第18話「未熟さを知り、俺たちは……」
ーー下手くそで素人バンド。
高村からの言葉に、俺たちは驚いた。
練習もきちんとやり、それなりに努力はしたつもりだ。
少なくとも、一から始めたバンドとしては頑張ったと俺は思っていた。
しかし、高村はそれを否定するようにそう口にする。
「ちょっと待てよ、下手くそなのはこいつらだけだろう? 俺のベースは完璧だったぜ」
初めに口を開いたのは、成瀬だった。
成瀬はそう反論するが、高村はそんなやつに言い返す。
「ベースの役割すら果たせず、 バンドにも合わせられない奴のどこが完璧なんだ?」
「……ああ?」
高村の言葉にカチンときたのか、威圧的な声を出している。
「ドラムもうまく叩けていないし、 リズムもめちゃくちゃ」
「う……むう」
「ギターは自信のなさが音に表れている。 基礎は出来ているのに、 それが発揮されていない」
「はっ、はい……すみません」
高村は次々とダメ出しを言い始めている。
シゲたちは言い返すこともなく、静かに聞いていた。
「それよりも……」
一通り話し終わったかと思っていたら、高村は俺をジロリと睨みつける。
「メンバーを集められたのにもかかわらず、まとめることもできない」
「うっ……」
「なにより、 あれだけすごいライブをやると言っておきながらやったのは乱闘騒ぎ……期待はずれだな」
ぐうの音も出ないとは、このことだろう。
言われても否定することができず、言われることすべてがその通りだった。
「今のおまえらにはライブをやる以前に、 バンドをやる資格はない」
「くっ、くそう!」
厳しく俺たちを否定する言葉に、悔しさが口に出る。
「今日のイベントで一番最高だったのは、 おまえらの学校の園芸部バンドだ。審査員、全員一致でな」
審査員、そして観客が一番認めたのはかなでたちのバンドだったと高村は話す。
彼女たちには、次回も別のライブイベントに出演するのも決まったらしい。
「彼女たちには、俺たちのバンドと一緒にライブイベントをやるつもりだ。それだけの実力があるのが、今日でわかったからな」
「……っ」
「おまえらでは、 彼女らに到底及ばないだろう。 今の自分たちのレベルを自覚しろ」
高村はそう話し終わると、楽屋を後にする。
ドアのバタンと強い閉じる音の後、楽屋には静けさだけが残った。
誰一人、話そうとしない。
高村から言われたことが、ショックなのかみんなは黙り続けている。
「……くそが!」
成瀬はイラついたように、椅子を思いっきり蹴る。
「椅子に八つ当たりをしても仕方ないだろう成瀬、 怒りを鎮めろ」
「そっ、そうだよ……」
飛んで倒れた椅子を元に戻す小野寺。シゲも、イラついている成瀬を懸命になだめた。
「おまえらはムカつかねえのかよ、あそこまでボロクソに言われてよ」
「たしかに腹は立つだろう、だが高村の言うことは正しい」
「そうだね……僕らの欠点というか、改善すべきところを教えてもらった気にはなるよ」
「この俺が下手くそだと? いいや、なにかの間違いだね!」
みんなの言う気持ちは、痛いほどわかる。
良い意味でも悪い意味でも、これが今の俺たちに対するバンドの評価だ。
高村だけではなく、観客もきっとそう思ったに違いない。
ーーバンドとして未熟。
それがわかるようなバンドであり、ライブだったのだろう。
「なら……このままじゃいけねえよな」
俺はみんなに向かって、そう話す。
あれだけボロクソに言われ、バンドとしての評価は最悪。
言われ放題でいいわけがない。
「俺たちのバンドは、このままじゃ終わらねー。なめられて終わるような気持ちで、 俺はバンドを組んでないんだ」
「晴君……」
言葉を聞いたシゲは、俺がなにをすべきかを察したように目を向ける。
シゲだけではない。小野寺も同じで、俺の言葉を理解していた。
「ならばやるべきことは一つであろう?」
「そうだね、僕らはバンドを組んでいるんだもの」
そして、一人黙っている成瀬にみんなは目線をやる。
「いいぜ、やろうじゃないか……俺のベースを否定するなんざ許さねえからな」
成瀬がそう言ったことを聞いた俺はニヤリと笑い、みんなに向かって口を開いた。
「やるぞ、みんな……俺たちは本当の最強最高バンドになるんだ」
本当の意味で、俺たちは一つになったような気がした。
俺たちのバンドは、まだこれからだ。
必ず、最強最高のバンドになってみせる。
俺はそう強く決意して、バンド活動をやっていくと決めた。
「とりあえず、俺はドラムをもう一度学び直そうと思う」
「僕もギターを自信持って弾けるように、頑張るよ」
それぞれがなにをやるべきか、わかっている。変わるべきところは、みんなも同じ。
「俺のギターとボーカル、そしてバンドリーダーとしてやることはなんでもやるぜ!」
ーーバンドの成長。
まずはそこから始めるべく、俺はそう強い口調でさけぶ。
楽屋から出て、ライブハウスを後にする俺たち。
帰り際に、俺はライブハウスへ振り向いた。
「必ずライブハウスでまたやる時……俺たちは変わってるぜ」
次にライブをやる時は、今日みたいな酷い演奏はしない。
観客を沸かせるような、すげえバンドになって帰ってくる。
そう誓うように、俺はライブハウスを見続けた。
絶対になってみせる。誰にも否定されない最強最高のロックバンドに。




