#16 どんなことにも可能性はあるから
リバは諦めて不承不承に屈した。ルクフェネはユーグネアを解く。するとリバはいきなり逃げ出した。が、十数メートル走ったところで電気ショック。
「ふぎゃ」
ふらふら、涙目で戻ってくる。焦げ臭い……。
「無駄な抵抗はしないほうが身のためね」
「ハイ……」
一瞥してからルクフェネは仮面とローブを拾いにいく。完全に背中を見せることにはなるものの、リバは懲りたのか諦めたのか、もう逃げなかった。
ケリンチョモードのプランシェで圭が合流する。
ふとルクフェネはよろめいた。
「ル、ルクフェネ!?」慌ててプランシェから飛び下りて受け止める。
「ちょっと疲れた。二人分はつらいかも……」
〈セグレンデの二つ耳〉が二人のユクルユフェーアを重ね合わせて強めてくれるとしても、力の根源がルクフェネ一人であることには変わらないのだ。限界を超える力を消費して、もう半分眠りかけて朦朧としているらしい。
「チャンス到来! ……ぬぎゃ!」
リバは嬉々として突進してきたけれども、電気ショックで真っ黒焦げになった。
「ルクフェネの意識が曖昧でも関係ないみたいだね」
「そうみたい……」
「じゃ、悪いんだけど背中に乗せていってくれるかな」
「はい……仰せのとおりに……」
完全に心が折れたらしく、リバは素直に従った。背中にルクフェネを乗せてから、圭もまたがって後ろから抱きかかえる。
「このリュックに荷物入れていい?」
「ご自由に……」
仮面とローブ、それからプランシェをリバの青いリュックにしまう。ゆっくりペースで防衛局オフィスへ。
もう半分眠りながらルクフェネはまた考えていた。
(拒絶していたのは自分のほうだったのかもしれない)
ルクフェネの存在を面白く思わない連中がいたのは事実だ。それも少なからず。でも全員ではなかった。どんなことにも可能性はある。それなのに、はじめからその可能性の蕾を摘んでしまったのは自分だったのかもしれない。
ひとは自分を映し出す鏡だという。
不機嫌にしかめっ面をしていたら、相手も不快に感じて顔をしかめるだろう。緊張して不安になったり、心細くなって萎縮してしまうかもしれない。
でも、微笑みを浮かべている相手に仏頂面のままでいることは難しい。自然と自分も笑顔になってしまう。
拒絶していたのは自分のほうだったのかもしれない。拒み避けていたら、受け容れようとしてくれた人たちさえ遠ざけてしまう。
同窓会のことを知らせてくれた差出人は、ルクフェネがひとりでいるとよく話しかけたり、ランチに誘ったりしてくれた同期生だ。最後までルクフェネがこころを開くことはなかったけれども。
メールの最後には、彼女の言葉が添えられていた。
「みんなルクフェネに会えるの楽しみにしてるからねっ!」
(『みんな』が何人いるのかはわからないけれど、せめて彼女には謝ろう……)
ルクフェネは、ううん、と小さく首を振った。
(ありがとって伝えよう……)
遠のく意識のなかでルクフェネはメールの返信を書き直そうと思った。




