第12話「バンドはいまだに微妙! されどライブは決まる!」
イベントに出れることを信じて、俺たちは練習を繰り返す。
練習とは言ったものの、小野寺のはちゃめちゃなドラム。一人でかっこつけて自分勝手に弾く、ベースの成瀬。
こいつらを中心に、俺たちのバンドはある意味で迷走していた。
「なんど言ったらわかんだよ! 勝手に動いて弾いているんじゃねー!」
この日の練習も、俺はそう成瀬に強い口調で話す。
「えっと……Fの次がCで、次はなんだっけ? えっと……」
「シゲ……そこはGだ、コードが間違えているぞ」
成瀬に注意する横で、あたふたしながらギターを弾いているシゲに俺はコードを教える。
「ていうかよー、なんで俺様がこんな古い曲をやらなきゃならねーんだよ」
「仕方ないだろ、俺たちができそうなのはこの曲くらいだし」
練習しているのは、かなり古いロックの曲。
王道の80年代ロックだ。
「イベントに出るなら、流行りの曲をやったほうがウケるだろ」
「最近の邦楽なんかしらねーよ! ほとんどロックとは程遠い、クソなバンドだろ」
成瀬が言うように、最近の音楽をやればイベントでも多少はウケるだろう。
かなでたちを含む出演するバンド。調べれば、ほとんどがメジャーな曲ばかりだった。しかし、俺たちの目指すバンドはそんな流行りなどに妥協はしない。
やるからには、かっこいいロックでなければならないのだ。
「だとしてもよー、さすがに古すぎだろ……大丈夫かよ」
「大丈夫だよ! バンドのリーダーは俺だ、俺に任せておけ!」
ーーとは言ったけど、別の意味で大丈夫なのだろうか。
周りに目をやると、みんなが思い思いに練習していた。
想像していたバンドの練習風景とは程遠い。しかし、今は早くライブができるようなレベルになる必要がある。
「よーし! みんなで、合わせて弾くぞ!」
とにかく練習あるのみ。
俺はそう気持ちを切り替えてギターを持ち、そして弾く。
ーー翌日。
教室に座るや、俺はすぐに楽譜を取り出してタブ譜を見始めた。
「……ねえ」
しばらく読んでいる中、俺は声をかけられる。声がするほうへ向くと、上原がこちらをじっと見ていた。
「かなでから聞いたんだけど、あんた……来月のイベントに出ようとしてるんだって?」
「ああ、高村さんのところまで行って出れるように頼んでみたんだよ」
「はあ? 普通、そこまでやる?」
「当たり前だろ! おまえたちのバンドなんざ、俺たちがコテンパンにしてやるぜ」
俺はそう自信満々に話すと、上原は大きなため息をつく。
「あんたは昔から思いついたら即行動するけど、ここまで来るとバカね……」
「俺たちは、イベントで一番すげえバンドと呼ばれるだろうよ! はっはっは」
「って言っても、まだ出れるとは決まってないんでしょう?」
「んぐ……まあな、だが高村さんがなんとかしてくれるだろ」
それもかなでから聞いたのか、上原は痛いところを突く。
たしかに、正式に出演が決まったわけでもない。高村からはいまだに連絡がないのだ。
「おはよう! あれ、晴君。学校でも曲の復習をしているの?」
教室に入ってきたシゲが現れると、俺の机のところへ来てそう尋ねてきた。
「ああ、ただでさえバンドがまだ不安定だからな……俺が中心になってやらねば」
バンドは一人でこんなことをしても、意味がない。メンバー全員が、安定した音を出さなければ。
俺の目指す最強最高バンドはには、まだまだ遠い道のりだ。
「僕もなるべく時間がある時に、 練習を頑張るよ。 晴君の足を引っ張らないように」
「シゲ……」
俺だけじゃなく、シゲも自分なりに頑張っているのだろう。
そんなに焦る必要はない。確実にいい演奏ができるほうが優先すべきこと。
ーーシゲだって、必ずいいギタリストになるだろう。
そう思いながら、俺はシゲの話す言葉を聞いている。
「……大丈夫なの? あんたらのバンド」
俺たちのやりとりを聞いていた上原が、ぽつりとつぶやく。
「当たり前だ! まだ結成して数日だが、すげえバンドになるぜ」
「いやあ……数日しか経ってないのに、よくもまあそう言い切れるわね」
「上原さんたちのバンドって、どれくらいの期間で納得のいく演奏ができたの?」
シゲが上原にそう尋ねる。
園芸部なのに、バンドをやる理由がわからないが参考までに聞いてやろう。
「私たち? うーん、二か月くらいはかかったかな。それこそ最初は、音がバラバラだったし」
「そうなんだ、やっぱり最初はみんなと合わせるのって難しいよね」
上原の話に、納得しているようにうなずくシゲ。俺は高笑いをする。
「はっはっは! 俺たちはおまえより、短い期間で納得のいく演奏をしてやるぜ!」
「晴君……そうは言っても、まだ一回も完璧な演奏してないよ? 僕たち」
「有本君、いざとなったらこいつのバンドを辞めちゃいなさい……」
呆れる上原をよそに、俺の高笑いが教室に響く。
その数日後、高村から連絡が来た。
ーー出演できるぞ、本番では最高なライブを期待する。
そう短い内容であるが、連絡を聞いた俺が舞い上がったのは言うまでもない。
こうして、正式に俺たちのバンドがイベントに出演するのが決まった。




