第14話「初リハーサル!」
ライブハウスのスタッフから、楽屋へひとまず案内される。
てっきり、出演バンド全員が一つの部屋に集まるかと思ったが違うようだ。
「スタッフもわかってるじゃないか、この俺のために部屋を用意するとは」
成瀬は上機嫌に話しながら、椅子に座ってくつろいでいる。
「成瀬は緊張感がないな……というよりも、あの自信はどこから来るのだ?」
「ただのナルシスト野郎なんか知らん! とりあえず楽器を置こうぜ」
楽屋にあったギタースタンドにギターを置き、俺たちも椅子に座った。
「これからはどう動くの? 僕、ライブとか初めてでわからないけど」
「俺もわかんねー、多分リハをやってライブをやる感じじゃねえか?」
文化祭のライブの時も、似たような感じでやったことを思い出した俺はシゲにそう答える。
ライブハウスでやるイベントは今回が初めてで、正直どんなものかはわからない。
「しかも、僕たちが一番最初なんでしょう? 嫌だなあ……」
「俺たちは無理矢理出させてもらったものだからな、なんとも無慈悲」
シゲと小野寺は、この状況に憂鬱さを感じるような口ぶりで話している。ライブ経験がない二人にとっては、たしかに不安に思うのだろう。
「順番はどうでもいいさ、俺たちのパフォーマンスを全力で見せればいい」
今回の目的はライブに出ることと、俺たちの実力を見せつけることだ。
俺たちのバンドが、ライブハウスで通用するのかがポイント。
ーーまずは、きちんとライブが出来るかだな。
俺がそう考えていると、コンコンとノックをする音が聞こえてきた。
「えーっと、ロッケンローラースターズさん? もう少ししたら、リハーサルなんで準備をお願いしまーす」
中に入ってきたスタッフがそう伝えると、ささっと出て行った。
「もうリハーサル? 早いな……」
まだ楽屋に来たばかりなのに、早い時間にリハーサルが始まろうとしていた。
「よーし、ささっとリハやろうぜ! ほらシゲたちも気合い入れろ」
「晴君はなんでそんなに前向きなんだろう……」
「うむ、そうだな」
俺たちはリハをやるために、ステージへと向かう。
広いフロアにやってきた俺は、ライブステージを見ながら目を輝かせる。
薄暗い中に光る照明。
ステージには大きなアンプが置いてあり、ドラムセットが真ん中にあった。
まさに俺が想像していた通りの、ライブハウスだった。
「わあ、ここで演奏するんだね」
シゲは驚きながら、ステージを見回している。
「ステージに上がってみようぜ!」
俺は小走りでステージに向かう。
高さがある段差をよじ登り、ステージに立った俺は観客立つほうへ目線をやった。
ーーここから、俺たちの演奏を見せるのか。
そう思う俺は、早くライブをやりたい気持ちでいっぱいになる。
「あ、もうステージに立ったんですね? なら、もうリハーサル始めていいっすか?」
俺たちに気がついたガラの悪いスタッフがそう話しかけてくる。
「はっ、はい! それにしても、もうリハーサルって早くないですか?」
「バンドが一つ追加されたでしょう? その関係で予定より早くリハしないとなんですよ」
そのバンドやらが俺たちだとは、ライブハウスのスタッフはわからないのだろうか。
ぎくりとしながらも俺たちはスタッフの指示通りに動き、ギターを肩に背負ってアンプにケーブルを繋げた。
エフェクターのセッティングも済ませ、俺のギターは準備が終わる。
「リハーサルと言っても、なにをやればよいのだ? 俺はドラムを叩けばいいんだよな」
「演奏する音のバランスとか、客席に聞こえる音とかを決めていくんだよ」
「俺のベースを綺麗に鳴らすための、作業だな」
まったく違うことを言う成瀬など無視して、俺は次の指示を待つ。
全員のセッティングが終わったことをスタッフに伝えると、サウンドチェックが始まるらしい。
ドラム、ベースと続くようで小野寺から一人ずつやっていく。
初めてなことで戸惑う小野寺は、よくわからないままスタッフにまかせている。
成瀬に限っては、自分のベースが目立つような音量にしろと困らせているようだった。
「次はシゲのギターか……大丈夫か?」
いよいよギターの番で、俺はシゲにそう尋ねる。
人前でなにかをしたことがないシゲだが、きちんとやれるだろうか。
心配する俺に、シゲは笑顔で答える。
「大丈夫だよ、晴君と一緒にやるからには頑張らないとね」
本当は、不安や緊張がメンバーの中で一番なはず。それでもシゲは俺のために頑張ろうとしている。
「ああ、おまえなら大丈夫だ!」
俺はそう口にすると、シゲは頷いた。
ギターの音を軽く出し、スタッフと話しながら音量を決めていく。
長い時間がかからずにシゲのギターが終わって、ついに俺の番が来た。
「よろしくお願いしますー!」
俺はマイクに向かってそう叫ぶと、ギターのボリュームを上げる。
ギターの音にボーカルの音量がきちんと合うように、軽く声を出して確認する。
正直、これが正解だというものが俺にはわからない。
けれどそこはやはりライブハウスのスタッフなのか、きちんといい感じに音を合わせてくれているようだ。
「それじゃあ全体の音を確認したいので、全員で音を出してもらっていいですかー?」
次の行程はバンドの音全体の確認らしく、俺たちはそれぞれ楽器を鳴らす体勢に入った。
「よーし、軽く曲を弾くぞ! みんなきちんと合わせようぜ」
俺がみんなに声をかけて、ライブでやる楽曲を弾くように話す。
リハーサルだろうと、全力で弾く。
本番に最高のライブをやるために、俺はピックを握りしめて弦に向かって振り下ろす。
ーーライブスタートまで、残り数時間。
ステージには、俺たちが弾く音が響き渡った。




