#11 ヨディーレの矢
「助けに来てやったぞ、リバ」
「ずいぶん遅かったじゃないか」リバは不機嫌に答える。
「こちらにも都合があるのだ」
「ふん、どうだが」
「なんだ、随分と不機嫌だな。おや、拘束のユーグネアを施されているか、なるほど」
(拘束のユーグネア? ヨディーレの矢のこと……? ヨディーレの矢は電気ショックのはず。ボクは拘束なんてされてない、自由にお散歩できてるし。……。散々な目には遭わされたけど、そもそも電気ショックは初日だけだった……)
「案ずることは無い、我が打ち砕いてくれよう」
仮面の男は指先で空中にユクルユフェーアを描こうとして、しかしそれを途中でやめてた。描き切る前に阻まれたからだ。
「思ったより堅いな。力が逆らい痛かったろう? まったくひどいことをする。だが心配することは無い、手立ては幾らでもあるからな」
(痛かったろう……?)
リバは男のいった言葉をこころの中で繰り返した。ありとあらゆる感覚がそれを全否定しているからだ。
(痛くなんてなかった。むしろボクはとても優しい温もりを感じてる。まるで包み込んで守ってくれるような)
「まずは我も力を高めよう」
「待ってよっ、先に教えてよ!」
リバは叫んだ。男は仮面の向こうで訝しむ。
「何だ?」
「ボクには、あんたの名前や素性を話せないようにするユーグネアが仕掛けられてるっていうじゃないか」
「あのアルテリウアに言われたのか? ふふ、我は用心深いのだ。気にするほどでもあるまい」
「気にするに決まってる! 話したら死んじゃうなんて聞いたらっ! どういうことなのか説明してもらう!」
「……。それはあのアルテリウアの偽りだ。施したユーグネアにそのような作用は無い」
「その証は!?」
「あのアルテリウアの言葉にも証など無かろう。どちらを信じるのだ? 従え、そして信じろ」
「……」
沈黙を了解と受け取ったのか、男は満足そうに頷いた。
「そうだ、お前は言われた通りに動けばよいのだ」
しかしリバは首を振った。
「……それじゃ、ほかの連中がボクらにいうことと同じじゃないか……。いわれたとおりに動けばいい? モミョ族は捨て駒じゃないっ! ルクやケイなら、きっとボクが信じられるようになるまで待ってくれる。従えなんていわないっ!」
「やれやれ……」
男は指先で素早く紋様を描いた。
「なっ……!!」
「要らぬ知恵を付けおって」
「何をする! あ、あああ……!!」
頭が破裂するような苦痛がリバを襲った。たまらず地面をのたうち回る。
「やめろ、やめろ! うわあああ……!!」
「リバ!」
圭がプランシェを飛ばして駆けつけた。とっさに仮面の男に体当たりすれば幻影は虚空にまぎれて消えていく。
「だ、だいじょうぶ!? リバ!」
駆け寄ってのぞき込めば、リバは苦痛に表情を歪めながらも何とか起き上がった。
「……なんとか。……ありがと……助かったよ……」
「まだ無理に動かないほうがいい! そうだ、ルクフェネに知らせなくちゃ!」
圭は手首の通信機を操作しようとした——が、猛烈な殺気に思わず飛び退いた。




