#13 こころとこころをつなぐおまじない
「てこずっているな、リバよ……」
「ちょっと油断しただけだよ!」
リバと呼ばれたモミョ族の声はまだ幼い。
「此度の任務をまっとうすればモミョ族の評価も上がろう……」
「わかってる! 頑張るよ!」
ふと黒ずくめの男は物陰に隠れたルクフェネと圭のほうを横目で睨んだ。
(見つかった……?)
(そのままで……)
圭とルクフェネは視線はそのままに言葉を交わした。二人は素知らぬ顔をする。
「期待しているぞ……」
男の姿は曖昧になって消えていく。リバは男の痕跡を少し見つめて、それから森の中を歩きはじめた。
「頑張らなくっちゃ。モミョ族は下級民族なんかじゃない。ほかのみんなと同じように役に立つんだから!」
モミョ族は外見的にはライオンサイズの猫だ。全体のバランスからすれば顔がやや大きく、エメラルド色の瞳には愛嬌がある。青みを帯びたグレーの毛皮はかなりもっさりふわふわで、特に首回りと尻尾がもふもふしている。コウモリのように骨張った背中の翼は被毛に覆われて完全に隠れている。
リバは、どしん、と胡坐をかいて座ると、背負っていた青いリュックを前に持ってきて中から何かを取り出した。どうやら食べ物らしい。もしゃもしゃと食べはじめる。手はアライグマのように指が長くて器用そうだ。
「いいように利用されているだけね」
森を離れてからルクフェネはいう。圭も頷いた。
「僕もそう思う。できることなら傷つけたくない」
「うん」
ルクフェネも同じ気持ちだったけれども難しい。相手が攻撃してきた以上はいまや正当防衛としてルクフェネにも反撃する権利がある。能力が強化されているとしても本気を出せば倒すことなど容易いだろう。しかし圭のいっているのは無傷で捕獲するということだ。
ルクフェネ一人では難しい。そう一人なら。
「さっきの現象はおまじないが起こしてくれたのかもしれない」
ルクフェネは自分の帽子を脱いで手に持った。深い夜の色の帽子には、両側に雪色の大きな羽飾りが付いている。向かって左側がルクフェネの耳飾り、右側が交換した圭の耳飾り。
「セグレンデの二つ耳、こころとこころがつながるおまじない。でも教えてくれたおばあちゃんはこれもユーグネアだっていってたの。古い古い、とても古いユーグネアだって。圭がとっさに紡いだユクルユフェーアを、セグレンデの二つ耳がわたしのユクルユフェーアに重ねてくれたんだと思う。わたしのユクルユフェーアがあまりにも乱れていたから、圭のユクルユフェーアしか活きなかったけど……」
「もし二人で正確にユクルユフェーアを紡ぐことができれば、そのユーグネアの力を強くできる……?」
圭は言葉を引き取る。ルクフェネは黙って頷いた。
「ヨディーレの矢の紋様は覚えてる?」
圭は指先で〝我が足下に屈せよ〟と正確に紡いでみせた。




