#7 母の愛
「で、愚兄の件だけど」
「もう耳に届きましたか」
「迷惑かけちゃって、ごめんね」
「やりたいことはわかってるので、対処できますよ」
「あなたのことだから心配してないけどね。そこ、ルクフェネが配置されたところでしょ? 迷惑ついでに、できるだけあの子にやらせてあげてくれる?」
「そのつもりですよ」
「あの子、相変わらず考え過ぎて空回りしたり、拘り過ぎて意固地になったりしてるでしょ? カルナちゃんのほうで支えてあげてね」
「もちろんですよ」
「あなたほどのアルテリウアを小さな総督府に押し込んで、申し訳なく思ってるわ」
「それは陛下の思い違いですから、どうぞお気になさらずに」
「相変わらずね……」デンテナは盛大に溜め息を吐く。「次の昇格試験も受けないつもりなの? ギルブスは今度サボったら懲罰として強制的に昇格させるってプンプンよ」
「髭鷲将も執念深いですな〜。そこはなにとぞ陛下からお口添えを〜」
「するわよ、ルクフェネのことも助かってるし。あなたの日ごろの言動のお陰で何も知らない連中は当然のことだと思ってるから、会議もすんなり終わるわ。ギルブスはものすんごい目であたしを睨んでくるでしょうけど」
「怖いですな〜」
「もう! 特別に階級を得たいわけではないのは昔からよく知ってるけど、あなたが必要としなくても、階級のほうがあなたを必要とすることだってあるの。そこのところ、よく考えて」
「なるべくは……」
「だからねえ……。まあいいわ、邪魔しちゃったわね。兄のことで手に余ることがあったらあたしにいってちょうだい。そうそう、あと、ルクフェネに連絡するようにいっておいてくれる?」
「あらら、喧嘩でもしましたか?」
「ちょっとね。『いい人のひとりくらい、いるんでしょ、写真くらい見せてよ』ってメッセージしたら、『いい人って何?」『意味がわからない』って。意味がわからないのはこっちのセリフよね?」
(ああ……文字どおりに意味がわからなかったんだろうな……)
「悩みごとでもあれば、聞いてあげたいじゃない? たとえば片思いの男の子がいるとか、でもその男の子が好きなのは親友で、相談に乗ってくれる男の子が実はルクフェナが好きで、みたいのあるでしょ!?」
「ずいぶん具体的ですね……」
「でもあるでしょ、普通!?」
「おっしゃるとおりに普通は……」
「難しい年ごろだから母も遠回しに聞いてあげたのよ? カルナちゃん、わかるでしょ!?」
「いや、まあ……」
「なのにあの子ったらっ! どうしてこの母の愛をわかろうとしないのでしょう! この銀河よりも銀河団よりも、宇宙よりも大きな愛を!」
「たとえば……あとは想いを伝えるだけの相思相愛だから悩みごとはないとか……」
「相思相愛!? 相手いるの!? 誰!?」
「た、たとえばです、たとえば」
「んもう、母は娘のキュンキュンを聞いて、一緒にキュンキュンしたいの♥」
「その気持ちはわからなくはないですけどね……」
「でしょ、でしょ、でしょ、カルナちゃんもキュンキュンしたいでしょ!? こうなったら最近王宮ばっかりだし、視察にかこつけて乗り込んじゃおうかしら!?」
(ええーっ!? ここに!? シモウサに!? ルクフェネが王族ってばれちゃうじゃーん!!)
「どうかしら、カルナちゃん?」
「そ、そそそ……それはこちらもご承知のどおりの状況ですから、もっとずっと落ち着いたおりに……」
「うーん、まあ、それもそうね」
(アレ? なんかあっさり……?)
「カルナちゃんねえ!!」
顔面どアップ。
「さっきの『たとえば』流してあげたけど、けっこう怪しかったからね!! カルナちゃんのことだから、何かしら理由があって、たぶんルクフェネのためだから見逃すけど、キュンキュン案件は事後でもかならず報告しなさいね!!」
「ハイ……」




