#7 ルクフェネとアヤメちゃん①
ルクフェネとアヤメちゃんを乗せたオーデは西へ向かって夜空を飛んでいた。半分を過ぎたところで地上に降りる。
「オーデありがと、少し休もう。アヤメちゃんも疲れてない?」
「とても快適でしたよ。オーデ、わたしからもありがとう」
アヤメちゃんに首筋を撫でられて、幻影のイヌワシは目を細めて喜ぶ。
「ルクフェネさん、ずいぶん顔色がよくなりましたね。少し前はご気分がすぐれないようでした」
「アヤメちゃんにも気づかれちゃってたんだね。でも心配してくれてありがと。ちょっとね、ふふ、何だか吹っ切れたみたい……」
「圭さんのことですね」
「何でもお見通しなんだね。そう、圭のこと。これからどう動くかみんなで話し合っているとき、圭はいつもどおりでいつもと変わらず接してくれた。うまくいえないけど、これもいいかなって。そうしたら気持ちが軽くなっちゃった」
「お好きなのでしょう、圭さんを?」
「片想いだけどね。思い返してみれば、ケヤキちゃんの木の下で抱き締められたとき、ドキドキして顔を真っ赤にしてたのはわたしだけで、圭はぜんぜん普通でいつもどおりだった。つぐみには『だからといって何も起こりそうにないのはわからない?』なんていったけど、アレ、たぶん自分への言葉だったんだね、きっと。防衛局に圭がいて、いつものように『おはよう』って声をかけて、いつものように一緒に事務作業をして、〈セグレンデの二つ耳〉でこころとこころがつながって、侵入者を捕まえて、そしていつものように『また明日』っていえれば、それでいいかなって。そんな日常が続くのなら十分かなって」
「圭さんはルクフェネさんがどのような立場にあっても気にしないと思いますよ」
「だけど、もしわたしのことを好きになってくれたとしても、もう告白はしてくれないと思う。しょうがいなよね、そういうところも含めてわたしは好きなんだから」
「でも……」
「アヤメちゃんは優しいね。聞いてくれて、ありがと! 話したらもっとすっきりしちゃった。そろそろ出発しようね」
「はい……」
「オーデ、またよろしくね……ん? 何か出てきたけど……アヤメちゃん、わかる?」
「わ、わかりません……。でも……おそらくですが、将門公をかたどった何らかの土産物から生じたものではないでしょうか……? ここは将門公の伝承が残る土地ですから」
それはラブリーな感じにデフォルメされた平将門の首オンリーで、額には矢がファンシーな感じに突き刺さっていた。
「体はどこなん? 首だけは寂しいのん」
「えーと、お名前は……?」
「『まさかどくん』ですのん、ゆるキャラですのん。でもシチョーさんが却下したのん。首オンリーはダメらしいのん。だから体欲しいのん」
「どうして首だけのデザインにしちゃったのかな……?」
「わからないのん」
「あのう、将門公は反乱に失敗して、スパッといいますか、斬ッていいましょうか……。『首塚』が各地にありますし……」
「それをそのまま再現しちゃったのね……。えっと、まさかどくんね」
「体見つかったのん?」
「ま、まだかな。それでね、ちょっといまは忙しくて対応がとても難しいの。だから落ち着いたら取手の防衛局まで来てくれるかな? 体はちょっと厳しいけど、ほら、人気者になったらこのままでもよくない? 売り出し方を考えてあげるから、ね」
「本当なのん? まんもす嬉しーのん」
「じゃ、じゃあね」
「まんもすー」
まさかどくんはいずこかへと去っていった……。




