↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シモウサへようこそ!  作者: 一ノ宮ガユウ
5. 恋の季節にぬくもりを
PR
70/153

#11 道標

挿絵(By みてみん)


 ルクフェネは生け垣が続く道をのんびり歩いていた。


 小さな踏み切りで線路を横切る。


(レールが一組しかないけど、どっちかにしか行けないのかな? 電車が来たらわかるんだろうけど、どのみち乗るんだし、あとでいいかな……)


 そのまましばらく歩けば素朴な鳥居が見えてきた。


(堤防の向こうだ)


 階段を上っていけばだんだんと全体が見えてくる。鳥居の向こうはもう利根川の水面だ。


(風が気持ちいい……)


 小さな道を選んで来たほうへ戻っていく。名前はわからないけれど、淡い青紫の花が生垣にたくさん咲いている。その先に電車の駅があった。


(待合室だけの素朴な駅。香取駅って書いてあるからやっぱり香取神宮をイメージしてるのかな? どっちで待ってればいいんだろ……ここに書いてあった、向こう側だ)


 それなりに待っていると、両側から電車がやってきて、反対方向にいく電車が朱塗りの待合室があるほうに止まった。


(へえ、こうやって駅ですれ違うんだ……)


 昼下がりの電車は空いていて、ルクフェネは誰もいない区画を見つけて座った。車窓はのどかな田園風景だ。ルクフェネはぼんやり眺める。


(みんな、本を読んだりスマホをいじったり、居眠りしたり。見慣れてるのかな? わたしにはシモウサらしい素敵な風景なのに。わたしにもいつか見飽きるときが来るのかな? でもそれはそれで、わたしがシモウサに溶け込んだってことになるのかな……)


 駅が近けばいくらか家が増えて、駅を離れればまたのどかな田園地帯が続く。


(カルナ、すっかり香取神宮に溶け込んでた。ああいうの、わたしは真似できないな……。ま、カルナだったら、キミはキミなんだから真似しなくていい、とかいうんだろうな。いちばん苦手で大嫌いで、いちばん信頼できて大好きなカルナ。苦手な理由の全部が信頼する理由でもあるから厄介なんだけど)


 臨時の終点に到着して電車を降りる。


(オーデ、草原の空を(フールアロ・ペア)ともに渡ろう(ッタ・コラ・オーエフ))


 緑の田園の上を飛んで、再び線路が見えてきたら地上へ降りる。古い集落の中にある小さな駅だ。ここも臨時の終点で、しばらく待ってやってきた電車は来た方向へ戻っていく。


(今度は長い座席だ。ちょっと体を斜めにしないと景色が見えないけど、これもこれでいいかな。路線の名前は一緒だけど、どうしてつながってないのかな? 終点が臨時ってなんだろ? えーと、このまま30分くらい、そこで乗り換えて利根川を大きな橋で渡ったら取手。……。再発するのね……。まあいいっかな、戻るなっていわれなかったし。不安は不安だけど!)


 終点で乗り換えたのも同じ長い座席の電車で、行く先は取手駅になっていた。鉄橋を渡る電車は駅に着くずいぶん手前でゆっくりになって、のんびり利根川の大きな橋を渡っていく。


(ふふ、帰ってきたって気持ちになってるから不思議……)


 取手駅の改札を抜けるところでルクフェネは呼び止められた。高校の制服姿の木葉つぐみだ。


「買い物か何かだったんですか」


「そういうわけでもないけど……」


 ルクフェネはつぐみをまじまじと見つめた。


(髪なんて邪魔にならなければいいやって思ってたけど、ああいうふうにまとめてもいいんだ……。なんか綺麗な珠が付いてる。どこで買うのかな? 腕の装飾品は何かな? ひも? 編んである? ブーツの紐と同じもの? だとしたらどうして腕に巻いてるのかな?)


「元気なさそうですね!」


「ん? まあ……」


「……。お茶していきませんか!?」


挿絵(By みてみん)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。