#11 道標
ルクフェネは生け垣が続く道をのんびり歩いていた。
小さな踏み切りで線路を横切る。
(レールが一組しかないけど、どっちかにしか行けないのかな? 電車が来たらわかるんだろうけど、どのみち乗るんだし、あとでいいかな……)
そのまましばらく歩けば素朴な鳥居が見えてきた。
(堤防の向こうだ)
階段を上っていけばだんだんと全体が見えてくる。鳥居の向こうはもう利根川の水面だ。
(風が気持ちいい……)
小さな道を選んで来たほうへ戻っていく。名前はわからないけれど、淡い青紫の花が生垣にたくさん咲いている。その先に電車の駅があった。
(待合室だけの素朴な駅。香取駅って書いてあるからやっぱり香取神宮をイメージしてるのかな? どっちで待ってればいいんだろ……ここに書いてあった、向こう側だ)
それなりに待っていると、両側から電車がやってきて、反対方向にいく電車が朱塗りの待合室があるほうに止まった。
(へえ、こうやって駅ですれ違うんだ……)
昼下がりの電車は空いていて、ルクフェネは誰もいない区画を見つけて座った。車窓はのどかな田園風景だ。ルクフェネはぼんやり眺める。
(みんな、本を読んだりスマホをいじったり、居眠りしたり。見慣れてるのかな? わたしにはシモウサらしい素敵な風景なのに。わたしにもいつか見飽きるときが来るのかな? でもそれはそれで、わたしがシモウサに溶け込んだってことになるのかな……)
駅が近けばいくらか家が増えて、駅を離れればまたのどかな田園地帯が続く。
(カルナ、すっかり香取神宮に溶け込んでた。ああいうの、わたしは真似できないな……。ま、カルナだったら、キミはキミなんだから真似しなくていい、とかいうんだろうな。いちばん苦手で大嫌いで、いちばん信頼できて大好きなカルナ。苦手な理由の全部が信頼する理由でもあるから厄介なんだけど)
臨時の終点に到着して電車を降りる。
(オーデ、草原の空をともに渡ろう)
緑の田園の上を飛んで、再び線路が見えてきたら地上へ降りる。古い集落の中にある小さな駅だ。ここも臨時の終点で、しばらく待ってやってきた電車は来た方向へ戻っていく。
(今度は長い座席だ。ちょっと体を斜めにしないと景色が見えないけど、これもこれでいいかな。路線の名前は一緒だけど、どうしてつながってないのかな? 終点が臨時ってなんだろ? えーと、このまま30分くらい、そこで乗り換えて利根川を大きな橋で渡ったら取手。……。再発するのね……。まあいいっかな、戻るなっていわれなかったし。不安は不安だけど!)
終点で乗り換えたのも同じ長い座席の電車で、行く先は取手駅になっていた。鉄橋を渡る電車は駅に着くずいぶん手前でゆっくりになって、のんびり利根川の大きな橋を渡っていく。
(ふふ、帰ってきたって気持ちになってるから不思議……)
取手駅の改札を抜けるところでルクフェネは呼び止められた。高校の制服姿の木葉つぐみだ。
「買い物か何かだったんですか」
「そういうわけでもないけど……」
ルクフェネはつぐみをまじまじと見つめた。
(髪なんて邪魔にならなければいいやって思ってたけど、ああいうふうにまとめてもいいんだ……。なんか綺麗な珠が付いてる。どこで買うのかな? 腕の装飾品は何かな? ひも? 編んである? ブーツの紐と同じもの? だとしたらどうして腕に巻いてるのかな?)
「元気なさそうですね!」
「ん? まあ……」
「……。お茶していきませんか!?」




