#8 標的
「侵入者ヲ検知! 侵入者ヲ検知! タダチニ行動ヲ開始セヨ! 繰リ返ス——」
「!」
圭はオフィスを飛び出した。階段を駆け上がりながらカルナを呼び出す。
「ハイハーイ♪ こっちにも情報来てるよ〜。ひとまずそっちで進めていいよ。圭クンの分析をこっちに同期してくれる? おかしいところがあったら指摘するから」
「わかりました!」
屋上に出れば、リバが見えない〈宇宙の扉〉を見上げていた。
「なんか、ものすごく多くない?」
「感じる? 侵入者は『ルレン(無生物)』、ジェレンの小型版だね。耐久性は低いし行動パターンも単純だけど、とにかく数で押し寄せて自爆するタイプ。三桁を超えた! カルナさん、画面見えてますよね?」
「見えてるよ〜」
「地上に降りたあと、すぐに高速移動で防衛局の圏内から脱出を図るはずですが、この数は難しいです。全個体に識別子を与えました。お願いしたい個体を指定しますから、カルナさんはそれを——」
「気づいた?」
「はい、市内を出るつもりはないですね。どのルレンの予想進路も散らばったあと、まっすぐ防衛局にへ向かってきています。一目散にそこから離れたいはずなのに。どうやら今回の目的、あるいは標的は僕ですね」
「珠兎に気に入られたね」
「きっと名誉なことなんでしょうね」
「でもおかしくない? 今日はたまたまお休みでいないけど、ルクフェネがいたら自滅行為だよ」
「たまたまお休みなのを、たまたま知ってたんだよ」
「?」
「カルナさん、珠兎の正体には当たりがついていると思いますが、その人物は裏からどこかの部局に働きかけて査証を発行させることはできますか?」
「その心は?」
「今日お昼過ぎ、藤代駅の近くで例のコヨさんにばったり会いました。そのとき世間話の中でルクフェネの不在に触れました」
「なるほど……なるほどね」
「あとコヨさん、シモウサを周遊すると偽って実際にはずっと取手市内にいます。これはリバの嗅覚があっての情報です」
「流石だね、リバくん」
「それほどでも♪」
「ケイくん、珠兎がどうしたいのかわかってきたよ。でもこの話はあとでしよう」
「来ましたね」
「そういうこと」
カルナはいったん通信を終えて社務所を出た。ゴーグルを装着すると、自動的に変形して右耳と右目だけを覆う。左目はそのままだ。映像は圭とリバを俯瞰する。
(さすが圭クン♥ ルレンは行動も単純だし、耐久性も低いから〝揺るぎなく確かな絆〟で障壁を創り出してぶつければ破壊できる。いちばん得意でいちばんしっくりくるユーグネアだけでシンプルに対処するのが最良だ。それ以外のユーグネアは使わずに自身の体力も精神力も温存。——あ、若葉さん、弥生さん、ありがとうございます……)
境内の中央でカルナは軽く会釈した。若葉さんと弥生さんは参拝客に広く空けてくれるよう、お願いして回ってくれていた。
(リバくんの動きも最高だ。ルレンを誘導するように走って、あるいには圭クンを背中に乗せて駆けて。今日は圭クンの指示に完全に従ってる。リバくんなら余裕ではたき落とせるし、そのほうが早く駆逐できるように思えてしまうけど、それが圭クンの分析を無駄にしてかえって窮地に追い込まれることをわかってるんだ。戦いたくてウズウズしてるのがバレバレだけど。圭クンを運ぶときは負担がかからないように、描くユクルユフェーアが乱れないように気を配って、でも超高速で)




