#13 形勢逆転…にはほど遠い現実
「リバ! リバ!」
リバは混乱のままに尻尾を飛ばしてくる。なす術もなく、圭はまた吹っ飛ばされた。全身の激しい痛みに膝を突いて、しかしそれでも圭は感じた。
(鉤爪だったら間違いなく死んでいた……)
口の中を切ったのか血が滴り落ちる。
(リバは僕の声を聞いて必死に抵抗してくれている。仮面の男も万全じゃない)
しかし苦しんでいたリバは不意に静かになった。
「うああ……っ!! ああ……っ! ああ……。……」
リバはすうっと顔を上げ、無機質に圭を見た。
「くくく……、多少は本気を出してくれよう」
リバは前脚にぐっと力を入れた。
(来る……!!)
圭は何もない空中に指先を走らせて軌跡を描いた。
こころを通わせてくれる〈セグレンデの二つ耳〉。それは二人のユクルユフェーアを重ね合わせてくれる。その根源がルクフェネであることには変わりないのだけれど、同時に圭も軌跡を描くことで、放たれたユーグネアは本来の力を超える。
(それはまだほんの少しだけど、ユクルユフェーアの描きはじめから終わりまで、形も、息遣いも、想いも、すべてを重ねることができればもっと強くなる。でも〈セグレンデの二つ耳〉の可能性はこれだけじゃない……)
カルナが見つけ出した手記はもう一つの可能性を示唆していた。
(強き熱き力よ、我が身に宿れ)
湧き上がる力を圭は感じた。迷わず加速する。突進してきたリバを躱し、さらに飛んできた三本の尻尾を身を翻してよける。
(〈セグレンデの二つ耳〉は僕にルクフェネの力を与えてくれる!)
リバは休まず鉤爪で迫ってくる。圭はそれを弾き返す。しかし仮面の男は高笑いした。
「なるほど! これは大したものだ! されど微々たる変化だな! しかもほれ、もう息切れしているではないか。しかるにリバはますます我が意のままだ!」
「……」
圭はいい返せない。そのとおりだからだ。共有できるとはいってもその力はわずかで、そしてそれでさえ圭には制御し切れない。一方でリバの動きは研ぎ澄まされていく。
飛んできた尻尾を圭は撥ね返す。しかしバランスを崩してよろめき、死角から別の尻尾に足をすくわれる。さらには反対方向から鉤爪が襲う。たまらず跳び退いてギリギリでよける。
しかし——。
(あ……!!)
気がつけば圭は沼の岸まで追いつめられていた。逃げ場がない。
リバは骨張った翼で薙ぎ払う。圭はそれを躱して、飛んできた尻尾を何とか受け止めようとした。
「うぐ……!!」
鉤爪に脇腹を切り裂かれる。鮮血が飛び散って圭はたまらず膝を突く。
「ははは、抗ったようだが、ここまでだったな……!」
痛いというより熱い。意識が遠退く。
「終わりだ……!」
リバは再び振りかぶった。圭はただ見つめるしかない。




