↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シモウサへようこそ!  作者: 一ノ宮ガユウ
6. 異変
PR
80/153

#6 妖狐

挿絵(By みてみん)


「あっ、あそこ、なんか光ってるよ! あそこ!」


「……」


「どうしたの?」


「リバ、妖狐はいま、どう見えている?」


「どうって、前脚はあるけど後ろ足はなくて、尻尾のほうがゆらゆらしている紫色の狐だよ」


「……。たぶんいま、いちばん見えてるのはリバだよ。わたしも圭もそこまで具体的には見えないし、そもそもリバにいわれるまで気がつかなかったし」


「え〜、さっきの犬っころと同じっていいたいの? いくら四本足で歩くからって……」


「違う、リバの素敵な能力。いま必要なのに圭もわたしも持っていない力だよ」


「……ありがと」


「リバと圭はその光ってるところへ向かって! わたしは妖狐を大地に戻すから」


「わかった! リバ、よろしく!」


「任せてチョンマゲ!」


 旋回するように北側から回り込んで降下していく。


 周辺は古くからの道を軸に集落と林、畑の入り交じる高台で、家々からこぼれる光もまばらだ。遠く小貝川があって、低地は墨で塗られたように闇が支配する。


「あっ!! ケイ、あのひとだ……!」


「あのひとってコヨ・タキッシェさん!?」


「ボク、追いかけるよ!」


「わかった、気をつけて!」


 着地して圭を降ろすとリバは走り出した。


(真っ暗で僕には何も見えなかった……。ゴーグルのほかの機能にも障害の影響が出てるんだ。それにしてもここは……見覚えがあるような……ああやっぱりそうだ……)


 そこは大きな欅(けやき)のあるお寺だった。参道を歩いていればすぐに見えてくる。ただ、その途中でどこか違う領域に踏み入れたような違和感を感じた。


(景色はそのままだ。でもここはもう、もとの場所じゃない……)


 欅の巨木には空洞があって、中にお地蔵さまが祀られている。圭は一礼してそれから空を見上げた。目が慣れてきたのか、だいぶ見えるようになってきた妖狐は数を減らしている。


 ルクフェネは指先でユクルユフェーアを紡ぐ。圭も地上から援護する。


(かけらよ(ジャーシャ・)、みなもとへ帰れ《カエップア・ルアルシェーウ》)


(揺るぎなく(テール・クィーレ・)確かな絆(ルラルエ・レーウ)、そよぐように)


 柔らかな光が妖狐を包み込んで収束する。そのままゆっくりと落ちていって、土に触れれば消えていく。背後からルクフェネに迫った妖狐は、そよぐ透明なカーテンに誘われ方向を変える。


 光は次々に地上へ落ちていく。そして森に受け止められて消えていく。


(残り一つ……。……?)


 気がつけば欅はぼんやり光をまとっていた。


(僕にもわかるほどに強まってるってことか……。ここだけ切り取られた空間みたいだ、外(﹅)の(﹅)景色は見えていても。何かの力が支配する範囲に僕はいる……)


 最後の妖狐は急に向きを変えた。ぼんやりとした姿でも尻尾は容赦なくオーデを薙ぎ払う。


(わっ!!)


(ルクフェネ! そのまま続けて……!)


(わかった! かけらよ(ジャーシャ・)、みなもとへ帰れ《カエップア・ルアルシェーウ》……!)


(揺るぎなく(テール・クィーレ・)確かな絆(ルラルエ・レーウ)、包み込むように)


 閃いた光が妖狐に収束する。同時に背中から落下するルクフェネを透明なカーテンがふわりと包み込んだ。


【高源寺】

普(ふ)蔵(ぞう)山(さん) 高(こう)源(げん)寺(じ)。樹齢1600年と伝わる大きな欅が境内を守る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。