#1 カルナとケヤキちゃん①
7. 神々のうた
セテュードに乗ったカルナとケヤキちゃんは高速で移動する。ケヤキちゃんはセテュードの首筋をを優しく撫でてあげる。
「とてもかっこいい」
「褒めてくれてるよ、セテュード」
セテュードはハリオアマツバメの幻影だ。鋭い眼光は行く先を睨んだままだが、ちょっとだけケヤキちゃんを振り返って応えた。
「セテュードは精霊なの?」
「ちょっと違うかな。ルクフェネのオーデもそうだけど、アルテリウア・ユーヴェそれぞれの友達。ユーグネアを指先で紡ぐことで現れるけど、ほかのユーグネアとは違ってそのユーグネアを創り出した本人か、本人から伝えられた者の前にしか現れない。生きていたころの姿を知ってるんだよ」
「それではカルナさんの想いがこうして眩い光をまとわせてるのね」
「そういうことになるかな。向かってる先はどういうところ?」
「大河を見下ろす杜に社があって、姉と慕う精霊がいます。きっともう目覚めて待ってくれていることでしょう。社は人々から神崎神社と呼ばれています」
「お姉さんと慕う……きっと素敵な方なんでしょうね♪」
「はい、とっても。よい助言をもらえると思います」
セテュードは杜の上を一度旋回して、それからその麓に舞い降りた。カルナは鳥居の前で一礼する。そこからはずっと上まで急な石段が続く。
「セテュードも一緒に入ってよさそう?」
「はい、姉さまは歓迎するといってくれてます」
セテュードは鳥居をくぐってから一気に急上昇した。そして滑空したまま滑るように山頂の境内へ。カルナはどこか切り取られた空間に入ったことを自覚した。
見える風景に変わりはない。深夜にあってはただ暗闇だけが支配する境内だ。ただ歩みを進めるにつれて、社殿を隠すほどに大きくそそり立つ楠が淡く翠に輝き出した。
仄かに光をまとった小さな少女が現れる。顔立ちはケヤキちゃんによく似ているけれども、すべてを見通すような双眸は碧く、しかし髪はよりいっそう緑濃い。
「姉さま」
「久しぶりですね、息災でしたか」
「はい、姉さまもお元気そうでなにより」
「カルナ・ウィーディルビルグです。お会いできてとても嬉しいです」
「わたしもですよ、カルナさん。歓迎します」
「ケヤキちゃんのお姉さんはなんて呼んだらよいでしょう?」
「ケヤキちゃん……よい名前をもらいましたね、ケヤキちゃん」
「はい、でもまだちょっとこそばゆく感じます」
「それもよいものでしょう。ですが、わたしは古くから〝ナンジャモンジャの木〟と呼ばれて人々に守られてきた存在。それ以上でもそれ以下でもないのです」
「では、ジャモちゃんとお呼びしてよいでしょうか?」
「わかりました、ではこれよりジャモと名乗ることにしましょう。ケヤキちゃんもよいですね?」
「はい、ジャモ姉さま」
「さて、この地に起こっていること、あるいは起こりつつあることはわかっています。閉ざされた空間が存在するのは取手の地、ゆえに解き放つにはそこに住まうケヤキちゃんの力が何よりも重要です。わかっていますね?」
「はい。でもわたしの力では足りません」
「わたしも取手の地へ赴き、助けましょう。そしてカルナさん、この地に住まうほかの精霊にも呼びかけましょう。きっと応えてくれることでしょう」




