#17 珠兎(トゥロネ)
翌日、香取神宮。
新たに送られてきたデータを見てカルナは珍しく顔を顰めた。
「なるほど……」
それはリバが話してくれた仮面の男の情報だった。仮面の男——とはいっても実体のある何者かが仮面で素顔を隠しているわけではなく、仮面と黒いローブという依り代にに何者かが憑依しているというほうが正しい。
しかしそんな状態にあってもず強力なユーグネアを行使する。しかもそれはこの星ではない遠方のどこからか。感覚も鋭敏でルクフェネのヨディーレの矢をもってしても捕捉できない。つまり相手は並外れた能力の持ち主だということだ。
モミョ族に接触したのは八日前だという。
(〈宇宙の扉〉の乱れが治まってルクフェネが着任したのが六日前。各国にシモウサの領有を通告したのも同じ日だ。それに先行している……)
条約や慣習・その他諸々の事情(要するに国際法)によれば〈宇宙の扉〉を開いて新たに領土となり得る星を発見した場合、その国は他国へ通告する義務を負っている。
セーグフレードがシモウサの上空に〈宇宙の扉〉を開いたのは二十日前のことだ。しかしそれから二週間、不安定な状態が継続したために通告は遅れた。
(今の政治体制からいって〈共和国〉に俊敏な判断は期待できない。諜報機関も機能不全に陥っているし、どのみちやり口からいって〈共和国〉政府の指示で動いてるとも思えない。問題は本当に〝珠兎〟が〈共和国〉の人物であって〈共和国〉の情報で動いているのかどうか……)
リバは、男にセーグフレードの匂いを感じたという。
(これは思っていたより厄介そうだ……)
❖
防衛局ではルクフェネが一人で事務作業をこなしていた。やはり圭は自宅に帰ってすぐに高熱でダウンしてしまったのだ。
ルクフェネはふと、がらんとしたオフィスをは見渡した。
ほんの数日前、同じように見渡したときはなんとも思わなかったし、むしろようやくここまで来たという思いで満足していた。でも今は寂しさを感じている。
(わたしがもっと気を配っていれば防げたかもしれない。脇腹をえぐられる大怪我なんて、普通じゃない……)
気がつけば唇を噛んでいる。どうにかギリギリのところで最悪の事態は免れたが、それは圭の機転があったからだ。
(それがなかったら……考えたくもない。上司失格ね……)
首をゆっくり振って作業に戻る。しばらくするとドアをノックする音が聞こえた。




