#6 王家の紋章
取手市内、防衛局。
圭はたまっていた発注をやっつけようと処理を進めていた。最後は制服予備の発注だ。
「ルクフェネはいまと同じでいいっていってたけど、僕もそれでいいかな」
通信機を操作して、これまでの行動ログとリアルタイムで採寸した数値をインプットしてみる。
「おおっ、一回り大きいのがいいって勧められた! そういえばちょっと動きづらくなってた! 筋肉ついてきたのかな!? じゃ、これにして。あとは、へえ、襟のデザインとか裏地はわりとカスタマイズできるんだ。ま、僕は標準のものでいいとして、ルクフェナは指定あるのかな? えーと、裏地だけ指定されてる。兎と鷹……あれ、見覚えがあるような……?」
兎はセーグフレードにとって神聖な存在、鷹は飛翔と力強さの象徴であって蒼穹軍を象徴するものだ。どちらも意匠として非常にポピュラーで、さまざまな装飾に多用されている。
しかしこの二つを組み合わせると特定の意味をもつことになる。
「ああそうだ、セーグフレード・ペセトエイセ王家の紋章だ。人気が高くて、王宮の土産物とかにも使われてるんだよね。私的な場合や慈善目的なら装飾に取り込んでもかまわないみたいだし。よし、これで入力完了、間違いないかな?」
❖
香取神宮、総督府。
「あ! そういえばルクフェネ、制服の裏地、王家の紋章にしてた!! たぶん決めたのはあの人なんだろうけど。着るものに無頓着なルクフェネが細部に拘わったはずもないし、デフォルトのままだったのを茶目っ気たっぷりに変更したんだろうね。あ〜もう、蒼穹軍で王族以外が王家の紋章を使用しないの伝統じゃん、不文律じゃん。絶対わかってやってるよ、あの人。そこがあの人のタチの悪いトコなんだよね……。……!! 噂をすれば……!」
通信が割り込んできたのでカルナは姿勢を正した。右手を胸の中央に当てて頭を下げる。
「デンテナ・ティッセ・ペセトエイセ陛下。わたくしのような一雎鳩士への出御、誠に光栄に存じます。陛下におかれましては健やかに麗しくあらせられること、お慶び申し上げます」
「苦しゅうない。頭をあげるがよいぞ、ウィーディルビルグ……。……。な〜んてね〜、ハイホー♪ カルナちゃ〜ん、元気だった?」
「あのですねえ、これ蒼穹軍の通信網ですよ、記録が残りますよ」
「いいじゃない、あたしとカルナちゃんの仲でしょ?」
「そういう話ではなくてですね……。南国のビーチでおくつろぎ中ですか?」
「そうよぉ、最近忙しかったの。たまには息抜きしなくっちゃね♪ でもカルナちゃん、何度誘っても来てくれないんだから!」
「かえって疲れるので……」
「ん? 何かいった?」
「いえ、何も」
「そう? ねえねえ、これ可愛いでしょ!?」
「わざわざ引きの映像に切り替わりましたけど……ああ、新しいビキニをしつらえたんですね……。可愛いです、可愛いです」
「でしょ、でしょ、でしょ♥」
「最初に申し上げましたように、これ記録に残りますよ、映像も含めて」
「まだまだボンキュッボーンのわがままボディ♪ イェーイ♪」
「平気でひけらかせるのは猛烈に自分を律している証拠なんでしょうけど。もうすぐ四十歳なのでは?」
「とっくに超えてるぅ♪」
「まるでそう見えないからすごいんですけどね……」




