりも練習場所をどうするかだろ」
話が逸れてしまったが、俺は改めてみんなに意見を求める。
「やっぱり、学校にお願いして教室を貸してもらうのが一番じゃない?」
「学校なら移動もしなくて楽だろ? 仙道、学園長に話してこいよ」
成瀬がそう答えるが、俺は渋る。
学園長に話してみることはできるが、問題はそこではない。
この学園はいわゆるミッション系ってやつで、俺たちのロックをやって許されるのだろうか。
「少なくとも……鈴谷先生あたりは反対してきそうだな」
「……ああ」
この手の音楽を嫌う鈴谷先生。
学園長よりも、あの先生のほうが厄介だ。学園長と話すにも、鈴谷先生を通さなければならずそこが難問だ。
「どうすりゃあいいんだよー!」
学校に提案するにも難しく、再び俺は頭をかかえる。
ーー高村も、学校もダメ。
このままではバンドのレベルアップなど、できそうもない。
ーートゥルルル!
落胆している中、誰かのスマホから着信が鳴る。
「すまない、俺だ」
小野寺がそう話し、ポケットからスマホを取り出して電話に出る。
「もしもし?」
席を立った小野寺は電話の相手と話し始めた。
「……ったく、今は電話なんかしてる暇はないだろ」
「まあまあ、晴君」
電話中は静かにしてやろうと思うけど、ぐちぐち言う俺にシゲはなだめる。
「なに? そうか……となると、しばらくは神社は誰も来ないのか」
小野寺の様子を見ながら、シゲに尋ねる。
「あいつの家って、神社か寺なのか? 毎回拝んだような手をするし、話し方が僧侶みたいだぞ」
「どうなんだろ……僕、そこまで小野寺君のこと知らないから」
話していると、横で雑誌を読んでいた成瀬が口を開く。
「なんだ、知らねーのか? あいつの実家ってこの町で一番でかい神社なんだよ」
「え……そうなのか?」
成瀬の言葉に俺たちは、驚く。
俺たちが住む町にある神社は一つしかない。やたらと広く、いつも人が多い有名な神社だ。
まさか、小野寺がその神社が実家だったとは知らなかった。
「いや、すまない。急に神社を改修工事するらしくてな、親父から連絡だったのだ」
「そうなんだね、それは大変」
「まあ、参拝客は来ないらしいからな。 いくつか建物は残すらしい」
そう話している横で、俺はひらめく。
「そうだ! ならよ、空いた建物があんならそこで練習すればいいじゃん」
誰も来ない。広い建物がある。
まさにバンドの練習をするには、もっとも都合がいい場所だ。
「いやいや晴君、さすがに工事をするんだから入れるわけないよ……迷惑でしょう」
「そ、そうだよな……神社でバンドってなんかロックじゃねーよな」
「いや、そこじゃねーだろ」
いいアイデアかなと思っていたが、シゲたちに否定されてしまう。
「ふむ……ちょっと待て、それは出来るかもしれない」
諦めかけた時、小野寺はそうつぶやく。
「前に他校の部活の合宿で使っていた場所があったな、 そこは確か工事をしないはずだ」
「……マジで⁈」
そう話した後、小野寺は電話をかけ直し親に相談をし始めた。二言返事で了承を得たらしく練習に使っていい運びになった。
こうして、俺たちのバンドをレベルアップさせる場所を確保できた。
本格的なバンド活動が、始まろうとしている。




