#10 光線
取手市内、リバは広大なビール工場の中を疾走していた。
「右に三つ、左に二つ、このままの速度で。一個は受け流すから気をつけて」
「りょーかい」
建物の陰から飛び出してきたルレンの進路に透明な障壁を次々に創り出して自爆させる。すべて想定のとおりだ。一つは突破してくる。けれども目論見が狂ったようでリバを通り越してしまう。
(揺るぎなく確かな絆)
圭はその個体をはたき落として地面に落とした。爆発する。
「協力プレイみたいの始めたね!」
「単体では勝てないのを学習したんだよ!」
「まとめてやっつけられるから助かるね!」
「あと十体だよ!」
「ガンバるんるん♪」
香取神宮境内ではカルナを包む風が激しさを増していた。局地的に明滅を繰り返しているのは雷だろうか。
カルナはユクルユフェーアに古セーグフレード語を好んで使う。現代へもわずかに意味を通じながら、それでいて飾らない音の並びの中に原初の自然を感じるからだ。
(残り三体。圭クンの推定によればコイツか……。まだ尻尾を出さないけど、動きを見れば確かにそうだとわかる。殿下、もう圭くんに思考を読まれてるよ)
三体は圭とリバを取り囲んで散らばっていた。相互の距離を理解して、そして同時に突っ込んでくる。
(揺るぎなく確かな絆)
しかし一体は障壁を擦り抜けた。
「でもそれだと僕とリバには当たらない……えっ!?」
擦り抜けた一体は逆方向から来た別の個体に激突した。大爆発を引き起こす。たまらず圭は新しい障壁を創り出す。指先が乱れる。間に合わない。残る一体が間合いに入る——。
「残念でした♡」
圭とリバの目前で、真上から飛来した一条の光線がルレンの中央を貫いていた。
「すごい……」
「ほえ……」
「圭クン、リバくん、もう動いていいよ。ちょうどこの角度で串刺しにしないと起爆装置だけを壊せなかったんだよね」
ちなみに大爆発のほうは、圭が予想した地点をわずかに外しただけで、障壁で創った立方体の中に収まっていた。
「あたしに任せるってことで生け捕りにしてみました〜♪ 協力ありがとー。でも圭クン、速くなったね! できて三面かと思ってたよ!」
「ぶつかる二体のぶんはもったいないので、実は創らなかったんです。代わりに残りを」
(圭クン、あたしが思ってるより肝が据わってるのかもね。想定が外れたら直撃を受けてしまう。あ、なるほど、違った。信頼だね、いざとなったら守ってくれるって)
リバの鉤爪はアスファルトをえぐり、骨張った翼は全開になっていた。




