#13 うっかり
リバは光の壁を右手に仰ぎながら田園地帯を疾走していた。真正面から風を受けて圭の髪は暴れる。
(いま防衛局は光の壁に囲まれている。外からは中を見通すことさえできない。珠兎が〝境〟と呼ぶ光の結界は歪な五角形をしている……)
「急がないと! 圭、しっかりつかまっててね」
「ありがと。カルナさんの話ではタイムリミットは日の出の時刻。それまでに結界を突破して〈宇宙の扉〉を回復しないといけない。少なくとも異議を唱えればプロセスはいったん止まる……」
「神さまって、筑波さまと牛島さまだっけ? 筑波山は取手にいればどこからでも見えるからわかるけど、牛島さまってどこの神さまなの?」
「僕もぴんと来てないんだ、実は。でもアヤメちゃんは牛島さまの力も必要なのに、どういうわけか動きを感じられないって。それでアヤメちゃんがルクフェネと向かってる。カルナさんはケヤキちゃんといっしょに、ケヤキちゃんがお姉さんと慕う精霊の待つところへ。僕らもまずはアヤメちゃんに教えてもらった精霊の待つところへ、それから筑波山へ向かうよ」
「ボク、あのとき対岸へ逃げたの、取り返しのつかないことをしちゃったんじゃないかって、どきまぎしたよ。だって外からはもう何も手出しできないって」
「あの中は珠兎の完全な支配が成立している。だから中だったら、それこそ手も足も出ないところだったんだ。リバの判断は正しかったんだよ」
「うん、それを聞いてとても安心したんだ。そろそろ北上するよ」
圭は頷いてまた光の壁を見上げた。光の壁には膨大なエネルギーが供給されているという。
(でもまさか、シモウサと下総の違いがこんなところに影響するとはね……)
それはエネルギーの供給源がわからないという話からだった。
「——そう、まったくの不明。あたしが総督府を香取神宮に置かしてもらったのは、〈宇宙の扉〉からの距離もあるけど、そこがシモウサでもっとも天地の力が強い場所だったから。ほら、香取神宮ってシモウサの『一の宮』でしょ? だから、これほどのエネルギーがどこから供給されているのかさっぱりわからないんだ。香取神宮と同格の力なんて、ほかにあるはずがないのに……」
「あのう……、鹿島神宮も『一の宮』ではないでしょうか……? 常陸の……」
「うん、ヒタチのでしょ?」
圭はものすごく嫌な予感がして、投影された二次元ディスプレイに地図を表示した。
「ほら、カルナさんもご存知のとおり、セーグフレード領シモウサは下総の範囲そのままじゃなくて、北へずれているじゃないですか。それでシモウサには香取神宮も鹿島神宮も両方含まれているわけで……」
「……。……。……」
「……?」
「圭クン」
「ハイ」
「うっかりはよくないよね♡」
「……ハイ」




