#14 それがこころとこころをつなぐということだから
そこへ、急速に接近した何かが割り込み、リバの腕を弾き飛ばした。
(ルクフェネ……!!)
「な、何だと……!?」
仮面の男は狼狽を隠そうともせず、あからさまに驚いた。
「何故ここがわかった!?」
こころとこころをつなげてくれるユーグネア〈セグレンデの二つ耳〉。あの手記が示唆していたのは力の共有だけではない。相手がどこにいるのかわかる。それが、こころとこころをつなぐということだから。
「圭!! だいじょうぶ!?」
「なんとか……」
言葉とは裏腹に圭は苦悶の表情を見せる。ルクフェネは素早く指先で紋様を描いた。
(安らぎと温もりで優しく癒そう)
柔らかで不思議に温かい光が圭を包み込む。傷口はみるみるうちに塞がれ、痛みは引いていく。それでも額の脂汗は引かないし、血に染まった制服はそのままだ。
「ありがと……」
「動いちゃ駄目! まだそのままでいて!」
圭を制してルクフェネは振り返った。燃え上がるような瞳でリバを睨みつける。
「え、あ! ルクフェネ! 違う、リバは……!!」
聞こえないのか、ルクフェネは素早く指先で紋様を描いた。
(すべてを分かつ光の刃、フォンティニーレ!!)
不思議な幾何学模様で装飾された巨大な剣が左腕に実体化する。ルクフェネは一気にリバの懐に潜り込んだ。そのまま真下から大剣を振り上げ——ない。
代わりに、力いっぱいにリバを蹴り飛ばして真逆の方向へ跳んだ。虚空に浮かぶ仮面の男だ。
「な……っ!!」
死角からルクフェネが現れる。仮面の男は完全に虚を突かれた。ルクフェネは薙ぎ払う。一刀両断、黒いローブは真っ二つに分かれる。
(我が足下に屈せよ、ヨディーレの矢!!)
一条の光線が真下に落ち、仮面を貫く——が、またしてもその中身は色を薄めて霧散した。
「……」
ルクフェネは地面に下り立った。
「ルクフェネ……?」
「うん」
その双眸はもとの優しい鴇羽色へ戻っていた。
一方、蹴り飛ばされたリバは激しい水しぶきをあげて古利根沼に落ちていた。水面は今も激しく波打っている。それがさらに激しくなったかと思えば、リバは勢いよく飛び出した。
「わわわっ、水嫌い、水嫌い、水嫌いっ!!」
岸に上がって体を何度も震わせる。しばらくしてようやく圭とルクフェネの姿に気がついた。
「あれ……アイツは……!?」
リバの見た目はずんぐりもっさりした長毛種の猫そのものだ。ライオン並に大きく尻尾が三本あって、背中には骨張った翼が生えているけれども。それでも水は苦手らしい。
自分を取り戻して、血に染まった圭の制服と生々しい傷跡に気がついて、それから自分の手を、血の色をした鉤爪をまじまじと見つめた。




