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第15話「ライブが始まるんだぜ! さあ、 いくぞ」

 リハーサルも終わり、ライブ本番を待つばかり。


 楽屋に戻った俺たちは、しばしの沈黙が続いている。


 大丈夫だ、やれる。そうは思っていても、いざ本番が近づくと緊張で張り裂けそうになっていった。


「どどど……どうしよう、本番で間違えたりしないかな?」


「落ち着くのだ有本、己を信じろ」


 ーーガタガタ。


 そうシゲに話す小野寺だが、体をプルプルと震えさせている。そのせいなのか、テーブルが激しく揺れていた。


「おまえら……今からそんな状態で大丈夫か?」


「成瀬君は緊張とかしないの?」


 この中でただ一人、成瀬だけがいつもと変わらない。余裕すらあるのか、手鏡を見ながら髪をいじっていた。


「するわけないさ、俺のかっこよさを観客の女の子に見せなきゃだろう? 緊張をした姿など、見せるわけにはいかないな」


 そうシゲに言い切る成瀬の自信はどこからくるのか。俺は呆れるようにため息をついた。


「そういえば、園芸部の連中もリハをやっている頃か?」


 俺たちのリハーサルが終わった後、残りの出演バンドもリハをやるのだろう。

 かなでたちの園芸部バンドも、当然同じようにリハをするはず。


「おっ、なら見に行くか? 他のバンドに可愛い女の子がいるかもだしよ」


「僕らって、他のバンドのリハとか見れるのかな?」


「実力を知るにはいい機会だな、ドラムも気になる」


 成瀬が見に行こうと話し、シゲたちも会話に入ってくる。たしかに、小野寺が言うように他のバンドがどんなかは気になる。

 

「いや……行く必要はない!」


 俺はそう思いつつも、みんなに強い口調で話した。


「え、どうして? かなでちゃんたちが弾いているところは見たくないの?」


「すげえ見てえよ! かなでが弾く姿ほど可愛いものはない……だが、それは今じゃねえ」


 仮にも今は、かなでたちとはライバルだ。敵のリハを見るなど、バンドマンとしてのプライドに欠ける。


 そして、他よりも俺たちのバンドに集中すべきなのだ。


「少しでも本番でいい演奏ができるように、今は楽屋で練習だ!」


「ああ? 俺のベースに任せておけば、問題ねえだろ。今さら練習する必要あるか?」


 俺の提案を否定するように、成瀬は答える。


「うるせえ! とにかく、練習だ。ほら、楽器を持て!」


 それでも納得がいってない成瀬を黙らせ、俺はみんなに楽器を無理矢理持たせた。


「本番が始まるまで、ひたすら練習するぞ! 俺たちがイベントで一番になるためだ」


 結局、かなでたちを含む他のバンドがどんなリハをやるかを見ずに時間だけが過ぎでいった。


 ライブでやる曲の練習を繰り返していると、なにやら外が騒がしい。


「スタッフさんたちが忙しいのかな?」


「時間的にもそろそろ観客を入れるだろうしな、そのせいじゃないか?」


 今日のイベントにどれくらいの人数が入るかは、俺にはわからない。


「俺は親しい女の子を招待したぜ? 俺のベースに悲鳴を上げるだろうな」


「けど、ライブハウスって高いんじゃない?」


「チケット代は俺が後で払ってやるんだよ、可愛い女の子にはサービスしないとな」


 ーーこいつ、女のことになると手段を選ばねーな。


 しかし目的はどうあれ、俺たちのバンドを観に来るやつもいることは間違いない。


 どうせならば、見に来たやつら全員をバンドのファンにしたいものだ。


 ーーコンコン!


 ノック音が聞こえ、部屋にスタッフが入ってくる。


「ロッケンローラースターズさん。後、三十分くらいでライブスタートしますんで準備をお願いしまーす」


 それは、ついにライブイベントが始まろうとする合図でもあった。


 そそくさと言って去るスタッフを見届けて、俺は椅子から立ちがった。


「よし! いよいよ本番だ、みんな円陣を組むぞ!」


 そう言って俺は両腕を伸ばし、円陣を組む形になる。


「ああ? なんでそんなダセェことしなきゃなんだよ。俺、無理だわ」


「バンドというものは、 ライブの前に円陣を組むのか? 有本」


「僕は……ちょっと、わからないかな」


 ーーどいつもこいつも、わかってねえな。


 気合いを入れ、ライブを成功させるためには円陣を組むのがバンド。

 よくかっこいいロックバンドがやる儀式みたいなものをこいつらは。


 俺はそう思いながらため息をつき、無理矢理にみんなを円陣を組ませようとする。


「それじゃあ……最強最高のロックを見せてやろうぜ! えい、おー!」


「おっ、おお……」


 大きく叫ぶ俺と裏腹に、小さくみんなは声を出した。


「ていうか、まだ本番まで三十分なのに今これやる必要あんの?」


「晴君は、こういう人だからね」


「ふむ……まるで理解できんな」


 円陣をすぐにやめて離れるみんなは、それぞれそう話す。


 こんな協調性がないバンドで大丈夫なのかと、俺は心配になる。


 だが、俺が選んだメンバーだ。きっと本番になれば応えてくれるはずだろう。


 時間は過ぎ、いよいよステージに向かう俺たち。


 ステージの裏に通された俺たちのライブが始まろうとしていた。


 観客席からガヤガヤと人がいるのを、感覚で理解する。


 ステージからは、イベントを進行する司会者の声が聞こえてきた。


「今日のイベントは、学生バンドのライブだ! 応募から選ばれた期待のバンドをみんなで盛り上げよー!」


 やたらテンションが高く、場を盛り上げようとする声に観客が歓声を上げた。


「それじゃあ、一組目からいくぜ! 応募は終わっているのに、特別に出演できたラッキーバンド……」


 司会者がそう話し、俺たちのバンド名を呼ぶ。


「ロッケンローラースターズ!」


 呼ばれた俺たちはステージへと姿を現す。


 ーーさあ、俺たち最強最高のロックバンド。ロックローラースターズのライブだ!


 きっとすげえライブにすると、俺は胸に誓った。


 待ちに待った、俺の初バンドライブが始まる。

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