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シモウサへようこそ!  作者: 一ノ宮ガユウ
2. セグレンデの二つ耳
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26/153

#15 圧倒

挿絵(By みてみん)


(来た)


 接近を感知したのは圭のほうだ。すぐに情報が同期される。


(強き熱き力よ《リース・ルッス・ルケア》、我が身に宿れ《・オル・ロロ・ティシェーア》)


 ルクフェネは指先で紋様を描いた。そして屈んで陸上選手がやるような、いわゆるクラウチングスタートの姿勢を取る。


「位置について……よーい、どん!!」


 リバは急な坂道を駆け降りてきた。その横っ腹に、ルクフェネは思いっ切りの飛び蹴りを食らわした。


「わっ、ふぎゃ!!」リバは吹っ飛ばされて転がる。「ななな、何をするんだっ!」


 が、抗議など聞く耳持たず。ルクフェネはリバの懐に入って前脚を取って、問答無用でそのまま投げ飛ばした。


「うわあ〜!」


 圭の提案は、攻撃せずに捕獲するというものだった。ルクフェネの回答は、なるべくそうするということだった。


「だいじょうぶ、モミョ族、頑丈だから」


 頑丈なのは事実かもしれないけれども、大丈夫かどうかを判断するのはたぶんルクフェネではない。


「このぉ、もう怒ったぞっ!!」


 リバは全身の毛を逆立て、目を血走らせた。


(出る……)


 ルクフェネと圭は口許でつぶやく。


 モミョ族は本来は温厚で争いを好まない種族だ。それを忘れた凶暴化には明らかに別の力が介在している。そして与えるものがいなければ力は持続しない。


 リバはルクフェネに鋭い鉤爪を振り降ろした。ルクフェネは躱(かわ)し、相手のバランスを崩し、回し蹴りを叩き込む——が、リバはそれを撥(は)ね除(の)け、反転しながら刃のような翼でルクフェネを薙ぎ払う。


「いた……!!」


 圭はゴーグルの中の画面を流れる情報に力の根源を見つけた。


 翼の攻撃をギリギリで躱(かわ)しながらルクフェネは指先でユクルユフェーアを紡ぎ、そして圭も呼吸を合わせる。


(我が足下に屈せよ《フェネ・クヴィアラ・ユイシーダ》、ヨディーレの矢!!)


 真上で閃いた光が二条の電撃になって真下に落ちる。一つはリバへ。


「こんなものっ!!」


 リバ両目を血走らせて三本の尻尾で振り払う——が、光線は尻尾ごとリバの体を貫いた。全身がスパークする。


「うっ、うわ……っ!! ししし、痺(しび)れる……っ!!」


 そしてもう一本の矢は空中に仮面の男の姿をさらした。


「捕らえたっ!」


 が、中身は色を薄めて煙のように四散する。残った仮面とローブが地面に落ちてくる。


「遅かった……」


 もう何もない虚空を残念そうに見つめて、それからルクフェネは向き直った。目の前にはバリバリと音を立てて帯電するリバがいる。


「いろいろ聞きたいことがあるから従ってもらうね」


「だだだ、誰がおまえなんかに……」


「そう」


 ルクフェネは冷たくいい捨てたけれども、予想に反してスパークは収まった。


「あ……あれ……?」


 リバは首を傾(かし)げる。一方、ルクフェネは深呼吸をして不穏な言葉を投げ掛けた。


「準備完了。選択肢を上げましょ。いまの百倍、または十倍の十倍か、五倍の二十倍か、四倍の二十五倍か、二倍の五十倍か、どれがいい?」


 ぜんぶ百倍。これをふつう選択肢とはいわない。


「し……従います……」

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