#16 いつか絆を結べたら
リバは少しいいよどむ。
「手付金をもらってるんだ、けっこうな金額で。新しい田んぼをつくれるから、きっと小さな子供たちがお腹を空かすこともずっと少なくなると思ったんだ……。でもこうなったらケイとルクに渡すよ……」
「その必要はないよ」ルクフェネは答える。「だって管轄外で起こったことだもの。本国へ報告する義務は確かあったけど、覚えてたらね。オフィスへ戻るまでに忘れちゃう気がする。圭は覚えてそう?」
「え? 何? ごめん、ちょっと話を聞いてなかったよ」
「あ、ずるーい。わたしだけ頑張って忘れないといけなくなっちゃった」
「ルク……ケイ……ありがとう……」
そればかりが心配だったようで、リバはようやく表情を緩めた。
「いくつか答えてもらえる? わかる範囲でいいから。珠兎が現れたのはいつだった?」
「八日前だよ、ボクがシモウサに侵入した日の四日前だから」
「……。そのときシモウサのことはどういっていた?」
「それはわからない、対談したのは長だから。そのあと長と古老たちはずっと話し合って、もう一度珠兎がやってきてボクが取引に応じたのがその二日後。そのときはじめてボクはアイツの顔を見た。顔を見た、っていってもあの仮面姿だけど、ケイやルクが見たような幽霊みたいのじゃなくて、ちゃんとしたヒトだった。……」
「?」
リバが考え込むのでルクフェネと圭は顔を見合わせた。
「これはボクだけなんだ、ほかのみんなにはわかってもらえなくて」
「かまわないよ。情報があるのならなんでも欲しいの」
「情報っていえるかどうかも……」
リバはなおも悩むけれども、圭とルクフェネの表情を見て口を開いた。
「アイツの匂いは〈共和国〉っていうよりセーグフレードなんだ。理屈じゃなくてボクの本能っていうしかないんだけど。し、信じなくてもいいんだよ、それにどっちにしたって大した情報でもないし……」
「ううん」ルクフェネは首を振る。「信じるし、それに役に立つ情報だったよ」
「ほんと!? ならよかったよ」
リバは本当に嬉しくなって破顔した。そして二人を見つめる。
(こんなボクなのに、敵のはずのボクなのに)
いいよどんだとき、圭とルクフェネの表情に見たのは自分に対する信頼だった。だから話してみようとこころを決めたのだ。
(ボクは二人のために何かしたい、二人の役に立ちたい。ケイとルクみたいに、ボクもいつか絆を結べたら)
一方、ルクフェネはまだ少し考え込んでいた。リバの情報に引っかかるものがあるようだ。圭は小首を傾げる。
「どうしたの?」
「うん、ちょっとね」ルクフェネは曖昧に答える。「あ、そうだ、圭は今日はもう上がって」
「大丈夫だよ、ルクフェネに治してもらったから痛みもないし」
「怪我は治せても無かったことにはできないの。体は相当堪えているはずだよ、いまは神経が高ぶってるから平気なだけ。しっかり休んで体調管理することも仕事のひとつだから、ね」




