#7 査証
ルクフェネはカードを返した。
「ご協力に感謝します、コヨ・タキッシェ殿。また防衛局司令として来訪を歓迎します。差し支えなければどのような目的で訪れたのかお聞かせいただけますか? ただしこれは任意であることを付け加えます。回答しないことであなたが不利益を被ることはありません」
「もちろんかまいませんよ」
コヨ・タキッシェは愛想よく笑みを浮かべる。
「僕はいろいろな星を旅する冒険者なんです。見聞きしたことを体験記にまとめて発表したり、講演したり、それに依頼があれば映像作品の舞台設定を助言したりしています。新しい〈宇宙の扉〉が開いたということで、これは急がねばと、取るものもとりあえず来てしまいました。やっぱり一番乗りは違いますから。それでその、僕より先に誰が来ました?」
「守秘義務があるのでそれには回答できかねますが、侵入者はもう来ましたよ」
「わあ安心しました」
「よい旅になりますように」
「ありがとうございます。あなたとあなたの大切な人にいつも安らぎがあらんことを」
コヨ・タキッシェの背中と大きなリュックサックを見送って、ルクフェネは振り返った。
「せっかくだからここでお昼にしちゃう? もうお腹ぺっこぺこ」
「僕もぺこぺこ」
お弁当を広げて圭はリバに声をかける。「リバもおいでよ」
「自分のがあるからいいもん」
リバはそっぽを向いて、どしんと胡坐をかいて座った。背中の青いリュックを前に持ってくる。取り出したのは保存食だ。栄養バランスは抜群でも冷たいし、おいしくもない。
(いいんだ、ボクはモミョ族の戦士だ。戦士はそんなこと気にしない! ……気にするものか)
——と、うつむく目の前に竹細工の籠が差し出された。中には、大きなおむすびと唐揚げ、たくわんが入っている。
「どうぞ。温かいもののほうがきっとおいしいよ」
差し出したのは圭だ。リバは抗議する。
「い、いらないって、いってるじゃないかっ」
「作っちゃったから食べてもらわないと困るんだ。助けると思ってさ」
「……しょ、しょうがないな。し、仕方ないから食べてあげるよ……」
「うん、助かるよ」
リバは両手で特大サイズのおむすびを持ってかぶりつく。
(ブーレに似ている……)
それは故郷の素朴な食べ物だ。巻くのは海苔ではなくナヴィーという葉を塩漬けにしたもので、ご飯に塩はまぶさない。だからちょっと違うけど、潮の香りがする海苔ともちもちとしたご飯の組み合わせも悪くない。
具材もたっぷりだ。なによりも温かくおいしい。
(みんな、いまごろどうしてるだろ……)
いつの間にか、おむすびをむさぼるように夢中になって食べていて、大きなエメラルド色の瞳には涙があふれ、ぽろぽろと頬を伝って落ちていく。
圭やルクフェネには背を向ける。
(ルクはともかくケイにはなるべく協力しようかな……)
昨日もリバは体が大き過ぎて中へ入れず、防衛局のビルの屋上で眠ることになったのだけど、圭がテントとふかふかのマットを調達してきてくれたから快適だった。
(でも任務は果たさなくっちゃだし……。でも今はこんな状態だし……。ボクはどうしたらいいんだろ……)
わからないから涙をごしごしと拭うしかない。




