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第11話「熱いロック魂でイベント出演を勝ち取れ!」

「晴君! さすがにグーはダメだようぅぅぅ」


「あのバカ! なにしてんだ、止めるぞ小野寺」


 取り囲むようにシゲたちは近き、俺を後ろから押さえつける。


「離せえぇ! 俺たちはライブに出るんだ、どんな手段を使ってでも」


「だからって暴力はダメだよ晴君、まずは落ち着いて」


 暴れ出す俺を必死に止めるシゲ。


 周りから見たら、ただのやばい奴にしか見えないだろう。


「ここで暴れられても困るな……とりあえず、俺の部屋に行くか」


 そう話す高村は、俺たちを店の奥へと招きいれた。


 部屋に入ってすぐ、俺はおどろく。


 広い部屋には、たくさんの音楽に関係するものがある。


「きたねー部屋だな、雑誌がそこらへんに散らばってんな」


 成瀬は引いた顔をしながら、部屋を眺めている。


 だが無数にある音楽雑誌や機材、これらを見るとかなりの音楽好きだとわかる。


 俺の部屋も似たようなもので、どこか親しみを感じた。


「あっ、ギターが何本も置いてあるね」


「ふむ……あんなにたくさんあっても、 意味はないのではないか?」


「やる曲によって、ギターは変えているだよ。さあ、部屋の中に入れ」


 そう話す高村は飲み物を置いたトレーを持ちながら、俺たちを中に入れる。


「それで、なぜおまえたちは暴れ出すくらいライブに出たいのだ?」


 しばらくして、高村は尋ねる。


「その……晴君は、最強最高なロックバンドになるのが夢なんです」


 最初に答えたのは、シゲだった。


 俺の顔を見たシゲは、さらに話を続ける。


「部活のバンドみたいな軽いノリではなく、 晴君は本気で純粋にロックバンドを目指しているんです!」


「そうだ! だから俺はライブに出たいんだよ、今回のイベントはまさに俺たちのバンドがスタートするきっかけなんだ」


「……だが、ならなぜもっと早くイベントに参加しなかったのだ?」


 たしかに高村の言う通りだ。


 イベントの告知すら知らなく、かなでが教えてくれなかったら存在すらわからなかっただろう。


「募集していれば、ライブに出られたチャンスもあっただろうに」


 ーーそう、すべてが遅いのだろう。


 こんなすでにイベントが決まっているのに、いきなり出させろはない話だ。


 そんなことくらい、俺にだってわかる。

だが、どうしてもライブに出たい気持ちが俺を動かしていた。


「たしかに俺はイベントの主催者側だ、新しいバンドを発見する意味で審査員を務める……だが、さすがに勝手なことはできないな」


 やはり、そううまくいくもない。


 冷静になればなるほど、無謀な行動を俺はしている。


「おい、仙道。さすがに今回は無理ではないか? ライブなら、いつかできる機会があるだろう」


「まあなあー、俺は女の子にキャーキャー言われるならいつでもいいけどよ」


「……晴君、今回は諦めよう?」


 シゲたちは、高村の話を聞いて諦めるしかないと思っている。


 ライブに出たいと無我夢中に行動した俺だったが、今回ばかりは諦めるしかない。


「そうだな、イベントはこれっきりじゃないし……な」


 俺はそう口にした後、大きくため息をつく。


「すみませんでした高村さん、いきなりお店にまで来てしまって」


 シゲは深々と頭を下げて、高村に謝る。


「うむ……」


 高村はシゲの言葉を黙って聞いているが、なにか腕を組みながら考えているようだった。


「ライブに出れねーなら、ここにいてもしょうがない。俺らは帰るか」


 俺は立ち上がると、みんなに声をかける。


 全員が部屋を出ようとした時、高村が口を開く。


「仙道……だっけか、おまえが言う最強最高のバンドってのはどういう意味だ?」


 そう尋ねられた俺は、自分が強く思う最強最高のバンドについて語る。


「聴くすべての人が熱狂する……完全無欠のロックバンドだよ。最強の演奏をするバンドで、キラキラと輝いて見える最高のライブをやるんだ!」


 テレビで見るような、金のためにやってるバンドやアイドルとは違う。

 偽りの盛り上がりの中で演奏するんじゃなく、バンドと観客が本当の意味で一つになる。


 そんなライブができるバンドが、俺が思う最強最高のバンドなんだ。


「……おまえらが、そんなバンドになれると思うのか?」


「なれるんじゃねー! なるんだよ……俺たちは」


 ーーそう、俺はなるんだ。


「はははは! 面白いやつだな、おまえは」


 俺がそう思っていると、高村の笑い声が部屋に響く。


「そうか、最強最高のロックバンドか……いい志だ」


 一人でなにか納得すると、俺たちに向かって高村はさらに話を続ける。


「いいだろう! おまえたちがイベントに出られるか、主催者に交渉してやろう」


「……えええぇぇぇ!」


 高村の言葉に、俺たちは驚く。


「本当か? 出れるのか? 俺たちが、ライブに」


「まさに仏のご利益だな、ありがたやありがたや」


「ふっ、これで俺のベースを女の子たちに聴かせられるな」


 それぞれが喜んでいる中、シゲは高村に尋ねた。


「けど高村さん、なぜ僕らをイベントに出させてもらえるようにしようと思ったんですか?」


「ん? さっきも言ったが、イベントは新しいバンドを発見するためのものなんだよ」


「はい、それはわかるんですが……」


「おまえたちにような、真っ直ぐなバンドはそういない。新しいバンドの、可能性を感じたからかな」


 高村はそう答えると、なにか思うものがあるような表情をしている。


 まるで自分もそんなバンドになりたいような、そんな顔をしているようだった。


「よーし、ならすぐに練習だ! 貸しスタジオに行くぞ!」


 俺はみんなに話して、高村のほうへ向く。


「俺たちがイベントに出れた時、すげーライブを見せてやるぜ! あんたのバンドよりもな」


 それはある意味、バンドに対する挑発でもあった。


 高村のバンドがどれほどのものかは、わからない。しかし、俺たちはそれよりもいいバンドになってやる。


 そんな意味を込めて、高村に宣言した。


「それは楽しみだ、いいライブになるように仕上げて来い」


「……上等だ!」


 こうして、俺たちはイベントに出れる可能性を残して高村の家を去る。


 イベントでは審査員だが、いつか高村とも対バンをしてやる。


 そんなことを考えながら、俺はギターケースをぎゅっと握りしめた。


「まずは、かなでたちのバンドに勝つ!」


「まだ出れるって決まってないよー、晴君」


 シゲがそう答えるけれど、俺の頭はイベントのことでいっぱいだった。


 ーー今やるべきことは、練習。


 俺たちに必要なのは、バンドのレベルアップ。


 すべては、イベントのために。


 そして、最強最高のロックバンドになるためなのだから。

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