#12 絶体絶命
「!!」
リバの鋭い鉤爪が薙ぎ払う。圭はかろうじてよけたものの、通信機が弾き飛ばされた。
「リ、リバ! どうしたのっ!?」
しかし、リバは焦点の定まらない目で唸るばかりだった。
(様子がおかしい! 何かユーグネアを掛けられた……。ルクフェネのヨディーレの矢を打ち消すほどの力……!?)
リバの背後にあの仮面の男が現れた。男の姿は曖昧で向こうの景色が透き通って見える。圭は首を左右に振った。
(違う、どうにか姿を保っているか、もしかしたら姿を隠したいのにそれができていない……。たぶんヨディーレの矢はいまだ健在で、仮面の男はそれに対抗することにせいいっぱいなんだ! 完全じゃない、リバはまだリバのままだ!)
とはいえそのリバは唸りながら、ゆっくりとにじり寄ってくる。
圭は視線をそのままに、後ずさりながら背中のバックパックに手を伸ばした。リストの通信機は弾き飛ばされてしまったが、ゴーグルがまだある。ただそれはバックパックの中だ。
(何とかできるかもしれない……)
しかし揺らめく仮面の男は笑った。リバの前脚が飛んでくる。
「小童が。アルテリウアでもない貴様に何が出来る?」
「リ、リバッ!!」
鉤爪が夜の色の制服を切り裂く。圭はどうにか躱すものの、今度は三本の尻尾が飛んでくる。
体勢も中途半端で圭は吹っ飛ばされた。地面を転がって何とか立ち上がる。まるで余裕がない。
リバはにじり寄る。生身の人間が太刀打ちできる相手ではない。圭はどんどん後退していく。
「まったくあんな小娘なんぞ、さしたる問題でもなかったのだ」仮面の男はリバの頭上あたりをゆらゆらと浮遊する。「しかるに、貴様が現れたことで予定が狂ってしまった。貴様ごときでまったく不愉快だ……」
(〈セグレンデの二つ耳〉のことをいっている……?)
「まあよい、貴様はここで死んでもらおう。無論、くく……存分に甚振ってからだがな……」
(どうしたら……)
しかしそのとき踵が何かが触れた。それはさっき弾き飛ばされた通信機だった。
(……!! リバが誘導してくれた……!?)
考え直してみればリバが本気だったら最初の鉤爪をよけられたはずがない。
(僕の声はリバに届いている……?)
「む!?」仮面の男は何かを空中に描いた。
「う……うあああ……!!」
リバは頭を両手で抱えて苦痛の声をあげた。




